成尾整形外科病院

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子どものスポーツ障害:肘の離断性骨軟骨炎への効果的なアプローチ

 

子どものスポーツ障害:肘の離断性骨軟骨炎への効果的なアプローチ

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【肘の離断性骨軟骨炎とは?その原因と症状を解説】

肘の離断性骨軟骨炎(OCD)は、主に成長期の子どもやスポーツをする若い世代に多く見られる関節の障害です。この病気では、肘の骨と軟骨が弱くなり、剥がれたり壊れたりすることがあります。

特に、野球や体操のような肘に繰り返し負担がかかるスポーツをする人に多く見られます。研究では、患者の約39%が体操選手、28.5%が野球またはソフトボール選手であることが分かっています。

主な症状には、肘の痛みや動きの制限、関節の引っかかり感などがあります。これらの症状が現れると、スポーツや日常生活にも支障をきたすことがあります。


【離断性骨軟骨炎の治療法:手術と保存療法の選択】

治療法は、病変部の状態によって異なります。安定している軽度のケースでは、休息やリハビリを中心とした保存療法が推奨されます。しかし、症状が悪化した場合や病変が不安定な場合には、手術が必要になります。

Nelson分類の各段階

Grade 1(初期段階)

  • 特徴: 軟骨表面に変化がなく、X線で骨の硬化が見られるのみ。
  • 安定性: 病変部は安定しており、軟骨や骨片の剥離はない。
  • 治療方針:
    • 保存療法(スポーツ活動の制限、リハビリ)を推奨。
    • 定期的な画像検査で進行をモニタリング。

Grade 2(中等度進行)

  • 特徴: 軟骨下に放射線透過性の病変が見られるが、軟骨表面はまだ滑らか。
  • 安定性: 病変部はほぼ安定しているが、一部の骨や軟骨に負担がかかり始めている可能性がある。
  • 治療方針:
    • 保存療法を優先するが、場合によっては手術を検討。
    • 手術選択肢として、自家骨軟骨移植術(OG)が考慮されることがある。

Grade 3(進行した不安定段階)

  • 特徴: 軟骨表面が不安定で、病変部が剥がれかかっている。または骨片が部分的に浮いている。
  • 安定性: 不安定な病変が存在し、進行すれば関節機能に大きな影響を及ぼす。
  • 治療方針:
    • 手術が必要。具体的には以下のような手技が選択される:
      1. ドリリング/マイクロフラクチャー
      2. 内固定術
      3. 自家骨軟骨移植術

Grade 4(進行末期段階)

  • 特徴: 骨片が完全に剥がれて遊離体(関節内遊離体)となる。
  • 安定性: 完全に不安定で、関節機能に重大な影響を与える。
  • 治療方針:
    • 手術が必須。
    • 多くの場合、自家骨軟骨移植術(OG)や、場合によっては人工関節置換術を検討。
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手術には以下の3つの主な方法があります。

  1. ドリリング/マイクロフラクチャー手術 軟骨下の骨に小さな穴を開けて、再生を促進する方法です。
  2. 内固定術 剥がれた骨や軟骨を固定して元の位置に戻す手術です。
  3. 自家骨軟骨移植術(OG) 健康な軟骨と骨を別の部位から移植する方法です。特に進行した病変に効果的とされています。

研究によると、OGを受けた患者は、他の手術法と比較して再手術率が低く、運動機能の改善も顕著でした。また、Nelson分類で中等度の病変(Grade 2)の患者でも、OGは他の手術より良好な結果を示しました。


【術後の回復とスポーツ復帰の可能性】

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手術後の経過は良好で、患者の多くが痛みの軽減、肘の可動域の改善、機械的な症状の解消を報告しています。さらに、約76%の患者が主に行っていたスポーツに復帰できています。

術後の回復期間中は、適切なリハビリが重要です。これは筋力の回復と関節の安定性を促進し、再発を防ぐためです。また、専門医と密に連携しながら治療計画を立てることで、最適な結果が期待できます。


【まとめ】

肘の離断性骨軟骨炎は、特にスポーツをする子どもや若者に多く見られる疾患ですが、適切な治療を受けることで大きな改善が期待できます。

今回の研究から、病変の状態に応じた治療アプローチが重要であり、自家骨軟骨移植術(OG)が優れた選択肢であることが示されました。特に再手術率の低さや機能回復の速さは注目に値します。

もし肘に痛みや異常を感じた場合は、早めに整形外科を受診してください。専門医が症状に応じた最適な治療法を提案します。

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引用論文 Zheng, E. T., Osada, K., [...], & Bae, D. S. (2024). Treatment and Early Outcomes of Capitellar Osteochondritis Dissecans. The American Journal of Sports Medicine, 52(14). https://doi.org/10.1177/03635465241289939

 

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