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頸椎化膿性脊椎炎の治療法とは?早期発見と手術の重要性を徹底解説
- 「頸椎化膿性脊椎炎の治療法とは?早期発見と手術の重要性を徹底解説」
頸椎化膿性脊椎炎の治療とは?早期発見と手術の重要性
【頸椎化膿性脊椎炎とはどんな病気?】
頸椎化膿性脊椎炎は、頸椎(首の骨)に細菌感染が発生し、炎症や膿が広がる病気です。この病気は、背骨全体の感染症の中でも特に稀で、約6%しか発生しません。しかし、発症すると深刻な合併症を引き起こす可能性があり、早急な対応が求められます。
症状には、激しい首の痛みや発熱、場合によっては手足のしびれや麻痺が含まれます。感染が進行すると、神経に圧力がかかり、歩行や手の動きが難しくなることもあります。そのため、この病気を見逃さないためには、早期診断が極めて重要です。
しかし、この疾患は早期には症状が非特異的で診断が難しいことが多く、進行すると神経症状や重篤な合併症を引き起こす可能性があります。以下に、診断のポイントを解説します。
1. 症状と病歴の評価
- 主な症状
- 頸部痛(最も一般的な症状)
- 発熱(場合によっては見られないこともある)
- 倦怠感や体重減少などの全身症状
- 病歴
- 最近の感染症(尿路感染症、皮膚感染症、肺炎など)
- 血行感染のリスク因子(糖尿病、免疫不全、薬物注射歴)
- 外科手術や侵襲的手技の既往
2. 身体所見
- 圧痛
- 頸椎の局所的な圧痛
- 可動域制限
- 頸椎の動きに制限が出る場合がある
- 神経学的症状
- 圧迫による四肢のしびれ、筋力低下、あるいは麻痺(脊髄圧迫症状)
3. 血液検査
- 炎症マーカー
- CRP:高値
- ESR(赤血球沈降速度):高値
- 白血球数
- 増加する場合が多いが、正常範囲の場合もある
- 血液培養
- 血行性の感染が疑われる場合、陽性になることがある
- 心エコー検査
- 感染性心内膜炎が10%合併すると報告されおり感染原発巣の精査で必要。
4. 画像診断
- X線
- 初期には異常が見られないことが多いが、進行すると椎間板狭小化や骨破壊が認められる。膿瘍形成では後咽頭腔の拡大が認められることがあります。
- MRI(最も有用な検査)
- 椎間板と隣接する椎体の造影効果の増加
- 骨髄炎や軟部組織の炎症所見
- 脊髄圧迫や膿瘍形成を評価
- CT
- 骨破壊の評価に有用
【手術が必要な場合とその内容】
頸椎化膿性脊椎炎の治療では、抗生物質の投与が一般的ですが、症状が重い場合や合併症がある場合には手術が必要です。手術の目的は以下の通りです:
- 感染部位の除去(デブリードメント)
病巣部分を取り除き、感染を抑えます。 - 神経の圧迫を解消
膿や腫れによる神経の圧迫を取り除き、麻痺の進行を防ぎます。 - 背骨の安定化
感染による骨の破壊を補うため、人工的な材料や患者自身の骨を使って背骨を再建します。
手術では、感染で壊死した骨を取り除き、金属製の固定具や骨移植によって強度を保つ治療が行われます。頸椎の前方手術や前方後方同時手術などさまざまな術式が報告されています。
【治療の成功率と合併症のリスク】
頸椎化膿性脊椎炎の手術治療の成功率は高く、適切な抗生物質治療と併用することで、多くの患者が症状の改善を実感しています。特に、神経障害を認める患者では早期の手術を行わないと永続的な障害が残る危険性があります。
一方で、リスクも存在します。手術中または術後に以下のような合併症が起こる可能性があります:
- 感染の再発
抗生物質の投与およびデブリードマンが不十分だと、再度感染が広がることがあります。 - 金属固定具の破損
感染の影響で固定具が緩むことがあり、再手術が必要になる場合があります。 - 食道の損傷
頸椎前方でのインプラント手術では近接する組織への影響で、食道損傷の可能性が稀にありますが、早急な修復手術で対応可能です。
これらのリスクを最小限にするためには、術後のフォローアップが重要です。特に、術後も抗生物質の継続使用や定期的な画像検査が必要です。
【まとめ:早期治療が鍵】
頸椎化膿性脊椎炎は、早期発見と適切な治療が患者のQOLを守るポイントです。特に、MRIなどの高度な画像診断が診断の正確性を高め、全身への感染拡大を防ぎます。
専門的な治療と継続的なケアを受けることで、多くの患者が回復しています。もし首の痛みや不調を感じたら、専門医に相談することをお勧めします。
【参考文献】
Shousha, M., & Boehm, H. (2012). Surgical treatment of cervical spondylodiscitis: A review of 30 consecutive patients. Spine, 37(1), E30-E36. https://doi.org/10.1097/BRS.0b013e31821bfdb2
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