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腰椎固定術の進化!XLIFの効果と安全性を最新研究から解説

腰椎固定術の進化!XLIFの効果と安全性を最新研究から解説

 


【XLIFとは?腰椎固定術の新時代】

腰痛、坐骨神経痛は、多くの人が経験する症状であり、特に加齢とともに増える問題です。
その治療法の一つが「腰椎固定術」と呼ばれる手術です。

腰椎固定術とは、傷んだ椎間板を除去し、人工の器具を挿入してずれた
骨と骨を固定し神経を直接触らずに間接除圧で神経の圧迫を改善手術です。これにより、痛みの原因となる骨の不安定さ、神経痛を解消できます。

PLIFとLIF.JPG

従来の方法には、PLIF(後方腰椎椎体間固定術)やTLIF(経椎間孔腰椎椎体間固定術)などがありましたが、
最近注目されているのがXLIF(Extreme Lateral Interbody Fusion)です。

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XLIFは、「側方」つまり体の横側からアプローチする方法で、
筋肉や神経へのダメージを最小限に抑えつつ、強固な固定を実現する手術法として注目されています。


【XLIFのメリットとデメリット】

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メリット

✔️ 低侵襲(ていしんしゅう)で体の負担が少ない
XLIFは、体の横からアプローチするため、背中の筋肉や神経を傷つけにくいです。
これにより、術後の回復が早く、入院期間も短縮されます。

✔️ 出血量が少ない
XLIFは従来の切開手術と比べて出血量が大幅に少ないことが研究で示されています。
例えば、ある研究では、XLIFの平均出血量は36mL、TLIFでは700mLというデータが出ています​。

BKP後LIF矯正加藤氏.jpg

✔️ 脊椎の安定性が向上する
XLIFでは大きなインプラント(ケージ)を使用できるため、椎間の高さを回復しやすく、
しっかりとした固定が可能になります。


デメリット

神経損傷のリスク
XLIFは「大腰筋」という筋肉を通るため、太ももの神経が影響を受ける可能性があります。
一時的なしびれや筋力低下が起こることがありますが、多くは数週間〜数ヶ月で回復します。

L5/S1(腰椎の最下部)には適応が難しい
XLIFは骨盤の位置や血管走行の関係で、L5/S1の固定には向かないことが課題です。

高度な技術が必要
XLIFは特殊な手術技術が必要であり、経験豊富な医師による施術が望ましいです。


【最新の技術と今後の展望】

ロボット支援XLIF

近年では、ロボット技術を活用したXLIFが登場し、より正確で安全な手術が可能になっています。
ロボットアシストにより、ネジの挿入精度が向上し、合併症リスクが低減することが期待されています。

シングルポジションサージェリー(SPS)

XLIFと後方固定術を同時に行う「シングルポジションサージェリー(SPS)」が注目されています。
これにより、手術中に患者の体勢を変える必要がなくなり、時間短縮と安全性向上が期待されています​。

特に、「Prone-SPS(うつ伏せSPS)」という新しい方法では、
より自然な体位で手術が行え、手術の精度や固定の安定性が向上することが報告されています。

今後の課題

✔️ 神経損傷のリスクをさらに低減する技術の開発
✔️ L5/S1への適用が可能な新しい手術アプローチの開発
✔️ ロボット支援技術のさらなる進化

XLIFは今後も進化を続け、より安全で効果的な手術法へと発展していくと考えられます。


まとめ

XLIFは、腰椎固定術の中でも特に低侵襲な手術法で、筋肉や神経への負担が少ない
術後の回復が早く、出血量も少ないため、患者に優しい手術法
一方で、神経損傷のリスクやL5/S1への適用の難しさなどの課題もある
ロボット支援手術やSPS(シングルポジションサージェリー)などの最新技術により、さらなる進化が期待される


引用文献

  • Palacios, P., et al. "Efficacy and Safety of the Extreme Lateral Interbody Fusion (XLIF) Technique in Spine Surgery: Meta-Analysis of 1409 Patients." J. Clin. Med. 2024, 13, 960. DOI: 10.3390/jcm13040960
  • Wong, A.X.J., et al. "The Evolution of Lateral Lumbar Interbody Fusion: A Journey from Past to Present." Medicina 2024, 60, 378. DOI: 10.3390/medicina60030378

 

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