成尾整形外科病院

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骨粗鬆症性椎体骨折と腰部脊柱管狭窄症の合併

 

骨粗鬆症性椎体骨折と腰部脊柱管狭窄症の合併

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骨粗鬆症性椎体骨折(OVF:Osteoprotic Vertebral Fracture)は日常診療でよく見かける、高齢者の脆弱性骨折です。発生頻度としては胸腰椎移行部(第11胸椎から第2腰椎)が①矢状面のアライメントで後弯から前弯へと変化する変曲点,②肋骨が胸郭に付着してない③椎体前方への荷重が80%ほどと椎体への負荷が高いなどの理由から発生頻度が高い場所です。荷重が多くかかる場所ですから、容易に椎体が圧潰、偽関節のリスクが高い、後弯変形を呈して腰痛やADL低下を招きます。

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経皮的椎体形成術(BKP)では低侵襲に椎体高を整復し骨折部を安定化させる手術ですので、高齢者のOVFには有効な治療法です。

胸腰椎移行部と比較して頻度は少ないですが下位腰椎(L3,4,5)の骨折も時折みかけます。下位腰椎のOVFの問題としては脊柱管狭窄症を伴うことが多いことです。腰部脊柱管狭窄症は加齢に伴う変性変化ですので、多かれ少なかれ脊柱管狭窄を伴います。腰部脊柱管狭窄症の部位に椎体骨折が合併すると椎体高の低下、黄色靭帯のbuckling、骨折に伴う不安定性で容易に神経症状を呈します。

治療となると椎体骨折と腰部脊柱管狭窄症の両方に対応する必要がでてきますので、固定術が必須となります。椎体高の回復と椎間不安定性の安定化には椎体間固定術が必須の手技となります。通常の後方椎体間固定術(PLIF/TLIF)では後方から神経をよけて椎体間にケージを設置しますが、大きなケージが設置できないので骨折椎体の終板では安定化せず、ケージの沈下で安定化することが困難です。

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そのため側方からの椎体間固定術(LIF;Lateral Interbody Fusion)を用いて椎間の安定化させ、椎間板高を回復させる手技が有用です。現在はXLIF/OLIFといった2種類のLIFが本邦で使用可能です。ケージを設置する位置も終板の中央は脆弱でEdgeが最も硬いため沈下するリスクも低く強固な固定が可能です。

後方からの固定は経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を用いることで約2cm程度の傷からスクリューを挿入できますので、筋肉などの軟部組織損傷、出血量の軽減をできます。高齢者にも前方後方同時固定術でも低侵襲な手術が可能です。

症例

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症例は80歳代の高齢者です。転倒で椎体骨折を生じ、整形外科で保存療法をされておりましたが、腰痛は改善せず、下肢痛も出現したため当院を受診されました。

Xp、CTではL4椎体骨折を認め、L3/4椎間にはvacuum(椎間板にairが入っている)現象を呈し、椎間不安定性を呈しておりました。

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MRI検査ではL3椎体骨折が新規の椎体骨折でした。L3/4で脊柱管狭窄と左の椎間孔狭窄を呈しております。手術は前方はL3/4XLIFで再建し後方からはPPSでの低侵襲前方後方同時固定術を施行しました。術後は腰痛、下肢痛とも改善し、しっかりリハビリを行って。自宅へ退院され、骨折前の生活に戻られました。

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術後はもちろん骨粗鬆症に対する治療が必要です。脊柱再建術を要する手術を行った後はガイドラインでは骨形成薬(テリパラチ/アバラパラチド)が推奨さておりますので、骨形成薬で骨粗鬆症の治療を行っております。

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MISTと言われる低侵襲脊椎手術の進歩は著しく、80歳以上の高齢者に対してもさまざまな手技で治療可能となっております。

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骨粗鬆症性椎体骨折、腰痛、下肢痛などでお困りの際は整形外科専門医を受診することをお勧めします。

骨粗鬆症の予防のためには栄養や適度の日光浴、運動などが日ごろから重要です。先日、近くにできたウナギ屋さんでうな重を食べました。うなぎはビタミンが豊富です。とくにビタミンDは類骨を正常な骨に石灰化するために必要なビタミンです。日本人は特にビタミンD欠乏が多いといわれてますので、日ごろからビタミンDの豊富な食事をとるよう心がけましょう。

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