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腰椎椎間板ヘルニアの最新手術法!全内視鏡下腰椎椎間板切除術(FED)とは?
腰椎椎間板ヘルニアの最新手術法!
全内視鏡下腰椎椎間板切除術(FED)とは?
【全内視鏡下腰椎椎間板切除術とは?】
腰椎椎間板ヘルニア(LDH)は、腰痛や坐骨神経痛を引き起こす一般的な疾患です。従来の治療法には保存療法と手術療法がありますが、近年、低侵襲脊椎手術である**全内視鏡下腰椎椎間板切除術(Full-Endoscopic Lumbar Discectomy:FED)**が注目を集めています。
この手術は、皮膚を大きく切開することなく、細い内視鏡を使って椎間板の飛び出した部分を取り除く方法です。これにより、手術の侵襲を最小限に抑え、患者の回復を早めることができます。
FEDには、**経椎間孔アプローチ(TF-FED)と椎弓間アプローチ(IL-FED)**の2つの方法があります。どちらの方法を選ぶかは、椎間板ヘルニアの部位や形状、患者の骨格に応じて決まります。
【経椎間孔(TF-FED)と椎弓間(IL-FED)アプローチの選択基準】
全内視鏡下手術には、主に**経椎間孔アプローチ(TF-FED)と椎弓間アプローチ(IL-FED)**の2種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
■ 経椎間孔アプローチ(TF-FED)
- 側方から内視鏡を挿入し、椎間孔を通してヘルニアを取り除く
- 適応部位:L1/L2からL4/L5のヘルニア、外側(foraminal)や椎間孔外(extraforaminal)に飛び出したもの
- メリット:局所麻酔での施行が可能で、手術後の回復が早い
- デメリット:高い腸骨稜(L5/S1レベル)があるとアプローチが難しい
■ 椎弓間アプローチ(IL-FED)
- 後方からアプローチし、椎弓間(interlaminar)からヘルニアを除去
- 適応部位:L4/L5およびL5/S1のヘルニア、中心部(central)や関節下(subarticular)にあるもの
- メリット:L5/S1の高い腸骨稜があっても実施しやすい
- デメリット:麻酔の種類や術者の技術によっては手術時間が長くなる可能性がある
手術の適応は、MRI画像などをもとに慎重に判断されます。また、TF-FEDとIL-FEDを組み合わせることで、より良い結果を得ることも可能です。
【全内視鏡下腰椎椎間板切除術のメリット・デメリット】
■ メリット
- 傷が小さい:皮膚の切開は約8mm程度で、傷跡がほとんど残らない
- 早期回復:手術当日または翌日には歩行が可能で、入院期間が短い
- 合併症リスクの低減:筋肉や靭帯へのダメージが少なく、出血も最小限
- 局所麻酔での施行可能:全身麻酔が不要な場合もあり、高齢者にも適応しやすい
■ デメリット
- 技術的に難しい:経験のある術者でないと十分な除去が難しく、学習曲線が長い
- 特定の症例には向かない:高度な脊柱管狭窄症や大きく飛び出したヘルニアには適さない場合がある
- 再発の可能性:研究によると、FED後の再発率は約2.65%と報告されている【引用:Kotheeranurakら, 2023】
これらのメリット・デメリットを理解した上で、患者ごとに最適な治療法を選択することが重要です。
【まとめ】
全内視鏡下腰椎椎間板切除術(FED)は、腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲な治療法として注目されています。適応部位やヘルニアのタイプによって、経椎間孔アプローチ(TF-FED)と椎弓間アプローチ(IL-FED)のどちらを選択するかが決まります。
手術のメリット
- 低侵襲で回復が早い
- 傷が小さく、出血が少ない
- 高齢者や基礎疾患を持つ患者にも適応可能
手術のデメリット
- 術者の技術に依存する
- 症例によっては適応外となることもある
- 再発の可能性がある
今後もFEDに関する研究が進み、より安全で効果的な手術法が確立されていくことが期待されます。
【引用文献】
Kotheeranurak V, Liawrungrueang W, Quillo-Olvera J, et al. Full-Endoscopic Lumbar Discectomy Approach Selection: A Systematic Review and Proposed Algorithm. Spine (Phila Pa 1976). 2023;48(8):534-544. DOI: 10.1097/BRS.0000000000004589.
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