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膝の不安定感を解決!MPFL再建術の2つの手法を徹底解説
- 膝の不安定感を解決!MPFL再建術の2つの手法を徹底解説
【膝蓋骨脱臼の新しい治療法とは?MPFL再建術の2つの手法を比較】
膝蓋骨脱臼とは?
膝蓋骨(ひざのお皿)が通常の位置から外れてしまう「膝蓋骨脱臼」は、特に若年層やスポーツをする人に多い疾患です。この状態を繰り返すと、膝の安定性が損なわれ、痛みや運動制限が生じることがあります。特に、膝蓋骨の外側への脱臼が多く、その原因の一つが**内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)**の損傷です。
MPFLは膝蓋骨を適切な位置に保つ重要な靭帯であり、一度損傷すると脱臼を繰り返しやすくなります。そのため、再建術による治療が必要となる場合があります。
本記事では、MPFL再建術の2つの手法「二重束半腱様筋(ST)移植術」と「血行維持型大腿四頭筋(QT)移植術」の比較を行い、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
【二重束半腱様筋(ST)移植術とは?】
手術方法
二重束半腱様筋(ST)移植術は、患者自身のハムストリング(太ももの裏にある筋)の一部を移植し、MPFLを再建する手術法です。この方法では、膝蓋骨の内側に2つのトンネルを作り、そこに移植した腱を通して固定します。
メリット
- 長年の実績があり、多くの医師が実施している。
- 他の組織を傷つけるリスクが比較的少ない。
- 強度が高く、術後の安定性が期待できる。
デメリット
- ハムストリングから腱を採取するため、筋力低下が起こる可能性がある。
- 手術後の膝の伸展や屈曲の筋力回復に時間がかかることがある。
- 膝蓋骨にトンネルを作るため、骨折リスクが少なからず存在する。
【血行維持型大腿四頭筋(QT)移植術とは?】
手術方法
QT移植術では、大腿四頭筋(膝蓋骨の上にある太ももの筋)の一部を、血流を維持した状態でMPFLとして再建します。この方法では膝蓋骨にトンネルを作らず、筋の付着部を残したまま靭帯を形成します。
メリット
- 血流が維持されるため、組織の回復が早い。
- 膝蓋骨にトンネルを作らないため、手術後の骨折リスクが低い。
- 術後の膝の伸展・屈曲筋力がST移植術に比べて回復しやすい。
デメリット
- 技術的に難しく、実施できる医師が限られる。
- まだ比較的新しい手法で、長期的なデータが少ない。
【どちらの手術法が良いのか?】
最近の研究によると、QT移植術は術後の膝の筋力回復が早く、自然な動きを維持しやすいことが示されています。特に、スポーツ復帰を目指す患者にとって、筋力の回復は重要な要素となります。一方で、ST移植術も確立された手術法であり、適切なリハビリを行えば良好な結果が得られるとされています。
手術法の選択は、患者の状態や医師の経験によって決まります。膝蓋骨の安定性、再発リスク、筋力の回復度合いなどを考慮し、医師と十分に相談することが大切です。
【まとめ】
膝蓋骨脱臼は、MPFL再建術によって安定性を取り戻すことが可能です。伝統的なST移植術と新しいQT移植術のどちらを選ぶかは、患者のニーズや手術を受ける環境によります。どちらの手術も一定の成功率があり、適切なリハビリを行うことで膝の機能を改善できます。
手術を検討している方は、専門医とよく相談し、自分に合った方法を選びましょう。
【引用文献】 Özel T, Yaş S, Türkoğlu HH, Ahmadov A, Ataoğlu MB, Kanatlı U. Comparison of double bundle semitendinosus technique and pedicled quadriceps technique in patellar instability. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2025;1-10. https://doi.org/10.1002/ksa.12619
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