成尾整形外科病院

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脱臼しやすい肩関節!

脱臼しやすい肩関節!

 野球の肩脱臼.JPG

スポーツでの怪我はつきものです。ねんざや骨折、脱臼などの外傷があります。脱臼でもっとも多いのは肩関節脱臼になります。

肩レントゲン画像.JPG

肩関節が脱臼しやすい理由は、関節構造と運動範囲にあります。肩関節(肩甲上腕関節)は、関節窩という浅い受け皿に上腕骨頭がはまり込む形で構成されており、球関節として非常に広い運動範囲を持っています。この広い可動性が関節の安定性を犠牲にしており、肩の前方や上方に強い力が加わると脱臼が生じやすくなります。また、肩の靭帯や関節包も比較的柔らかく、安定性を完全には保てないため、脱臼のリスクが高まります。

肩関節脱臼のほとんどが、前方脱臼で外転、外旋位にて上腕骨頭が前方に脱臼してしまいます。肩関節脱臼はすぐに整復する必要がありますが、脱臼整復には様々な方法があり、現在は軟部組織にもやさしい整復方法が行われることが多いです。

肩関節は脱臼しやすいだけでなく,一度脱臼を起こすと再発しやすいという特徴があります.とくに若年者であるほど再脱臼率が高く50%にも上るといわれており、再脱臼させないことがその後の治療として重要となります。以前は三角巾などでの内旋位固定が主流でしたが、若年者での再脱臼が50%と再脱臼率が高いことが問題でした。

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「Immobilization in External Rotation After Shoulder Dislocation Reduces the Risk of Recurrence: A Randomized Controlled Trial」JBJS

そこで、東北大学の井樋栄二教授は外旋位にすることで損傷された前方関節唇(Bankart損傷)が密着することから、肩関節脱臼の外旋位固定の論文を発表されました。

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外旋位固定法は従来の内旋位固定と比較して、肩の脱臼後の再発リスクを減らすことを報告しております。外旋位固定は肩関節の再脱臼を減らせることを長期成績でも報告されております。ヒポクラテス時代から2000年間行われていた内旋位固定から脱臼を減らせる外旋位固定は日本が誇るすばらしい知見です。

外旋位固定は固定肢位を保持するのが、大変ですが、現在では外旋位固定の専用の装具も販売されており、以前よりは外旋位固定を保持しやすくなっております。

アルケア.JPG

 

アルケア社 外旋位固定装具

httpswww.alcare.co.jpmedicalproductorthopedicsupportershouldershoulderbrace-er.html

再脱臼しないために外旋位固定を行い、リハビリでinner muscleなど肩関節周囲の筋力を鍛えて再脱臼を予防する必要もあります。

それでも、再脱臼を繰り返す場合には手術を要します。現在では内視鏡でのBankart修復術など低侵襲な手術治療も行われおります。

 肩関節脱臼を生じた場合は整形外科専門医を受診し、治療を受けられることをお勧めします。

野球帽子.jpg

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