成尾整形外科病院

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低侵襲脊椎手術PETLIF:短期間で社会復帰を可能にする手術方法

低侵襲脊椎手術PETLIF:短期間で社会復帰を可能にする手術方法


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【PETLIFとは?その基本を解説】

PETLIF(経皮的内視鏡下椎間孔椎体間固定術)は、近年注目を集める低侵襲脊椎手術の一つです。この手術法は、腰椎の変性すべり症や脊柱管狭窄症などの治療に用いられ、特に再手術が必要な症例にも効果を発揮しています。長濱先生が開発された術式であり、全国に広がり、現在注目されている低侵襲脊椎手術の1つです。

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PETLIFでは、カンビン三角という脊椎の特定の部位を経由して内視鏡を使い、椎間板の高さを回復させると同時に、椎間を固定するためのケージを挿入します。この手法により、直接的な神経の操作を避けることで合併症のリスクを軽減し、患者の早期回復を目指します。

手術の主な特徴には以下があります:

  • 低侵襲性:筋肉や組織へのダメージを最小限に抑える。
  • 短い手術時間:平均で約2時間程度。
  • 早期回復:平均的な入院期間は約1,2週間。

【PETLIFが選ばれる理由:従来の手術法との比較】

従来の手術法であるPLIF(後方腰椎椎体間固定術)やTLIF(経椎間孔椎体間固定術)と比較して、PETLIFには以下のような利点があります。

  1. 神経損傷のリスク軽減 PLIFやTLIFでは、神経を直接操作するため、損傷のリスクが避けられません。一方、PETLIFは間接的に神経を減圧する手法を採用しているため、安全性が向上しています。
  2. 出血量の少なさ PETLIFでは手術中の平均出血量が30~65mLと報告されており、従来の手術よりも大幅に少ないです。
  3. 早期社会復帰 手術侵襲が少ないため術後の創部痛も従来法より少なく、入院期間の短縮、早期社会復帰を可能にします。
  4. 高い骨癒合率 PETLIFは、術後2年で骨癒合率が約95%と非常に高いことが確認されています。従来法と遜色ない骨癒合率です。
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さらに、手術後の痛みや障害を評価するスコア(JOAスコアやRDQスコア)においても、顕著な改善が見られています。


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【症例】

70歳代の女性 開業医

主訴は腰痛と右下肢痛で、保存療法で効果が見られず紹介されました。開業医なので短期間のみしか入院できない事情がありました。

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手術は1時間48分、出血量はわずか35mLでした。術後3週間で日常生活に完全復帰し、腰痛や下肢痛は改善し術後3週目には診療に復帰されました。

傷も経皮的椎弓根スクリューの2cmが4つと内視鏡の創部1cmと小さな皮切です。

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患者の多くは、術後の痛みの軽減と早期回復に満足しており、再手術例でも良好な結果が得られています。

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【まとめ:PETLIFの可能性と今後の展望】

PETLIFは、低侵襲性でありながら、高い安全性と有効性を兼ね備えた脊椎手術です。患者の生活の質を向上させるだけでなく、医療従事者にとっても負担が少ない手術法として注目されています。

特に再手術が必要な症例や高齢者にも適応可能であり、早期回復を目指す現代の医療ニーズに合致しています。今後さらに症例数を増やし、長期的な臨床成績を評価することで、PETLIFの普及とさらなる技術向上が期待されます。

腰痛や足の痛みに悩んでいる場合は、一度整形外科専門医に相談してみてはいかがでしょうか?

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熊本大学付属病院で開催された、第105回熊本整形外科医会でPETLIFについて発表してきました。

  1. Nagahama K, Ito M, Abe Y, et al. "Early Clinical Results of Percutaneous Endoscopic Transforaminal Lumbar Interbody Fusion: A New Modified Technique for Treating Degenerative Lumbar Spondylolisthesis." Spine Surg Relat Res, 2019; 3(4): 327-334.
  2. 吉兼浩一, 菊池克彦, 德永真一. "腰椎再手術症例に対するPETLIFによるindirect decompressionの短期成績と有用性についての検討." Journal of Spine Research, 2024; 15(8): 1100-1106.
  3. 山田 勝久ら「PETLIFシステムを用いた経椎間孔アプローチ全内視鏡下椎体間固定術(TF-LIF)の術後2年成績 -MIS-TLIF100例との比較検討-」JASMISS024

 

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