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腰椎手術の落とし穴!固定術と隣接椎間障害の関係を徹底解説

  1. 腰椎手術の落とし穴!固定術と隣接椎間障害の関係を徹底解説

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【腰椎手術後の隣接椎間障害とは?そのリスクと原因を解説】

腰椎の手術を受けた後、しばらくしてまた腰痛が出てくることがあります。これは「隣接椎間障害(Adjacent Segment Disease: ASD)」と呼ばれる症状の可能性があります。

固定術の適応.jpg固定術.jpg

隣接椎間障害とは、腰椎の固定術(インストゥルメントを使用した融合手術)を受けた患者に起こる可能性がある問題で、固定された椎間の隣にある部分に負担がかかることで、新たな障害が発生することを指します。

本記事では、最新の研究結果をもとに、腰椎手術後の隣接椎間障害のリスクや原因、手術方法との関係について詳しく解説します。


【固定術+椎弓切除が隣接椎間障害を引き起こす?】

最近の研究によると、「腰椎固定術に加えて、隣接した椎間での椎弓切除術(ラミネクトミー)を行うと、隣接椎間障害のリスクが高まる」ことが分かりました。

この研究では、以下のような結果が得られています。

ASDの発生率除圧の有無.JPG術後成績差なし.JPG

  • 固定術+椎弓切除を受けたグループでは、**57.5%**の患者が隣接椎間障害を発症
  • 固定術のみのグループでは、発症率が35.2%
  • 再手術が必要になった割合も、固定術+椎弓切除グループで**22.1%**と高く、固定術のみのグループ(13.5%)よりもリスクが高い

つまり、「固定術を受ける際に、隣接する椎間の椎弓切除を行うと、隣接椎間障害が起こりやすい」ことがデータで示されています。

なぜこのような結果になるのでしょうか?


【なぜ固定術と椎弓切除がASDリスクを高めるのか?】

隣接椎間障害が発生する理由はいくつか考えられます。

  1. 固定術により、隣接する椎間に負担がかかる
    • 固定術を行うと、その部分は動かなくなります。
    • その結果、隣接する椎間が過剰に動くようになり、椎間板や関節に負担がかかるのです。
  2. 椎弓切除により、隣接する部分が不安定になる
    • 椎弓切除術は、神経の圧迫を取り除くために行われます。
    • しかし、この手術を隣接する椎間で行うと、その部分の安定性が低下し、さらに負担がかかることが考えられます。
  3. 生体力学的な影響
    • 研究では、椎弓切除を行った部分では椎間の可動性が増し、関節や椎間板の負担が増えることが示されています。
    • これが隣接椎間障害の原因になる可能性があります。

このような理由から、「固定術+隣接椎間の椎弓切除」は、隣接椎間障害のリスクを高める可能性があるのです。

ASDロジスティクス解析.JPG


【手術を受ける際の注意点と予防策】

では、手術を受ける患者さんはどのように対策すればよいのでしょうか?以下のポイントを押さえておくことが重要です。

1. 手術方法の選択を慎重に

  • すべての患者において、固定術+椎弓切除が悪いわけではありません。
  • しかし、「隣接する椎間での椎弓切除が本当に必要か?」を慎重に判断することが大切です。

2. 最小侵襲手術(MIS)の活用

低侵襲脊椎手術の進歩PETLIF.jpg

  • 近年、**最小侵襲手術(Minimally Invasive Surgery: MIS)**の技術が進歩しています。
  • MISでは、周囲の靭帯や組織をできるだけ温存することで、隣接椎間障害のリスクを減らせる可能性があります。

3. 術後のリハビリと適切な運動

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  • 手術後に適切なリハビリを行うことで、隣接する椎間への負担を軽減できます。体幹リハビリテーション.jpg
  • 例えば、コアマッスル(体幹)を鍛えるエクササイズは、腰椎の安定性を高め、ASDのリスクを下げる効果が期待できます。

4. 長期的な経過観察

整形外科定期受診.jpg

  • ASDは、手術後すぐに起こるものではなく、数年かけて発症することが多いです。
  • そのため、定期的なMRIやX線検査を受けて、状態をチェックすることが重要です。

【まとめ:腰椎手術を受ける際は慎重な判断を】

整形外科のなやみ.JPG

今回紹介した研究では、「固定術+隣接椎間の椎弓切除」が隣接椎間障害のリスクを高める可能性があることが示されました。

しかし、すべての患者に当てはまるわけではなく、手術の適応を慎重に判断することが大切です。

手術の選択肢をよく理解し、医師としっかり相談することが重要です。
最小侵襲手術や術後リハビリを活用し、ASDのリスクを抑えることが可能です。
長期的な経過観察を行い、症状の進行を防ぐことが大切です。

手術を検討している方は、ぜひこれらのポイントを参考にしてみてください。


【参考文献】

Simonetta B, Adeniyi B, Corbett A, Crandall D, Chang M.
Laminectomy Adjacent to Instrumented Fusion Increases Adjacent Segment Disease.
Spine 2025;50(3):196-200. DOI: 10.1097/BRS.0000000000005008.

 

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