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思春期特発性側弯症の姿勢と検査精度|3D超音波が明らかにした事実

思春期特発性側弯症の姿勢と検査精度|3D超音波が明らかにした事実

 

【側弯症と姿勢:検査結果に影響する?】

AISレントゲン.JPG

思春期特発性側弯症(AIS)は、成長期に発症する背骨の曲がりです。側弯症の診断や進行を評価するために、定期的な画像検査が必要ですが、従来のレントゲンには放射線被曝のリスクが伴います。

そこで注目されているのが**3D超音波(3DUS)**による検査法です。この技術を用いた研究が、カナダのアルバータ大学で行われました。研究では、異なる立ち姿勢が脊椎の測定値に影響を与えるのかを詳しく検討しています。

では、立ち姿勢の違いが側弯症の評価に影響を及ぼすのでしょうか?最新の研究結果をもとに、詳しく解説します。


【研究の目的と方法】

AIS検診エコー.JPG

この研究の目的は、「異なる立ち姿勢が、3D超音波を用いた側弯症の測定結果に影響を与えるのか」を検証することでした。

研究の概要

  • 研究対象:59名の女性(側弯症の有無に関係なく)
  • 測定方法:3D超音波を使った脊椎の測定
  • 比較内容:10種類の立ち姿勢による違い
  • 測定項目:
    • インターアピカルディスタンス(最も外側に位置する椎骨の横方向の距離)
    • 冠状面バランス(背骨の中央線からのズレ)

対象者は、側弯症がない人・単弯の人・二重弯の人に分類され、さまざまな姿勢で測定が行われました。


【結果:立ち姿勢による測定値の違いは?】

結論から言うと、「どの姿勢でも測定値に大きな差はなかった」という結果でした。

測定値の主なポイント

  1. 10種類の立ち姿勢で、大きな統計的差はなし
    • インターアピカルディスタンス、冠状面バランスともに、姿勢による大きな違いは確認されませんでした。
  2. 側弯症がある人とない人の間には明確な違い
    • 側弯症のある人は、インターアピカルディスタンスが有意に大きい
    • これは、側弯症の特徴的な側方変位(横方向のズレ)を反映していると考えられます。
  3. 測定結果の再現性が高い
    • どの姿勢で測定しても大きな誤差が生じないため、診断や経過観察の際に統一した姿勢を厳密に決めなくてもよい可能性が示唆されました。

【この研究の意義と今後の展望】

今回の研究結果は、側弯症の検査において、姿勢の影響がほとんどないことを示しています。これは、診断や治療方針を決める際に重要な意味を持ちます。

研究の意義

  • 放射線被曝なしで信頼できる測定が可能
    • 3D超音波は、X線と異なり被曝の心配がなく、成長期の患者にとって安全な選択肢となります。
  • 異なる立ち姿勢でも安定した測定ができる
    • 診察の際、患者の姿勢を厳密に統一する必要がなく、柔軟な検査が可能になります。
  • 新たな側弯症スクリーニングツールとしての可能性
    • インターアピカルディスタンスの測定は、側弯症のスクリーニング(早期発見)の有力な指標になるかもしれません。

今後の課題

  • 研究対象は女性のみであり、男性でのデータも必要
  • 軽度から中等度の側弯症が中心であり、重度の側弯症患者への適用可能性を検討する必要がある
  • 3D超音波の普及と標準化が必要(医療機関での導入促進)

【まとめ】

側彎症学校検診.JPG

本研究では、側弯症の測定において立ち姿勢の影響はほとんどないことが示されました。これは、今後の診断精度向上や、放射線被曝の少ない検査法の普及に貢献する重要な知見です。

特に、3D超音波による側弯症検査は、安全で再現性が高く、今後の標準的な検査方法となる可能性があることがわかりました。

今後は、より多くのデータを集めることで、側弯症診断の精度をさらに向上させる研究が求められます。あなたやあなたの家族が側弯症の診断を受ける際、3D超音波という選択肢があることをぜひ知っておいてください。


引用文献

Pollard J, Fehr B, Ganci A, Parent EC, Lou E. Comparisons of Interapical Distance and Coronal Balance Measurements among Standing Positions in Participants with and without Adolescent Idiopathic Scoliosis Using 3D Ultrasound Imaging. Spine. 2025. DOI:10.1097/BRS.0000000000005284.

 

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