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足首の捻挫を繰り返すと危険?距骨の軟骨損傷と治療法を専門医が解説
【足首の捻挫を繰り返すと危険?距骨の軟骨損傷と治療法を専門医が解説】
はじめに
「捻挫は放っておいても治る」と思っていませんか?実は、捻挫を繰り返すことで足首の関節が不安定になり、軟骨が損傷するリスクが高まるのです。本記事では、慢性足関節不安定症(CLAI)と距骨の骨軟骨病変(OLT)の関係、そして最新の治療法について、整形外科専門医がわかりやすく解説します。
【足首の不安定さが軟骨を傷めるメカニズム】
足首の関節は靭帯(じんたい)によって支えられています。しかし、捻挫を繰り返すことで靭帯が緩み、関節の安定性が失われると、足首の骨と骨の間にある軟骨に過度な負担がかかります。
なぜ軟骨が損傷するのか?
靭帯が緩んだ状態では、関節がわずかにズレる「微小不安定性(マイクロインスタビリティ)」が起こります。この不安定性によって、軟骨が繰り返し摩擦を受け、すり減ったり、剥がれたりするのです。特に距骨(きょこつ)と呼ばれる足関節の中心にある骨は、血流が少なく、損傷が起こると治りにくい特徴があります。
軟骨が傷むとどうなる?
軟骨は関節のクッションの役割を果たしており、損傷すると歩くたびに痛みを感じるようになります。進行すると変形性足関節症(へんけいせいそくかんせつしょう)に移行し、手術が必要になるケースもあります。
【距骨の軟骨損傷(OLT)の治療法】
距骨の軟骨損傷(OLT)に対する治療法は、損傷の程度や患者の状態によって異なります。
1. 保存療法(軽度の損傷)
軽度の損傷であれば、
- 足関節を安定させるリハビリ
- 装具(サポーターやテーピング)による補強
- 衝撃を和らげる靴の使用 などの方法で症状を改善できます。
2. 手術療法(進行した損傷)
損傷が進行した場合は手術が必要になります。代表的な方法は以下の通りです。
デブリードマン(損傷部分の除去)
軟骨の損傷部分を削り取り、なめらかに整える方法です。軽度の損傷には有効ですが、再発のリスクがあります。
微小骨折法(マイクロフラクチャー)
軟骨下の骨に小さな穴を開け、骨髄から修復細胞を誘導して新しい軟骨を形成する治療法です。ただし、新しくできる軟骨は天然の軟骨よりも耐久性が劣るため、活動量の多い人には向かないこともあります。
自家軟骨移植(OAT)
患者自身の健康な軟骨を損傷部分に移植する方法です。耐久性の高い軟骨を再生できますが、移植できる範囲が限られています。
骨移植を伴う軟骨修復術
骨と軟骨の両方が損傷している場合に行われる方法で、人工骨や自己骨を移植して関節の機能を回復させます。
【足関節不安定症(CLAI)とOLTを同時に治療する意義】
最新の研究によると、距骨の軟骨損傷(OLT)の治療と同時に、足関節不安定症(CLAI)の安定化手術を行うことで、長期的な関節の健康を守ることができる可能性が示されています。
研究結果のポイント
- OLT治療のみを行った患者と、OLT治療に加えてCLAIの安定化手術を行った患者を比較した。
- どちらの治療群も軟骨の修復状態は同等であった。
- ただし、安定化手術を受けた患者は術後の関節の可動域がやや制限される傾向があった。
- 長期的には、足関節の安定性を確保することで、変形性関節症への進行を防ぐ可能性がある。
どんな人に適した治療なのか?
CLAIを伴うOLTの患者では、足関節の安定性を確保することが重要です。ただし、手術による関節の可動域制限のリスクもあるため、患者ごとのリスク・ベネフィットを考慮したうえで治療計画を立てる必要があります。
【まとめ】
足首の捻挫を繰り返している方は、単なる捻挫ではなく「慢性足関節不安定症(CLAI)」になっている可能性があります。この状態を放置すると、距骨の軟骨が損傷し、歩行時の痛みや将来的な変形性関節症のリスクが高まります。
距骨の軟骨損傷(OLT)の治療には、リハビリや装具を用いた保存療法、または手術療法があります。特にCLAIを伴う場合には、安定化手術を併用することで関節の健康を守ることができる可能性が示されています。
足首に違和感が続く方や、繰り返し捻挫をしてしまう方は、一度専門医に相談してみてはいかがでしょうか?
参考文献
Rikken QGH, Dahmen J, Kerkhoffs GMMJ. Concomitant Stabilization Is Recommended When Treating Osteochondral Lesions of the Talus in Patients With Chronic Lateral Ankle Instability. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery. 2025. doi: https://doi.org/10.1016/j.arthro.2025.02.005
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