成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

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AIでの胸腰椎椎体骨折のX線診断精度

AIでの胸腰椎椎体骨折のX線診断精度について

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高齢化社会に突入し、骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨折が年々増加しております。とくに骨粗鬆症性椎体骨折の増加は著明で、外来で最も良くみかける骨折です。椎体骨折の早期診断はその後のADLの改善、骨粗鬆症の治療介入などとても重要です。

骨粗鬆症性椎体骨折の診断には通常X線検査がまず行われますが、新鮮骨折の診断には60%程度と必ずしも診断精度はたかくありません。X線ではわからないほどの軽微な骨折や以前に骨折したことのある既存椎体骨折が今回の骨折か診断することが困難なことが多いからです。

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座位と臥位でのX線撮影をおこなうと90%程度新鮮椎体骨折を診断できると報告されており、実臨床では機能写は有益な方法です。

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もちろん、MRI検査をすぐに行うことができれば、診断は99%とほぼ間違いありません。しかしMRIを緊急で撮影できる施設は日本でも限られており、どこの施設でもすぐにできる検査ではありませんし、コストもかなりかかります。

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AIでの鑑別.JPGそこで今回の論文はAIに新鮮椎体骨折のX線写真を3つの異なるdeep leraningをさせて、脊椎外科医との診断精度を比較する研究です。3つのモデルの精度はそれぞれ83.0%、82.4%、82.2%で、AUC値は0.861、0.852、0.865でした。対照セットでは、3つのモデルの精度はそれぞれ78.1%、78.1%、80.7%で、すべてのモデルが脊椎外科医よりも高い診断精度を示すという驚くべき結果でした。

今後はこのようなAIでの椎体骨折の診断が日常臨床に導入されることが予想されます。

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MRI検査では椎体骨折の診断だけではなく、予後不良因子などの報告をされております。診断だけではなく、治療方針、保存療法がよいのか?手術療法がよいのか?手術ならBKP、後方固定術、椎体置換術などの術式から最適な手術術式を提示してくれる未来もそう遠くないのでないかと思ってしまいます。

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腰椎椎間板ヘルニア、や腰部脊柱管狭窄症などの変性疾患は画像所見のみでは診断できないと1990年代に報告されており、これまでは常識でした。研修医や若い整形外科には画像診断だけではなく、病歴、臨床所見、理学所見など総合的に診断することが必要と教育してきいましたが・・。今後はAIのみで診断できる日が来るのでしょうか?

まだまだ未知なことも多いAIの世界ですので、病歴、臨床所見はまだまだ大切だと思います。

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