元気になるオルソペディック ブログ
すべり症を防ぐには?筋肉の老化と腰痛の最新データを解説
すべり症を防ぐには?筋肉の老化と腰痛の最新データを解説
【すべり症とは?その原因と症状を解説】
すべり症ってどんな病気?
すべり症とは、腰の骨(腰椎)の一部が前方または後方にずれてしまう病気です。特に中高年に多く、長年の腰への負担や加齢に伴う変化が原因とされています。
主な症状は、腰の痛み、足のしびれ、歩きにくさなどです。悪化すると、長時間の立ち仕事や歩行がつらくなり、日常生活にも支障をきたします。
すべり症の原因は筋肉の衰え?
これまで、すべり症の原因は椎間板(ついかんばん)の変性や関節のゆるみと考えられてきました。しかし、最新の研究によると、「腰の深い部分にある筋肉の衰えがすべり症に関係している」ことが明らかになってきました。
特に、**多裂筋(たれつきん)**という筋肉が重要なポイントです。この筋肉は背骨を支える役割を果たし、安定した姿勢を維持するために欠かせません。研究では、**多裂筋の脂肪変性(筋肉が脂肪に置き換わる現象)**が進んでいる人ほど、すべり症の程度が重いことがわかりました。
【最新研究が解明!筋肉の衰えとすべり症の関係】
研究の概要
本記事で紹介する研究では、221名のすべり症患者を対象に、腰の筋肉の状態を詳細に調査しました。患者の腰のMRI画像を解析し、筋肉の体積(大きさ)や脂肪の量を測定。その結果、次のようなことがわかりました。
1. すべり症の程度が重い人ほど筋肉の衰えが進んでいる
研究では、すべり症の程度を軽度(Meyerding Grade I)と中等度(Grade II)に分類しました。すると、中等度のすべり症患者は、筋肉の体積が少なく、脂肪浸潤が多いことが判明しました。
特に多裂筋の脂肪変性(MFI:Multifidus Fatty Infiltration)が進んでいるほど、すべり症の進行度が高いことが統計的に示されました。
2. 女性の方がすべり症が進行しやすい
この研究では、女性患者の方がすべり症の程度が重いこともわかりました。女性は筋肉量が男性より少ない傾向があり、加齢とともに筋力が低下しやすいため、すべり症のリスクが高まると考えられます。
特に閉経後の女性では、ホルモンの変化によって骨や筋肉の質が低下しやすいため、注意が必要です。
3. 筋肉がすべり症の進行を予測する指標になる
研究チームは、すべり症の進行度を予測するために**回帰分析(統計手法の一つ)**を行いました。その結果、「多裂筋の脂肪変性、腰椎の前弯(ぜんわん)の角度(LL)、椎間の角度(IVA)」の3つの指標がすべり症の程度と関連していることがわかりました。
特に、多裂筋の脂肪変性(MFI)はすべり症の進行を予測する最も重要な因子であり、この数値が高いほど、すべり症が進行しやすいことが示されました。
【すべり症を予防するためにできること】
1. 筋力トレーニングで多裂筋を鍛える
研究結果から、多裂筋の衰えを防ぐことがすべり症の予防につながる可能性が示唆されました。多裂筋は、日常生活で意識的に使うことが少ないため、特別なエクササイズが必要です。
例えば、四つん這いで片腕と反対の脚を伸ばす「バードドッグ」エクササイズは、多裂筋を効果的に鍛えるのに役立ちます。
2. 正しい姿勢を意識する
すべり症を防ぐためには、日常生活の姿勢も重要です。長時間のデスクワークやスマホの操作で猫背になると、腰に負担がかかり、多裂筋の働きが低下してしまいます。
座るときは腰を立て、背もたれを使って安定した姿勢を保つことを意識しましょう。また、立つときも片足に体重をかけすぎず、均等に体重を分散することが大切です。
3. バランスの良い食事を心がける
筋肉を健康に保つためには、タンパク質をしっかり摂ることが重要です。特に、肉・魚・大豆製品などの良質なタンパク質を意識して摂取しましょう。
また、ビタミンDやカルシウムも、骨や筋肉の健康を支えるため、適度な日光浴とともに、乳製品や小魚を積極的に摂ることがすすめられます。
【まとめ】
最新の研究では、「多裂筋の衰えがすべり症の進行に関与している」ことが明らかになりました。特に、多裂筋が脂肪に置き換わる「脂肪変性」が進むと、すべり症が悪化しやすくなることがわかっています。
すべり症を予防するためには、筋トレ・正しい姿勢・栄養バランスの3つを意識することが大切です。特に、バードドッグエクササイズで多裂筋を鍛えることは、すべり症の進行を防ぐ効果が期待できます。
腰の健康を守るために、日々の生活習慣を見直してみましょう!
【引用論文】
Da W, Jian Q, Evan J, et al. Quantitative Analysis of Relationship between Paraspinal Muscle Degeneration and Degree of Degenerative Lumbar Spondylolisthesis. Spine. 2025. DOI:10.1097/BRS.0000000000005270
免責事項
- 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
- 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
- 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
- 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
- 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。
当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。