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脊椎外科医が解説!L5-S1 TLIFは本当に再手術が多いのか?

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【腰椎固定術 TLIF の選択:L4-L5 と L5-S1、レベルによる違いはあるか?】

はじめに

腰痛に悩む人々にとって、手術は最終手段のひとつです。その中でも「経椎間孔腰椎固定術(TLIF)」は、腰椎の不安定性を改善し、痛みを軽減するために行われる手術です。

しかし、TLIFの術式にはさまざまなバリエーションがあり、特に「L4-L5」と「L5-S1」という手術部位の違いによって、その結果が異なることがわかっています。今回の記事では、最新の研究結果を基に、どちらの部位での手術がより適切かについて詳しく解説します。


【TLIF とは? 手術の基本を解説】

TLIF(Transforaminal Lumbar Interbody Fusion)は、椎間板を取り除き、代わりに切除した骨や人工骨と人工のスペーサー(ケージ)を挿入して椎体間を固定する手術方法です。

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この手術の目的は、不安定な腰椎を固定し、痛みを軽減することにあります。一般的に、腰椎の変性疾患(腰椎すべり症や脊柱管狭窄症など)の治療として行われます。

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TLIFには以下のような特徴があります。

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  • 最小侵襲手術が可能で、筋肉へのダメージが少ない
  • 椎間板を除去することで、神経の圧迫を解消
  • 骨移植による骨癒合で、長期的な安定性を確保

TLIFはL4-L5、L5-S1といった異なる部位で行われますが、これによって手術結果に違いが生じるのです。


【L4-L5 と L5-S1 の違い:どう違うのか?】

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最新の研究では、L4-L5とL5-S1で行われたTLIFの手術成績が比較されました。その結果、

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  • L5-S1 での TLIF は L4-L5 に比べて再手術率が高い
  • L5-S1 では、術後の偽関節(骨が完全に癒合しない状態)が発生しやすい
  • 一方で、L5-S1 TLIF は腰椎の前弯(前側へのカーブ)をよりよく矯正できる

なぜ L5-S1 の方がリスクが高いのか?

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L5-S1は、骨盤に近いため安定性が高く見えますが、実際には大きな負荷がかかる部位です。歩行や座位、立ち上がりなど、日常動作のほとんどで強い圧力がかかるため、固定が難しくなります。その結果、偽関節が発生しやすく、再手術の必要性が高まるのです。

対して、L4-L5は運動の自由度が高く、手術後の負担がL5-S1に比べて少なくなります。このため、L4-L5でのTLIFは、比較的良好な結果を示すことが多いのです。

手術の違い

L4-L5 TLIF一般的な腰椎変性疾患で安定した結果が期待できる

  • L5-S1 TLIF前弯矯正が必要な場合に有効だが、偽関節のリスクがある。適切な手術手技で、椎体間の終板処置や適切な骨移植手技が大切。

したがって、患者の状態に応じて適切な手術を選択することが重要です。


【手術のリスクと合併症について】

どちらの手術にもリスクはありますが、特にL5-S1でのTLIFには以下のような合併症が報告されています。

  1. 偽関節(Pseudarthrosis)
    • 骨が適切に癒合せず、痛みが持続する可能性があります。
    • 再手術が必要になることも。
  2. 再手術のリスク
    • 研究によると、L5-S1 TLIFを受けた患者は、L4-L5 TLIFの約2.5倍の確率で再手術が必要になります。
  3. 神経損傷のリスク
    • 手術時の操作によって、神経が損傷するリスクもあります。
    • しかし、経験豊富な脊椎外科医による手術では、このリスクは最小限に抑えられます。

これらのリスクを踏まえた上で、医師としっかり相談しながら治療法を選択することが大切です。


【まとめ】

TLIFは腰椎の安定性を改善し、痛みを軽減する手術ですが、手術部位によって結果が異なることがわかっています。

  • L5-S1 TLIF は前弯矯正能力が高いが、再手術率が高い
  • どちらの手術もリスクがあるため、医師と十分に相談することが大切

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腰痛や脊椎疾患に悩んでいる方は、手術のメリットとリスクを正しく理解し、自分に合った治療法を選ぶことが重要です。最新の研究結果を参考に、医師としっかり話し合いながら最善の選択をしてください。


参考文献

  • Singh M, Casey J, Glueck J, et al. L5-S1 Transforaminal Lumbar Interbody Fusion is Associated With Increased Revisions Compared With L4-L5 Transforaminal Lumbar Interbody Fusion at Two Years. Spine. 2025;50:E79-E84.
  • Ishii K, Watanabe G, Tomita T, et al. Minimally Invasive Spinal Treatment (MIST)--A New Concept in the Treatment of Spinal Diseases: A Narrative Review. Medicina. 2022;58:1123. https://doi.org/10.3390/medicina58081123

 

 

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