元気になるオルソペディック ブログ
脊椎骨折の見逃しに要注意!診断遅れが引き起こすリスクとその対策
脊椎骨折の見逃しに要注意!診断遅れが引き起こすリスクとその対策
【脊椎骨折の診断遅れとは?気づかれにくい理由とその影響】
脊椎(せきつい)骨折は、転倒や交通事故などの外傷で起こることが多いと思われますが、高齢者では骨がもろくなる骨粗しょう症(こつそしょうしょう)が原因でいつのまにか骨折(明らかな外傷がなくても)が発生することもあります。しかし、この骨折はすぐに診断されないケースが少なくありません。診断の遅れが生じると、治療が遅れて症状が悪化したり、適切な処置ができずに後遺症が残ることもあります。
では、なぜ脊椎骨折は見逃されやすいのでしょうか?この記事では、その理由と、診断遅れが引き起こすリスクについて詳しく解説します。
【脊椎骨折の診断が遅れる原因】
脊椎骨折は他の骨折に比べて発見が遅れることがあります。その主な原因を見ていきましょう。
1. 痛みの程度が軽い場合がある
脊椎骨折の痛みは必ずしも激しいとは限りません。特に高齢者では「なんとなく腰が痛い」と感じる程度で済んでしまうことがあり、整形外科を受診せずに放置するケースもあります。その結果、骨折が悪化し、後から強い痛みや歩行困難などの症状が出てくることがあります。
2. X線検査だけでは診断できないことがある
一般的に病院ではまずX線(レントゲン)検査を行いますが、脊椎骨折はX線だけでははっきりと分からないことがあります。特に小さなひび割れ(微小骨折)は見逃されやすく、正確な診断にはMRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピュータ断層撮影)が必要になることがあります。
3. 骨密度の低下が影響する
骨粗しょう症の患者は、骨がもろいため骨折が起きても目立ちにくい場合があります。実際に、骨密度が低い人ではX線に写りにくいケースも報告されています。このため、高齢者の単なる「腰痛」と思われる症状が、実は骨折だったということが少なくありません。単純X線での診断断率は60%程度と言われています。単純X線に座位と臥位での機能写を撮影することで約90%の骨折が診断できると報告されています。
【脊椎骨折の診断遅れが引き起こすリスク】
脊椎骨折の診断が遅れると、さまざまなリスクが生じます。
1. 骨の変形が進み、治療が困難になる
骨折が治らないまま時間が経過すると、骨が変形し、姿勢が崩れたり、背中が曲がったりすることがあります。こうした変形は手術が必要になることもあり、治療の難易度が上がります。
2. 神経を圧迫し、しびれや麻痺を引き起こす
脊椎には神経が通っているため、骨折した部分が神経を圧迫すると、手足のしびれや筋力の低下が起こることがあります。特に重度の圧迫が生じると、歩行障害や排尿・排便の異常を引き起こすこともあります。破裂骨折型や強直性脊椎骨増殖症(DISH)がある場合は特に注意が必要です。
3. 慢性的な痛みが続く
骨折が適切に治療されないと、骨折部が偽関節となり、痛みが慢性化することがあります。特に高齢者では、痛みのために動くことが少なくなり、それが原因で筋力が低下して寝たきりになってしまうケースもあります。偽関節と診断された場合は経皮的椎体形成術(BKP)によって骨折部を安定化させ早期に除痛が可能です。
【脊椎骨折の診断遅れを防ぐための対策】
では、脊椎骨折の診断遅れを防ぐにはどうすればよいのでしょうか?
1. 転倒や事故の後は必ず医師の診察を受ける
転倒や事故の後、「たいしたことない」と思っても、必ず整形外科専門医に相談しましょう。特に腰や背中に違和感を感じる場合は、精密検査を受けることが重要です。
2. MRIやCT検査を受ける
X線検査では骨折が見つからないこともあるため、痛みが継続する場合はMRIやCT検査を受けることをおすすめします。これらの検査を行うことで、骨折の有無をより正確に判断できます。MRIで骨折が診断された場合に手術せずに治るのか、手術が必要(予後不良因子)になるかの治療方針が決定できます。
3. 高齢者や骨粗しょう症の方は定期的に骨密度を測る
骨粗しょう症のリスクがある人は、定期的に骨密度を測定し、骨の健康を管理しましょう。骨密度が低いと骨折しやすいため、早めに予防策を取ることが大切です。
4. 背中や腰の痛みが続く場合は放置しない
痛みが長引く場合は、単なる筋肉痛ではなく骨折の可能性があります。特に、痛みが徐々に強くなる場合や、動くと悪化する場合は要注意です。
【まとめ】
脊椎骨折は、診断が遅れると重篤な後遺症を引き起こす可能性があります。特に高齢者や骨粗しょう症の方は、骨折に気づかずに放置してしまうことが多いため注意が必要です。
転倒や事故の後に腰や背中に痛みを感じたら、「大丈夫だろう」と自己判断せずに、医療機関を受診しましょう。X線、MRIやCT検査を活用し、早期発見・早期治療を行うことで、骨折によるリスクを最小限に抑えることができます。
参考文献
Aso-Escario J, Sebastián C, Aso-Vizán A, et al. Delay in diagnosis of thoracolumbar fractures. Orthopedic Reviews. 2019;11:7774.
免責事項
- 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
- 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
- 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
- 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
- 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。
当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。