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胸腰椎椎体骨折:前方再建術の重要性と最新治療法の解説
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「胸腰椎椎体骨折:前方再建術の重要性と最新治療法の解説」
胸腰椎椎体骨折の治療:なぜ前方再建術が重要なのか?
先日研究会で、胸腰椎の破裂骨折に対して、後方からの経皮的椎弓根スクリューで矯正固定術を行ったが、抜釘後には受傷時の後弯変形に元通りになったとの発表を聴きました。後方固定だけでは支持できず、前方再建術が必要だったと感じました。
胸腰椎椎体骨折は、交通事故や転倒などの強い外力が原因で発生する脊椎の損傷です。この骨折は、適切な治療を行わないと脊椎の不安定性や痛み、さらには神経障害を引き起こす可能性があります。この記事では、胸腰椎骨折の治療方法の中でも特に注目される「前方再建術」の重要性について分かりやすく解説します。
【胸腰椎骨折とは?治療の必要性】
胸腰椎骨折は、胸椎と腰椎の接続部で発生しやすい骨折です。この部位は体重や運動時の衝撃を吸収する役割を持つため、損傷すると脊椎全体の安定性に影響を及ぼします。骨折の主なタイプには、圧迫骨折や破裂骨折などがあります。
特に破裂骨折は、骨の破片が神経に影響を与えるリスクがあるため、早急かつ適切な治療が求められます。治療には保存療法(コルセットや安静)と手術療法があり、損傷の程度や患者の状態に応じて選択されます。
【前方再建術とは?その役割と利点】
前方再建術は、骨折部位の前方から手術を行い、損傷した骨の構造を修復し、脊椎の安定性を回復する治療法です。特に以下のような場面で有効とされています。
- 脊椎の不安定性が強い場合
骨折が高度で、後方からの固定だけでは安定性が不十分な場合、前方再建術を併用することで脊椎全体を強固に固定できます。 - 後方固定術の失敗を防ぐため
骨折が高度な場合、後方固定術のみでは再び崩壊するリスクがあります。このような場合、前方再建術を行うことでリスクを大幅に減らせます。 - 神経の圧迫を取り除く場合
骨片が脊髄や神経を圧迫している場合、前方アプローチで圧迫を直接取り除くことが可能です。
これらの利点により、前方再建術は単なる補助的な治療ではなく、患者の生活の質を向上させる重要な手法として位置づけられています。
【前方再建術が推奨されるケース:研究結果の裏付け】
研究によれば、特に荷重分担分類(Load Sharing Classification; LSC)が高得点の場合、前方再建術の必要性が指摘されています。この分類は、骨折の破壊程度を評価する基準で、点数が高いほど再建術を必要とする可能性が高まります。冠状面、矢状面、整復のそれぞれを1~3点に分類し合計得点で評価します。
- LSCが7点以上のケース
骨の破壊が大きく、後方固定術のみでは固定力が不十分と判断される場合、前方再建術が効果的です。 - 手術後の再発リスク軽減
後方固定術のみでは、時間の経過とともに骨折部位が再び崩れるリスクがあることが報告されています。前方再建術を併用することで、このようなリスクを大幅に低下させることができます。
また、最近の研究では、使用する材料や手術技術の進歩により、従来以上に高い成功率が得られていることも示されています。特にチタン製のインプラントや高度な固定技術が、術後の安定性を大幅に向上させています。
【代表症例】
80歳代の女性です。転倒して第12胸椎の破裂骨折を受傷。近医で保存療法を施行されましたが、徐々に下肢の脱力、歩行困難となって当院へ紹介となりました。レントゲンでは第12胸椎の椎体骨折を認めます。CTでは第12胸椎の破裂骨折を認め、脊柱管に骨片が突出し、MRIで脊髄の圧迫を呈しておりました。
側方からの低侵襲椎体置換術および後方からの経皮的椎弓根スクリューを行い、神経の圧迫の解除、整復固定を行いました。術後下肢の麻痺も改善しました。
【MIST】現在では低侵襲脊椎固定術が広く普及しており、高齢者でも低侵襲に前方の椎体置換術が行えるようになってきております。高度の技術が必要のため脊椎外科専門医しか行うことができない手術です。
【まとめ】
胸腰椎骨折の治療では、単に骨折を固定するだけでなく、後弯変形を生じさせずにアライメントを維持し将来的な安定性を確保することが重要です。前方再建術は、特に高度な骨折や不安定性が強いケースで効果を発揮する治療法であり、患者の生活の質を大きく向上させます。
骨折の治療方針を決める際は、専門医と十分に相談し、自分に最適な治療を選択することが大切です。今後も、技術の進歩と研究の深化によって、さらに効果的な治療法が開発されることが期待されています。
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