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腰痛の新常識!骨盤の代償が機能しないとどうなる?
腰痛の新常識!骨盤の代償が機能しないとどうなる?
今回の研究では、成人脊椎変形(ASD)**の患者において、「骨盤代償の失敗(FPC)」がどのように姿勢や生活の質に影響を与えるかが詳しく調査されました。特に、骨盤の動きが制限されることで、脊椎のバランスが崩れる仕組みに注目し、新しい評価基準を提案しています。本記事では、そのポイントを分かりやすく解説していきます。
【骨盤代償とは?脊椎と姿勢の密接な関係】
骨盤代償の役割
脊椎(背骨)を安定させるために、骨盤は重要な代償機能を果たしています。加齢や病気によって脊椎が前傾すると、骨盤が後傾することでバランスを保つ仕組みになっています。この動きを「骨盤代償」と呼びます。
しかし、骨盤の可動域が制限されると、この代償機能が十分に働かず、結果として姿勢が崩れてしまいます。これが「骨盤代償の失敗(FPC)」と呼ばれる状態です。
骨盤代償が失敗するとどうなる?
骨盤代償がうまくいかないと、以下のような問題が発生します。
- 姿勢が悪くなる(前傾姿勢が固定化される)
- 腰や背中の痛みが増す
- 歩行が不安定になり、転倒リスクが上がる
- 生活の質(QoL)が低下する
【研究結果:骨盤代償が失敗する人の特徴とは?】
1. 骨盤の柔軟性が低い
本研究では、骨盤の「代償予備力」が低い人ほどFPCになりやすいことが示されました。代償予備力とは、骨盤が後傾して脊椎のバランスを保つ能力のことです。この予備力が低い人は、脊椎が前傾しても骨盤を適切に動かせず、結果としてFPCを起こしやすくなります。
2. 背筋(脊柱起立筋)の筋力低下
FPCの患者は、MRIで「脊柱周囲の筋肉(多裂筋・脊柱起立筋)の脂肪変性」が進んでいることが確認されました。つまり、筋肉が弱くなって脂肪に置き換わっている状態です。
このような筋力低下が進むと、骨盤を代償する力が弱まり、FPCのリスクが高くなります。
3. 脊椎の後弯(曲がり具合)が異なる
FPCを起こした患者は、脊椎の上部(胸椎)が強く曲がり、腰椎(腰の部分)は代償しきれないという特徴がありました。この結果、背中が丸まり、前傾姿勢が強調されてしまいます。
【FPCを防ぐための対策】
1. 骨盤の柔軟性を高めるストレッチ
骨盤の動きを良くするために、股関節を柔らかくするストレッチが有効です。特に「骨盤前傾・後傾運動」を取り入れることで、代償機能の低下を防ぐことができます。
2. 背筋を鍛えるトレーニング
脊柱起立筋や多裂筋の筋力を維持することで、骨盤代償の力を強化できます。以下のようなエクササイズが効果的です。
- バックエクステンション(背筋トレーニング)
- プランク(体幹トレーニング)
- スクワット(下半身の安定性向上)
3. 正しい姿勢を意識する
座っているときや立っているときに、骨盤を適切に使う姿勢を意識することが重要です。特に、デスクワークが多い人は、骨盤が後傾しすぎないように椅子の高さを調整するのもおすすめです。
【まとめ】
今回の研究では、骨盤代償が機能しない「FPC(骨盤代償の失敗)」が、脊椎のバランスや生活の質に大きく影響することが明らかになりました。
**FPCのリスクを減らすためには、骨盤の柔軟性を高め、背筋を鍛えることが重要です。**普段から正しい姿勢を意識し、適度な運動を取り入れることで、FPCを予防し、より快適な生活を送ることができるでしょう。
引用論文:
Wang D, Wang W, Wang Y, et al. Identification and impact of failure of pelvic compensation in patients with adult spinal deformity. The Spine Journal, 2024. https://doi.org/10.1016/j.spinee.2024.06.011
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