成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

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脚の痛みの本当の原因とは?神経痛と関節痛を見分ける方法

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【腰痛や脚の痛みの原因:どちらが問題?】

腰痛や脚の痛みは、多くの人が経験する一般的な症状です。しかし、その原因が腰からくる神経根症(坐骨神経痛)なのか、それとも関節病変による関節痛なのかを判断するのは簡単ではありません。

神経根症とは、腰椎の椎間板が飛び出して神経を圧迫することで生じる痛みです。一方で、関節病変は股関節や膝関節の変形や損傷による痛みで、股関節や膝関節の問題は、動かしたときの痛みが主な症状となります。この2つの症状は似ているため、正確な診断が必要です。

例えば、坐骨神経痛では脚全体に痛みが広がることがありますが、股関節の問題では太ももの前側や鼠径部の痛みが主になります。


【診断のポイント:身体検査と画像診断】

医師は、症状の原因を特定するために身体検査を行います。具体的には、歩き方や姿勢の観察、脚の可動域のチェック、痛みの出る動作を確認します。

さらに、必要に応じてX線やMRIなどの画像診断が行われます。例えば、腰椎のMRIでは神経根が圧迫されているかどうかを確認し、関節のX線では骨の変形や関節裂隙の狭小化を調べます。ただし、無症候性の椎間板ヘルニアや狭窄、無症候性の関節裂隙の狭小化もあるので診断には注意が必要です。

 

画像診断だけでなく、診断的注射も役立つ場合があります。これは、関節内注射や神経ブロック注射で効果の有無、疼痛の再現性を確認して、痛みの原因を特定する手法です。

症例

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70歳代の男性で、膝痛があり病院を受診したら変形性膝関節症の診断とされました。治療として人工膝関節置換術(TKA)を施行されましたが、術後全く膝痛が改善しませんでした。

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痛みの改善が全くないため受診されました。KempテストやSLRTテストで膝痛が再現され、MRI検査では椎間孔狭窄を認めました。症状の改善の確認のために、L4神経根ブロックを行うと症状の改善を得ました。この患者さんの膝の痛みは変形性膝関節症ではなく腰椎椎間孔狭窄によるL4神経根障害での膝痛でした。

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膝内側の痛みはL4神経根障害でも生じえます。レントゲン画像での変形性関節症、無症候性の変形性膝関節症があるので画像所見のみでは確定診断はできません。理学所見、画像所見を総合的に判断して診断する必要があります。

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【治療方法と注意点】

原因が特定されたら、次は治療です。軽度の症状であれば、薬物療法や理学療法が選ばれます。一方、重度のケースでは、手術が必要になることもあります。

例えば、坐骨神経痛の原因が椎間板ヘルニアの場合、椎間板を取り除く手術が行われることがあります。顕微鏡や内視鏡など体の負担が少ない手術方法が普及しています。一方で、股関節や膝関節の変形が原因の場合は、関節温存手術として関節矯正術(骨切り術)や人工関節置換術が選択肢となることがあります。

治療後の注意点として、適切なリハビリテーションが重要です。また、再発を防ぐために、正しい姿勢や日常生活での工夫も欠かせません。

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引用論文
DeFroda, SF, Daniels, AH, Deren, ME. Differentiating Radiculopathy from Lower Extremity Arthropathy. The American Journal of Medicine, 2016.

 

 

 

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