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【肩の脱臼を防ぐ!バンカート修復術とその効果を徹底解説】
【バンカート修復術とは?肩の脱臼を防ぐ治療】
肩関節は人体の中でも最も可動域が広い関節ですが、その分不安定になりやすく、脱臼しやすいという特徴があります。特にスポーツ選手や若年層に多いのが「前方肩関節不安定症」で、肩が前方にずれたり脱臼したりする状態です。
この症状の代表的な治療法が「バンカート修復術」です。本記事では、バンカート修復術の基本、適応となる患者、最新の研究に基づく治療の進展についてわかりやすく解説します。
【バンカート修復術の適応と手術方法】
バンカート損傷とは?
肩の脱臼が繰り返されると、肩関節の受け皿である「関節窩(かんせつか)」の前側にある「関節唇(かんせつしん)」という軟骨が損傷します。これを「バンカート損傷」と呼びます。この損傷があると、肩が簡単に外れてしまうようになり、スポーツや日常生活に支障をきたします。
バンカート修復術の適応
バンカート修復術は、以下のような方に適応されます。
- 繰り返し肩の脱臼を経験している
- 関節唇の損傷が確認されている
- 肩の不安定性がスポーツや生活に支障をきたしている
- グレノイド(肩関節の受け皿)の骨欠損が10%未満である
手術の種類
バンカート修復術には、大きく分けて2つの方法があります。
- 関節鏡視下バンカート修復術
- 小さなカメラを関節内に挿入し、関節唇を糸付きアンカーで修復します。
- 傷が小さく、回復が早いのが特徴です。
- 開放バンカート修復術
- 皮膚を切開して直接肩関節を開き、関節唇を修復します。
- 強固な固定が可能で、特にコンタクトスポーツ選手に適しています。
【バンカート修復術の最新研究と予後】
最近の研究では、バンカート修復術の成功率や手術の選択基準について新たな知見が得られています。
成功率と合併症
- 関節鏡視下修復術:再脱臼率は約20〜30%とされ、特に若年層やスポーツ選手では再発リスクが高いとされています。
- 開放修復術:長期予後が良好で、再脱臼率は1.6〜17.5%と低いことが報告されています。
スポーツ復帰率
- バンカート修復術を受けたアスリートの70%が、元の競技レベルに復帰できると報告されています。
- ただし、リハビリテーションが重要であり、適切な筋力トレーニングと可動域訓練が必要です。
新たな治療アルゴリズム
近年、バンカート修復術の適応を判断するためのツールが開発されています。 例えば「Pittsburgh Instability Tool(PIT)」というスコアリングシステムでは、
- 年齢
- 過去の脱臼回数
- 骨欠損の程度
- スポーツの種類 などを考慮し、適切な手術法を選択する指標となっています。
【まとめ】バンカート修復術で肩の安定性を取り戻す
バンカート修復術は、肩の脱臼を防ぐための有効な治療法です。特に、コンタクトスポーツをする方や繰り返し脱臼する方に適しており、関節鏡視下手術と開放手術の選択肢があります。
最新の研究では、開放バンカート修復術が長期的な安定性に優れていることが示唆されており、特にスポーツ選手に推奨されています。今後も、より個別化された治療アルゴリズムの確立が期待されます。
バンカート修復術を受けるか悩んでいる方は、専門医と相談し、自分に合った治療法を選択することが大切です。
引用論文 Lin A, Hauer TM. Editorial Commentary: Open Bankart Procedure for Anterior Shoulder Instability is Recommended for Contact Athletes With Bony Bankart Fractures or Approximately 10% of Glenoid Bone Loss. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery (2025). doi: https://doi.org/10.1016/j.arthro.2025.02.001
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