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腰部脊柱管狭窄症の手術、再手術率は?除圧術と固定術の比較結果を解説!
- 腰部脊柱管狭窄症の手術、再手術率は?除圧術と固定術の比較結果を解説!
【腰部脊柱管狭窄症の手術後、再手術のリスクとは?】
腰部脊柱管狭窄症は、加齢や骨の変性によって脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されてしまう病気です。この病気による歩行障害や痛みが強くなると、手術が選択肢になります。手術には大きく分けて「除圧術」と「固定術」の2種類がありますが、どちらの手術が長期的に良い結果をもたらすのか気になる方も多いでしょう。
最近の研究では、この2つの手術方法の「再手術率」に大きな差があるのかどうかが検証されました。本記事では、腰部脊柱管狭窄症の手術後に再手術が必要となる確率や、その要因について詳しく解説します。
【除圧術と固定術、それぞれの特徴とは?】
まず、2つの手術の違いを簡単に説明しましょう。
① 除圧術
これは、狭くなった脊柱管の一部を削り、神経の圧迫を取り除く手術です。背骨の動きを固定することはせず、基本的に骨の構造はそのまま維持されます。
メリット:
- 手術時間が短い
- 体への負担が比較的少ない
- 術後の回復が早い
デメリット:
- 長期的にみると、再び狭窄が進行する可能性がある
- 不安定な骨の状態では、症状が再発しやすい
② 固定術
除圧術に加えて、骨と骨の間を金属のスクリューやロッドで固定する手術です。主に、背骨のぐらつき(不安定性)や辷りや側弯などアライメント不良がある場合に行われます。
メリット:
- 背骨の安定性が向上し、再発のリスクが低い
- 長期間にわたり痛みの軽減が期待できる
デメリット:
- 手術時間が長く、体への負担が大きい
- 骨が完全に固まるまで時間がかかる
- 隣接する背骨の負担が増し、新たな問題を引き起こすことがある
【再手術の確率は? 最新研究の結果】
最近発表されたスイスの多施設共同研究では、腰部脊柱管狭窄症の患者328名を対象に、「除圧術のみ」と「除圧+固定術」の手術後の再手術率を比較しました。
その結果、3年後の再手術率は以下のようになりました。
- 除圧術のみの患者: 11.3%(約9人に1人)
- 固定術を受けた患者: 13.9%(約7人に1人)
このデータからわかるように、両者の再手術率には大きな差がありませんでした(統計的な有意差なし)。つまり、固定術を行ったからといって、必ずしも再手術のリスクが低くなるわけではないという結果でした。
また、再手術が必要となる主な理由は以下のようなものでした。
- 除圧術のみの患者: 再び神経が圧迫される(再狭窄)
- 固定術の患者: 固定したスクリューが緩んでしまう(スクリューのゆるみ)
このように、手術の種類によって異なる原因で再手術が必要になることがわかります。
【手術後に再発を防ぐために大切なこと】
手術後の再発リスクを減らすためには、以下の点に注意することが重要です。
① 体重管理
体重が増えると、背骨への負担が大きくなります。適正体重を維持することで、手術後の安定性を高めることができます。
② 筋力トレーニング
特に背筋や腹筋を鍛えることで、背骨を支える力が強くなり、再発リスクを減らすことができます。無理のない範囲で、専門家の指導のもと運動を継続しましょう。
③ 定期的な診察
術後も定期的に医師の診察を受け、異常がないかチェックすることが大切です。早期に異常を発見できれば、再手術を防ぐことができる可能性があります。
④ 日常生活での姿勢管理
長時間の前かがみや、無理な姿勢を避けることが大切です。特に重い荷物を持つ際には、膝を使って持ち上げるなど、腰への負担を減らす工夫をしましょう。
【まとめ】
腰部脊柱管狭窄症の手術には「除圧術」と「固定術」がありますが、どちらの手術を選んでも再手術率に大きな違いはないことが研究で示されました。
それぞれの手術にはメリット・デメリットがあるため、自分の症状やライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。また、手術後の生活習慣を見直し、適切なリハビリを行うことで、再発リスクを減らすことができます。
手術を検討している方や、術後の経過が気になる方は、担当の医師と十分に相談し、納得のいく選択をしてください。
【参考文献】
- Nils H. Ulrich et al. Incidence of Revision Surgery After Decompression With vs Without Fusion Among Patients With Degenerative Lumbar Spinal Stenosis. JAMA Network Open. 2022;5(7):e2223803. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.23803
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