高齢者の股関節手術：出血リスクを減らすためにできること

【股関節手術の背景と出血リスク】

股関節手術は、加齢や怪我による変形性股関節症や骨折を治療するために行われる重要な医療行為です。日本では年間20万件以上が実施され、多くは高齢者が対象となっています。

しかし、手術中や術後に起こる「出血」は、時に命に関わる重大な合併症を引き起こします。特に、体重が軽い方や貧血がある方は、少量の出血でも大きな影響を受けやすいのが特徴です。

【術前準備の重要性】

股関節手術の出血リスクを抑えるためには、術前の準備が不可欠です。

• 患者の状態を把握

  手術を受ける方の体重や貧血の有無、抗血栓薬の使用歴を確認します。例えば、抗血栓薬を服用している場合、休薬が必要かどうかを判断します。

• 術式の選定

  再手術や両側同時手術は、出血リスクが高くなるため、必要に応じて手術計画を調整します。

• 輸血の準備

  
  

  術中に予想される出血量を基に、必要な輸血用の血液製剤を事前に確保します。

【術中・術後の注意点】

手術中は、回転器具やドリルによる血管損傷が隠れたリスクとなります。術野が狭く、目視で確認しにくいため、経験豊富な医師の技術が求められます。

術後は、血圧低下や頻脈などの症状に注意が必要です。特に以下の兆候があれば、出血性ショックを疑い早急な対応が求められます。

• 血圧が正常値を下回る
• 腰痛や患部の腫れ
• 尿量の減少や頻呼吸

【出血リスクを減らすために】

出血リスクを減らすには、手術を行う医療機関の体制やスタッフのスキルも重要です。CTや超音波検査を適宜利用し、血管損傷の早期発見に努めることが推奨されます。

また、患者ご自身も術前の健康管理を意識することで、出血リスクを低減できます。体調の悪い日は無理に手術を受けず、医師に相談することが大切です。

【まとめ】

股関節手術は、多くの高齢者にとって生活の質を向上させる手段です。しかし、出血リスクを軽視することはできません。術前準備を十分に行い、術中・術後の兆候に注意を払うことで、安全な手術が可能となります。

引用文献

• 日本医療安全調査機構「股関節手術を契機とした出血に係る死亡事例の分析」(2023年9月発行)​