成尾整形外科病院

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五十肩(凍結肩)の最新治療!麻酔下徒手矯正術(MUA)の効果と成功のポイント

五十肩(凍結肩)の最新治療!麻酔下徒手矯正術(MUA)の効果と成功のポイント

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【五十肩(凍結肩)とは?痛みと可動域制限の原因】

五十肩(正式名称:凍結肩、adhesive capsulitis)は、肩関節の動きが制限される疾患の一つです。特に50代・60代の方に多く見られ、肩の痛みと動かしにくさが特徴です。
肩関節を包む関節包が厚く硬くなり、関節の動きが制限されることで発症します。多くの場合、片側の肩に起こり、進行すると日常生活にも大きな影響を及ぼします。

五十肩の進行ステージ

五十肩は、進行度に応じて4つのステージに分けられます。

  • ステージ1(0~3ヶ月):痛みが出始めるが、まだ動かせる範囲は広い
  • ステージ2(3~9ヶ月):肩の動きが制限され、日常生活にも支障が出る
  • ステージ3(9~15ヶ月):可動域の制限がさらに進行し、痛みはやや軽減する
  • ステージ4(15ヶ月以上):関節包の癒着が強くなり、肩がほとんど動かせなくなる

このように、五十肩は時間が経つにつれて関節の拘縮(こうしゅく:動きが悪くなること)が強くなり、最終的に「肩が固まる」状態に陥ります。
では、この拘縮を改善するにはどうすればよいのでしょうか?


【五十肩の治療法:MUA(麻酔下徒手矯正術)とは?】

五十肩の治療には保存療法(ストレッチ・薬物治療)と手術的治療の2つのアプローチがあります。
その中間に位置するのが**麻酔下徒手矯正術(MUA:Manipulation Under Anesthesia)**です。

MUAとは?

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MUAは、全身麻酔や局所麻酔の下で、医師が患者の肩を慎重に動かし、硬くなった関節包を伸ばして可動域を回復させる治療法です。
関節の拘縮を強制的に解放することで、可動域の回復を狙います。

MUAのメリットは、手術よりも侵襲が少なく、比較的短期間で効果が期待できることです。
しかし、適応となる時期が重要であり、進行しすぎた状態では十分な効果が得られないこともあります。


【MUAの成功を左右する『剥離力』とは?】

最近の研究では、MUAの成功率を高めるために、「剥離力(releasing force)」という新しい指標が注目されています。
剥離力とは、MUAの際に関節包の癒着を破るために必要な力のことを指します。

剥離力が高いと何が問題?

研究によると、剥離力が53N(ニュートン)以上の患者は、MUA後の可動域の回復が悪くなることが分かっています。
つまり、拘縮が進行しすぎていると、MUAを行っても効果が出にくくなるのです。

剥離力と五十肩のステージの関係

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  • ステージ2・3の患者(比較的早期) → 剥離力が低く、MUA後の回復が良好
  • ステージ4の患者(進行したケース) → 剥離力が高く、MUA後の可動域回復が不十分

このことから、MUAはステージ4に進行する前に行う方が良いと考えられます。


【MUAを受けるべきか?適応の目安とリスク】

MUAはすべての五十肩患者に適しているわけではありません。以下のポイントを目安に、治療の選択肢として検討しましょう。

MUAを考慮すべき人

✅ 3ヶ月以上の保存療法(リハビリ・薬物療法)を続けても改善しない
✅ 日常生活に支障をきたしている(服の着脱が困難、髪を結ぶのが難しい など)
✅ 肩の可動域が50%以上低下している
✅ 医師の診察でMUAが適応と判断された場合

MUAのリスク

MUAは比較的安全な治療法ですが、以下のリスクもあります。

痛みの再発:拘縮が再び起こる可能性がある
骨折や腱損傷:過度な力が加わると、肩の組織にダメージが出ることも
効果が不十分:拘縮が進みすぎている場合、十分な可動域が回復しないことも

特に、糖尿病患者は剥離力が高くなりやすく、術後の回復が遅れる傾向があるため、治療計画を慎重に立てる必要があります。


【まとめ】五十肩治療の最新トレンド:早期治療の重要性

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今回の研究から、五十肩の治療において以下の点が重要であることが分かりました。

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