成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

熊本そけいヘルニア整形外科クリニック

元気になるオルソペディック ブログ

妊娠中の体重管理がカギ!産後の腰痛リスクを減らす方法

【妊娠と腰痛:なぜ痛みが続くのか?】

妊娠中の腰痛3.JPG

妊娠中、多くの女性が腰や骨盤周りの痛みを経験します。これは、お腹の赤ちゃんの成長に伴う体の変化によるものです。しかし、産後になっても腰痛が続くケースがあり、これを「持続性腰痛」と呼びます。

今回の研究では、妊娠中の体重増加(妊娠関連体重増加、GWG)が産後の持続性腰痛にどのように影響するかを調査しました。その結果、妊娠中に15kg以上体重が増えた女性は、10kg未満の女性に比べて産後も腰痛が続くリスクが約2.3倍高いことが明らかになりました。

この研究は、産後の女性が腰痛に悩まされる原因の一つとして、妊娠中の体重増加が重要な要因であることを示しています。では、なぜ体重増加が腰痛に影響するのでしょうか?


【体重増加と腰痛のメカニズム】

妊娠中の体重増加が腰痛を引き起こす理由には、主に 「姿勢の変化」「骨盤の負担増加」「炎症の影響」 があります。

姿勢の変化

妊娠中は、お腹が大きくなるにつれて重心が前方に移動し、腰を反らせる姿勢(腰椎前弯)が強くなります。この変化によって腰や骨盤周りの筋肉に負担がかかり、腰痛の原因となります。

骨盤への負担増加

体重が増えると、骨盤や脊椎にかかる負担が大きくなります。特に、妊娠中に骨盤の安定性を保つ筋肉(骨盤底筋)が弱くなることが分かっています。体重が増えすぎると、この影響がさらに大きくなり、産後も腰痛が続きやすくなります。

炎症の影響

過度な体重増加は、炎症物質の増加とも関連しています。特に、妊娠中に「C反応性タンパク(CRP)」という炎症マーカーが高くなると、産後の腰痛リスクも高まるとされています。肥満や過剰な体重増加が炎症を引き起こし、それが慢性的な痛みの一因となる可能性があります。

このように、妊娠中の体重増加が腰や骨盤に与える影響は大きく、産後の腰痛を長引かせる原因となるのです。


【産後の腰痛を防ぐためにできること】

産後の腰痛を防ぐためには、妊娠中の適切な体重管理が重要です。以下のポイントを意識することで、リスクを減らすことができます。

妊娠中の体重増加を適正範囲に保つ

厚生労働省のガイドラインでは、妊娠中の体重増加の目安として 「普通体型(BMI 18.5〜25)の女性は7〜12kg程度が適正」 とされています。適度な体重増加を心がけることで、腰痛リスクを軽減できます。

適度な運動を取り入れる

ケーゲル体操.JPG

適度な運動は、妊娠中の体重管理だけでなく、筋力維持にも役立ちます。特に骨盤底筋を鍛えるエクササイズ(例:ケーゲル体操)を行うことで、骨盤の安定性を保ち、腰痛を予防する効果が期待できます。

正しい姿勢を意識する

妊娠中・産後ともに、正しい姿勢を意識することが腰痛予防につながります。 例えば、立つときは背筋を伸ばし、骨盤を立てるように意識することで、腰への負担を軽減できます。

産後も適切なケアを続ける

産後も適度な運動を続けることで、体の回復を早めることができます。また、腰痛がひどい場合は、専門家(産婦人科医や整形外科医)に相談することをおすすめします。

妊娠中の腰痛体操.JPG


【まとめ】

今回の研究では、妊娠中に15kg以上体重が増えた女性は、産後も腰痛が続くリスクが約2.3倍高い ことが明らかになりました。

妊娠中の体重増加は、姿勢の変化・骨盤の負担増加・炎症 などを引き起こし、産後の腰痛につながる可能性があります。そのため、適切な体重管理や運動習慣を身につけることが、産後の健康維持につながります。

これから妊娠を迎える方や、現在妊娠中の方は、ぜひ適切な体重管理を心がけてください。産後の腰痛を防ぎ、快適な育児生活を送るために、今できることから始めてみましょう!

新生児とお母さん.JPG


【引用論文】

Matsuda N, Kitagaki K, Perrein E, et al. Association Between Excessive Weight Gain During Pregnancy and Persistent Low Back and Pelvic Pain After Delivery. Spine. 2020;45(5):319-324.

 

免責事項

  • 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
  • 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
  • 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
  • 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
  • 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。

当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。