成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

熊本そけいヘルニア整形外科クリニック

元気になるオルソペディック ブログ

骨粗鬆症性椎体骨折の治療の発展:BKPで複数椎体手術が可能に!

【骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKP手術の進化】

 

OVF症状.JPG

骨粗鬆症は加齢とともに骨がもろくなり、わずかな衝撃でも骨折を引き起こす病気です。その中でも、背骨の骨(椎体)がつぶれてしまう「骨粗鬆症性椎体骨折」は、高齢者に多く見られます。この骨折は、激しい腰痛を引き起こし、脊柱後弯変形や偽関節では生活の質を大きく低下させる原因となります。OVF後弯.JPG

複数椎体骨折を生じていくと生命予後にも影響すると報告されています。

OVF連鎖.jpgOVF生命予後.jpg

これまで、骨粗鬆症性椎体骨折に対して行われるBKP(経皮的椎体形成術)は、1回の手術で1つの椎体しか治療できませんでした。そのため、複数椎体骨折の患者さんは1か所のBKPをして、腰痛が残存する場合は、その後時間をあけて2か所目のBKPを行うしか保険診療ができませんでした。しかし、令和7年1月1日から、保険適用範囲が拡大され、1回の手術で2つ以上の椎体を同時に治療できるようになりました。この新しい治療法について、わかりやすくご紹介します。


【BKP手術とは?:骨折した椎体を内側から支える治療法】

BKPイラスト.JPG

BKP(Balloon Kyphoplasty)は、骨粗鬆症性椎体骨折に対して行われる低侵襲手術の一つです。主な手順は以下の通りです。

  1. 全身麻酔をかけて、骨折椎体の背側に約5mmの切開を行い、専用の針を椎弓根を通して椎体内に挿入します。
  2. 風船(バルーン)の挿入: 腰や背中に小さな穴を開け、骨折した椎体にバルーンを挿入します。
  3. バルーンの膨張: バルーンを膨らませることで、つぶれた椎体を元の形に近づけます。
  4. 骨セメントの注入: バルーンを抜いた後、その空間に特別な医療用セメントを流し込み、骨を内側から固定します。

この方法により、痛みの軽減や姿勢の改善が期待でき、手術後は早期に日常生活に戻ることが可能です。手術時間は約30分で出血も少量のみなので、高齢者で全身予備能力の低下した患者さんにも施行可能です。


【1回で複数椎体の治療が可能に:患者の負担軽減】

令和7年1月から、BKP手術の保険適用範囲が広がり、1回の手術で複数の椎体を治療できるようになりました。これには次のようなメリットがあります。

  1. 身体への負担が軽減: これまで複数の椎体を治療するには、別々の手術が必要でした。しかし、1回の手術で済むため、体力的な負担が軽くなります。
  2. 早期回復が期待できる: 手術後のリハビリや日常生活への復帰が早まり、生活の質を向上させることができます。
  3. 経済的負担の軽減: 複数回の手術にかかる医療費や通院費が抑えられます。

ただし、複数椎体にBKPを行う場合は、医師による慎重な適応判断が必要です。骨の状態や患者さんの全身状態を踏まえた上で、最適な治療方針が決定されます。


【BKP手術を受ける際の注意点】

BKP手術は比較的安全な治療法ですが、複数椎体を治療する場合は、いくつかの注意点があります。

OVF予後不良因子.JPG

  1. 適応の確認: 骨粗鬆症による椎体骨折であり、保存的治療(安静や薬物療法)で十分な効果が得られない場合に適応となります。MRI検査で予後不良因子が報告されており、椎体が圧潰、偽関節を生じ可能性が高い骨折には早期にBKPが行われることが多くなっています。
  2. OVF手術種類.JPG

BKPの適応外の椎体骨折には後方固定術や椎体間固定術、椎体置換などの手術が必要となることがあります。

  1. 続発性骨粗鬆症への慎重な対応: ステロイド治療や腎機能障害などが原因で発症する続発性骨粗鬆症では、骨の質がさらに低下していることがあります。この場合は、手術の安全性と有効性を十分に検討することが求められます。
  2. 術後のケア: 手術後は骨の健康を保つために、骨粗鬆症の治療強化が必要です。テリパラチド/アバロパラチド、ロモソズマブなどの骨形成促進剤やビタミンDの補給、適度な運動、定期的な骨密度検査が重要です。重症骨粗鬆症治療9.JPGBKP後骨粗鬆症治療.JPG

【まとめ:より多くの患者に希望を】

腰痛改善高齢者.jpg

BKP手術の適応拡大により、骨粗鬆症性椎体骨折で苦しむ多くの患者さんが、より短期間で効果的な治療を受けられるようになりました。特に、複数の椎体に骨折が見られる場合でも、1回の手術で痛みを和らげ、生活の質を向上させることが可能です。

医師データ解析1.JPG

骨粗鬆症は早期発見と予防が重要ですが、万が一、椎体骨折が発生した場合でも、最新の医療技術によって安心して治療を受けられる環境が整っています。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、適切な治療について医師と相談しましょう。


 

免責事項

  • 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
  • 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
  • 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
  • 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
  • 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。

当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。