成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

熊本そけいヘルニア整形外科クリニック

元気になるオルソペディック ブログ

腰痛を科学する:成人脊柱変形のメカニズムと治療法

「腰痛を科学する:成人脊柱変形のメカニズムと治療法」

腰痛術前後.JPG


【腰痛の原因と成人脊柱変形とは?】

日本では、腰痛は多くの方が抱える身近な問題です。厚生労働省の調査によると、男性では最も多い訴えとして、女性でも肩こりに次いで2番目に多くなっています。特に高齢者の方々では、「腰まがり」と呼ばれる姿勢の変化が原因となり、日常生活に支障をきたすことがあります。

高齢者腰曲がり.JPG

この腰まがりの原因の一つが「成人脊柱変形」です。これは、加齢による椎間板や骨の変化が進むことで、背骨が自然なカーブを失ってしまう状態を指します。その結果、姿勢が崩れ、腰や足に痛みが生じるだけでなく、立つことや歩くこと自体が難しくなるケースもあります。

【脊柱と骨盤の関係:腰椎前弯とPelvic Incidence】

schwab分類.JPG

腰痛や脊柱の変形を語る上で重要なキーワードが「腰椎前弯」と「Pelvic Incidence」です。

腰椎前弯とは、腰の部分の背骨が前に反っているカーブのことです。これが減少すると、姿勢が崩れてしまいます。一方、Pelvic Incidenceは、骨盤の形状を表す指標で、個人ごとに異なります。この数値が腰椎前弯の適切な角度に密接に関係していることが、近年の研究で明らかになっています。

理想的な腰椎前弯の角度は、Pelvic Incidenceに基づいて計算することができ、これにより、より正確な手術計画が立てられるようになりました。

腰痛後ろ姿3.JPG

【最新の治療法と研究の進展】

過去には、成人脊柱変形の手術は非常に侵襲的でリスクの高いものでした。しかし近年、低侵襲手術の技術が進歩し、より安全で効果的な治療が可能となっています。

また、術後の成功率を高めるために、個々の患者さんの骨盤形態に合わせた「PI-LL」値の調整が行われています。このPI-LLとは、Pelvic Incidenceと腰椎前弯角の差を指します。研究により、理想的なPI-LL値は患者さんごとに異なることが分かってきました。これにより、個別化された治療計画が進められています。

【症例】

後側弯術前.JPG術前全脊椎.JPG

70歳代の患者さんです。腰椎椎体骨折を受傷後腰痛と立位保持困難が生じ日常生活に支障をきたしておりました。

レントゲンでは骨折部の不安定性だけでなく、腰曲がり、側弯の全体の背骨のアライメントが異常を呈しております。

後側弯術後.JPG項側彎術後全脊椎.JPG

低侵襲手術として経皮的椎体形成術と低侵襲側方椎体間固定術(LIF)と経皮的椎弓根スクリューで骨折部の整復、固定、後側弯の矯正固定術を行いアライメントの改善を行いました。リハビリを行い現在立位保持可能となっております

いきいき女性.jpg


【まとめ】

腰痛や姿勢の問題でお悩みの方にとって、今回の研究は非常に希望を与える内容です。脊柱と骨盤の関係を理解し、最新の治療法を活用することで、より良い生活の質を取り戻すことが可能です。

健康寿命を延ばし、毎日の生活を快適にするために、正しい知識を持ち、適切な診断や治療を受けることが大切です。ぜひ、専門医に相談し、自分に合った治療方法を見つけてください。

参考論文

稲見聡、種市洋.高齢者の脊椎疾患治療のトピックス─手術計画の進歩─.獨協医科大学 整形外科学Dokkyo Journal of Medical Sciences.2017年;44(3):309-312.

Schwab FJ, Blondel B, Bess S, et al. Radiographical Spinopelvic Parameters and Disability in the Setting of Adult Spinal Deformity: A Prospective Multicenter Analysis. Spine (Phila Pa 1976). 2013;38(13):E803-E812. doi:10.1097/BRS.0b013e318292b7b9.

 

免責事項

  • 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
  • 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
  • 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
  • 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
  • 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。

当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。