スポーツ復帰を成功させる秘訣！前十字靭帯再建術＋関節外手技の最新知見

【前十字靭帯再建術（ACLR）とは？手術の基本と課題】

膝の前十字靭帯（ACL）は、スポーツや事故で損傷しやすい部位の一つです。この靭帯が切れると、膝の安定性が損なわれ、激しい運動が難しくなります。これを修復するための手術が**前十字靭帯再建術（ACLR）**です。

ACLRは多くの患者に有効ですが、術後も膝が不安定なままの人がいたり、移植した靭帯（移植腱）が再び損傷するケースが報告されています。特に、回旋不安定性（膝が横方向にぐらつく問題）や、再断裂が課題とされています。

そこで近年注目されているのが、「関節外手技（LEAP）」を追加する方法です。これは、ACL再建術に加えて、膝の外側に補強手術を行うことで、より安定した膝を作ることを目的としています。では、本当にLEAPを加えることで、手術の効果は向上するのでしょうか？最新の研究をもとに詳しく解説していきます。

【関節外手技（LEAP）のメリットとデメリット】

◇ メリット：膝の安定性向上と再断裂リスクの低減

最近のシステマティックレビューとメタアナリシスの結果によると、ACLRにLEAPを追加することで、次のような効果が確認されました。

• 回旋不安定性の低減（ぐらつきを防ぐ効果）

• 移植腱の再断裂リスクの低減（再手術のリスクが減る）

実際、メタアナリシスのデータでは、LEAPを加えた患者の方が回旋不安定性のリスクが約1.45倍低く、移植腱の破損リスクも約80%減少することが示されています。

◇ デメリット：短期間の痛みと筋力低下

一方で、LEAPを追加すると術後6か月までは以下のような問題が生じる可能性があります。

• 痛みや関節のこわばり
• 術後の筋力低下（特に大腿四頭筋の筋力低下が報告されている）

このような短期間の影響はあるものの、12か月以降にはほとんどの患者で回復することが確認されています。

◇ 結論：ハイリスク群には有効な選択肢

特に若年層のスポーツ選手や、膝に強い負荷がかかる人には、LEAPを併用することで安定性が向上し、再手術のリスクを減らすことができる可能性があります。ただし、短期間の痛みや筋力低下の影響を考慮し、適応を慎重に判断する必要があります。

【臨床的意義と今後の研究課題】

◇ 長期的な影響は？変形性関節症のリスク

LEAPの長期的な影響については、まだ十分なデータがありません。一部の研究では、「関節の拘束が強くなりすぎると、膝の軟骨がすり減り、変形性関節症のリスクが上がるのでは？」という懸念も指摘されています。

しかし、現時点での研究結果は統一されておらず、「LEAPが変形性関節症を引き起こす」とは断定できません。今後、より長期間の追跡研究が必要です。

◇ ACLR＋LEAPはどんな人に向いている？

今回の研究を踏まえると、LEAPが特に有効と考えられるのは以下のような人たちです。

• 激しいスポーツを行うアスリート（サッカー、バスケットボール、ラグビーなど）
• ACL損傷の再発リスクが高い人（例えば、以前にACLを損傷した経験がある人）
• 膝が不安定になりやすい体質の人（回旋不安定性が強い場合）

一方で、日常生活レベルの動きしかしない人や、術後のリハビリをしっかりできない人には、必ずしもLEAPが必要とは言えません。術後の回復過程も考慮し、医師と相談しながら最適な治療法を選択することが重要です。

【まとめ：ACLR＋LEAPは有望な選択肢だが適応は慎重に】

今回の研究では、ACLRにLEAPを追加することで、膝の安定性が向上し、再断裂のリスクが低減することが示されました。一方で、術後の短期間は痛みや筋力低下が生じるため、すべての患者に適応できるわけではありません。

最適な治療を選択するためには、手術後のリハビリ、長期的な影響、個々の活動レベルを考慮することが重要です。特にスポーツ復帰を目指す若年層にとっては、有力な選択肢となるでしょう。

今後、LEAPの長期的な安全性や最適な術式について、さらなる研究が求められます。膝のケガを予防し、健康な生活を送るために、最新の医学研究に注目していきましょう！

引用論文

Kan A, English T, Penny A, Franc-Smith J, Tudor F, Sattler L.
Does the Addition of a Lateral Extra-articular Procedure to a Primary Anterior Cruciate Ligament Reconstruction Result in Superior Functional and Clinical Outcomes? A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials.
Am J Sports Med. 2025; DOI: 10.1177/03635465241304781.