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肩の痛みに悩むアスリート必見!腱板手術後のパフォーマンスと復帰の現実
プロ野球選手の腱板手術後の復帰率とパフォーマンス低下を徹底解説
肩の腱板(けんばん)手術は、スポーツ選手にとって競技生活を左右する大きな決断です。特にプロ野球選手のような高いパフォーマンスを求められる競技者にとって、手術後にどれだけ競技に復帰できるか、そして以前と同じようにプレーできるかは非常に重要な問題です。今回、MLB(メジャーリーグベースボール)のデータを基に行われた研究から、腱板手術後の復帰率やパフォーマンスの変化について詳しく解説します。
【肩の腱板とは?その役割と損傷の原因】
腱板とは、肩関節を安定させるために働く4つの筋肉と腱の集合体です。特に、野球選手のように繰り返し肩を酷使するスポーツでは、腱板に強い負担がかかり、損傷を引き起こすことがあります。
腱板損傷の原因は主に以下の3つです。
- 過剰な使用:投球動作の反復により、腱板に疲労が蓄積。
- 加齢による変性:年齢とともに腱の柔軟性が低下。
- 衝撃による外傷:スライディングや壁への衝突など。
軽度の損傷ではリハビリで回復することもありますが、重度の場合は手術が必要になります。
【腱板手術の実態と復帰率】
今回の研究では、2010年から2016年にMLB選手151名が受けた腱板手術を分析しました。手術は2種類に分類されます。
- デブリードマン(腱板部分切除術)
- 損傷部分を切除して痛みを軽減。
- RTS(Return to Sport:競技復帰)率は50.8%。
- しかし、復帰できた選手でもパフォーマンスは低下傾向。
- 腱板修復術
- 損傷した腱を縫合して再固定。
- RTS率は33.3%と低く、復帰後の成績向上は見られませんでした。
つまり、手術を受けても半数以上が元のレベルに復帰できず、特に修復術では3人に1人しか復帰できないという厳しい現実が明らかになりました。
【手術後のパフォーマンスは改善する?】
復帰できた選手でも、手術前のパフォーマンスを維持するのは困難でした。
- デブリードマン群:投球回数、打者対戦数が減少し、勝率や防御率も低下。
- 修復術群:有意な改善は見られず、復帰できてもプレー機会が減少。
これは、手術により肩の安定性は得られても、筋力や柔軟性の回復が十分でないことを示しています。
【まとめ:腱板手術は最終手段】
肩の腱板損傷に対して手術は確かに有効な治療法ですが、今回の研究はその限界を示唆しています。特にアスリートにとっては、手術後の競技復帰率が低く、パフォーマンス低下のリスクもあることを理解することが重要です。
肩の痛みを感じたら、まずは適切なリハビリやコンディショニングを行い、手術は最終手段とすることをおすすめします。
参考文献 Erickson BJ, Chalmers PN, D'Angelo J, Ma K, Romeo AA. Performance and return to sport following rotator cuff surgery in professional baseball players. J Shoulder Elbow Surg. 2019;28(6):1075-1081. doi:10.1016/j.jse.2019.01.029
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