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ランニングは膝に悪い?最新研究が明かす膝軟骨への影響とは

ランニングは膝に悪い?

最新研究が明かす膝軟骨への影響とは


ランニング膝痛2.JPG

「ランニングを続けると膝がすり減る」と聞いたことはありませんか?実は、この疑問に科学的な答えを出すため、多くの研究が行われています。
今回紹介するのは、ランニングが膝の軟骨に与える影響をMRI(磁気共鳴画像診断)で詳しく調べた最新の論文です。

本記事では、ランニングが膝軟骨に与える影響を【短期的な変化】、【長期的な影響】、【安全に走るためのポイント】の3つの観点から解説します。


【短期的な変化】ランニング直後の膝軟骨はどうなる?

研究によると、ランニング直後に膝軟骨の厚みや体積が一時的に減少することが確認されました。
特に、大腿骨(ふとももの骨)と膝蓋骨(ひざのお皿)の間にある軟骨は、最大で約5%程度薄くなることが分かっています。

また、MRIを使った分析では、軟骨の水分量や構造を示す「T2緩和時間」や「T1ρ緩和時間」という指標が低下していることも分かりました。
これは、軟骨が一時的に圧縮されている状態を示しています。

ランニングと膝軟骨.JPG

しかし、驚くべきことに、この変化はわずか30〜90分ほどで元の状態に回復するのです。
つまり、ランニングによる一時的な変化は起こるが、それが長く続くわけではないということです。


【長期的な影響】ランニングを続けると膝はどうなる?

では、長期間ランニングを続けると、膝軟骨にダメージが蓄積されるのでしょうか?

過去の研究を総合すると、適度なランニングを続けることは、膝の健康に悪影響を及ぼさないという結果が得られています。
むしろ、レクリエーションレベル(趣味として楽しむ程度)のランナーは、膝の変形性関節症(ひざの老化による病気)になりにくいというデータもあります。

一方で、競技レベルで長距離を走るプロランナーは、膝の変形性関節症のリスクがやや高まる可能性が指摘されています。
これは、過度な負荷が膝にかかることによる影響と考えられます。


【安全に走るためのポイント】膝を守るランニングのコツ

膝を守りながらランニングを楽しむためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。

走る距離や頻度を適切に調整する

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  • 過度なランニングは軟骨に負担をかける可能性があります。
  • 1週間の走行距離を急に増やさず、10%ルール(前週より10%以内の距離増加)を守ることが推奨されています。

適切なランニングシューズを選ぶ

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  • クッション性のあるシューズを選ぶことで、膝への衝撃を軽減できます。
  • すり減ったシューズを使い続けると膝に負担がかかるため、定期的にシューズを交換しましょう。

走る路面を工夫する

  • アスファルトやコンクリートよりも、芝生や土の上を走るほうが膝への負担が少なくなります。

まとめ

  • ランニング直後には膝軟骨が一時的に薄くなるが、短時間で回復する。
  • 適度なランニングは膝の健康を保つのに役立つ可能性がある。
  • 過度なランニングは膝に負担をかけるため、適切な距離や頻度を意識することが大切。

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ランニングは健康に良い運動ですが、膝の負担を考えながら適切に楽しむことが大切です。
無理なく続けることで、膝の健康を守りながらランニングライフを楽しみましょう!


参考文献

Coburn SL, Crossley KM, Kemp JL, et al. Is running good or bad for your knees? A systematic review and meta-analysis of cartilage morphology and composition changes in the tibiofemoral and patellofemoral joints. Osteoarthritis and Cartilage. 2023;31(1):144-157. https://doi.org/10.1016/j.joca.2022.09.013

 

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