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骨の健康を守る!脊椎再建手術を受ける前に必要な骨粗しょう症の検査と治療法
骨の健康を守る!脊椎再建手術を受ける前に必要な骨粗しょう症の検査と治療法
【はじめに:なぜ脊椎手術前に骨粗しょう症対策が必要なのか?】
脊椎再建手術は、慢性的な腰痛や変形性脊椎症、脊柱側弯症などを治療するために行われる手術です。しかし、骨粗しょう症や骨密度の低下(骨粗しょう症の前段階である「骨減少症」)があると、手術の成功率が下がるだけでなく、手術後の合併症リスクが高まることがわかっています。
今回紹介するのは、脊椎手術における骨粗しょう症管理の最新ガイドラインです。このガイドラインは、整形外科医、脊椎外科医、内分泌科医、リウマチ科医など18名の専門家チームによって作成されたもので、手術前後の骨の健康を最適化するためのベストプラクティスがまとめられています。
【1. 骨粗しょう症リスクのある患者を見極める:誰が検査を受けるべき?】
脊椎手術を受けるすべての患者は、手術前に骨の健康状態を評価することが推奨されています。特に以下の条件に当てはまる方は、骨密度検査(DXAスキャン)を受けるべきです。
年齢による基準
- 65歳以上のすべての男女は、リスク因子の有無にかかわらず骨密度検査を受けることが推奨されています。
- 50〜64歳の方は、以下の12のリスク因子のうち1つでも該当する場合に検査が必要です。
リスク因子
- 3ヶ月以上のステロイド使用(プレドニゾン5mg/日以上)
- 過去の低エネルギー骨折(特に股関節や脊椎)
- 代謝性骨疾患の既往
- 慢性腎疾患(ステージ3以上)
- 骨折リスク評価ツール(FRAX)の高リスク判定
- 過去の脊椎手術失敗歴(偽関節形成や固定具の緩みなど)
- アルコールの過剰摂取(1日3杯以上)
- ビタミンD欠乏症
- 喫煙
- 限られた移動能力(車椅子生活など)
- がん治療中(骨に影響を及ぼすホルモン療法や化学療法)
- 糖尿病(10年以上の罹患歴とコントロール不良)
50歳未満の患者でも、慢性ステロイド使用、過去の骨折歴、代謝性骨疾患、がん治療中、慢性腎疾患のいずれかに該当する場合は検査を行うことが推奨されています。
【2. 骨粗しょう症の診断と治療:手術前後で何をすべきか?】
診断方法
骨密度を測定するためには、主に以下の方法が推奨されています。
- DXA(デキサ)スキャン:骨密度を測定する標準的な方法で、股関節と腰椎を評価します。
- CT Hounsfield Units(CTHU):CTスキャンを活用して骨密度を推定する方法で、DXAスキャンが利用できない場合に有用です。ただし、正式な診断基準は確立されていません。
- 脊椎骨折評価:隠れた脊椎骨折を特定するため、DXA検査時に同時に行うことが推奨されています。
また、血液検査により、ビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD)のレベルを測定することも重要です。
治療法
骨粗しょう症が確認された場合、手術前後で以下のような治療を行います。
- ビタミンDとカルシウムの補給
- ビタミンD:1日1000〜2000IUのビタミンD3を摂取
- カルシウム:食事とサプリメントを含め、1日1000〜1200mgを推奨
- 骨を強くする薬の使用
- 第一選択:アナボリック薬(骨形成促進薬)
- テリパラチド(20μg/日)またはアバロパラチド(80μg/日)
- 手術の少なくとも2ヶ月前から開始し、手術後8ヶ月以上継続
- 第二選択:骨吸収抑制薬
- ビスホスホネート(ゾレドロン酸など)
- デノスマブ
アナボリック薬が使用できない場合や経済的負担が大きい場合には、これらの骨吸収抑制薬を代替手段として使用します。
【3. 手術成功率を高めるための総合的なアプローチ】
手術を成功させるためには、骨粗しょう症の診断と治療だけでなく、以下のような包括的なアプローチが推奨されています。
- 専門医との連携
- 骨粗しょう症と診断された場合、整形外科医、内分泌科医など骨の健康に詳しい医師との連携が重要です。
- 周術期管理
- 手術前:骨の健康を最適化し、骨密度を改善する治療を開始
- 手術中:骨質が不良と判断された場合、追加の評価と治療を行う
- 手術後:アナボリック薬の継続使用と定期的な骨密度評価
- 生活習慣の改善
- バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、適量のアルコール摂取など、日常生活で骨の健康を維持することも重要です。
【まとめ:骨を強くして、脊椎手術を成功に導こう】
脊椎再建手術を成功させるためには、骨粗しょう症の管理が欠かせません。特に高齢者やリスク因子を持つ患者は、手術前に必ず骨密度検査を受け、必要に応じて治療を開始することが重要です。
最新のガイドラインに基づいた診断と治療を行うことで、手術後の合併症リスクを減らし、より良い回復を目指すことができます。骨の健康を守りながら、安心して手術に臨みましょう。
【引用文献】
- Sardar, Z. M., Coury, J. R., Cerpa, M., et al. (2021). Best Practice Guidelines for Assessment and Management of Osteoporosis in Adult Patients Undergoing Elective Spinal Reconstruction. Spine, 47(2), 128-135. DOI: 10.1097/BRS.0000000000004268
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