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手術なしで椎間板ヘルニアを縮小?椎間板内酵素注入療法注射の効果と安全性を徹底解説
【椎間板内酵素注入療法とは?腰椎椎間板ヘルニアに対する新しい治療法】
腰椎椎間板ヘルニアは、腰の痛みや足のしびれを引き起こす一般的な疾患です。これまでは手術が必要とされることも多かったですが、最近では「椎間板内酵素注入療法」という注射治療が注目されています。
椎間板内酵素注入療法は、椎間板の中心にある「髄核(ずいかく)」に含まれる成分を分解し、ヘルニアによる神経圧迫を和らげる酵素製剤です。この治療法は日本で開発され、手術をせずに症状を改善できる点が大きな魅力です。
本記事では、椎間板内酵素注入療法の効果や安全性、治療の流れについて、脊椎外科専門医の視点からわかりやすく解説します。
【椎間板内酵素注入療法の効果と治療の流れ】
椎間板内酵素注入療法治療は、椎間板に直接注射するシンプルな方法です。手順は以下の通りです。
- 診断:MRIなどの画像検査で、ヘルニアの状態を確認します。後縦靭帯下脱出型(subligamentous type)ヘルニアが適応となります。
- 注射:局所麻酔のもと、X線透視下で椎間板内酵素注入療法をヘルニア部位に注入します。
- 経過観察:注射後は1日入院し、その後は外来で経過を確認します。
この治療により、椎間板内の髄核が縮小し、神経の圧迫が軽減されることで痛みやしびれが改善されます。
臨床試験では、椎間板内酵素注入療法を注射した患者の72%が13週間後に痛みが50%以上改善されたことが報告されています(Chiba et al., 2018)。
症例です。30代の女性です。半年間の保存療法を受けられましたが、下肢痛が改善せずに紹介となりました。椎間板内酵素注入療法を行い、下肢痛が改善しました。
【気になる副作用と安全性】
椎間板内酵素注入療法は比較的安全な治療法ですが、副作用が全くないわけではありません。報告された主な副作用は以下の通りです。
- 腰痛:注射後に一時的な腰痛が生じることがありますが、多くは1週間以内に軽快します。
- アレルギー反応:稀に皮疹やかゆみが見られますが、重篤なケースはほとんどありません。
- 椎間板の変化:椎間板の高さが少し低下することがありますが、臨床的な影響は少ないとされています。
注射後は医師の指導に従い、無理をせず安静に過ごすことが重要です。
【こんな人におすすめ!椎間板内酵素注入療法治療の適応】
椎間板内酵素注入療法は、以下のような患者さんに適しています。
- 保存療法(薬物療法やリハビリ)でも改善しない中程度の腰椎椎間板ヘルニア
- 20〜70歳の比較的健康な方
- 神経の圧迫による片側の足のしびれや痛みがある方
一方で、椎間板が完全に飛び出してしまった「脱出型ヘルニア」は適応外となる場合があります。
【まとめ】
椎間板内酵素注入療法は、腰椎椎間板ヘルニアに対する効果的かつ低侵襲な治療法として期待されています。手術を避けたい方や、保存療法で効果が得られない方にとって、有力な選択肢となるでしょう。
ただし、全てのヘルニアに適応できるわけではないため、専門医としっかり相談し、最適な治療法を選ぶことが大切です。
引用文献: Chiba K, Matsuyama Y, Seo T, Toyama Y. Condoliase for the Treatment of Lumbar Disc Herniation: A Randomized Controlled Trial. Spine. 2018;43(15):E869-E876.
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