成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

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サプリメントだけではない痛み止めでも気を付けたい腎機能障害!!

サプリメントだけではない痛み止めでも気を付けたい腎機能障害!!

 

2024年も7月に入り、後半となりました。ジトジトした梅雨と晴れた日には熱中症の危険があるような灼熱の暑さで体調管理には注意が必要です。

さて、2024年5月に福岡で日本整形外科学会が開催されました。整形外科の学会で最大規模の学会です。脊椎だけではなく、関節、リウマチ、腫瘍、リハビリ、手の外科などすべての整形外科にかかわる分野の学術集会で参加者も研修医、開業医、勤務医と多数の整形外科が参加する学会です。学会発表の中でも演題の採択率は低く、60%程度で、採択されることが整形外科の中で最も難しい学会です。当院からも2年連続採択され発表してきました。JOA看板とロードバイク.jpg一幸舎.jpg

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小林製薬 紅麹問題 患者の約85%が腎臓の機能1か月以上戻らず | NHK | 健康

ニュースで話題となっておりますが、小林製薬の紅麹サプリメントで腎機能障害を呈して複数人が亡くなったと報道されております。原因がまだはっきりしないことところもありますが、サプリメントを内服して急性腎不全を生じたようです。

痛み止めでも生じることがある急性腎不全!

 ここで気をつけないといけないのは急性腎障害を生じるのは今回のサプリメントだけではなく、日常診療でよく使用される痛み止め(鎮痛剤)でも生じる危険性があることです。

 NSAIDsと言われる日常診療で最も使用される消炎鎮痛剤があります。変形性関節症に対する効果は特に有用性が認められております。

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しかしNSAIDsは高血圧治療で使用される、降圧剤の中でレニン・アンジオテンシン系阻害剤(RASI)、利尿剤との3併用で急性腎障害を生じる危険性が報告されて、Triple Whammy(3段攻撃)と注意喚起されております。

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Triple whammyは急性腎不全を生じると死亡率が10%と致死的病態を生じますので、3剤併用を避けなければなりません。

整形外科外来ではTriple Whammyの危険性は高い?

Triple whammyを避けるためには、整形外科外来を受診される患者さんが高血圧の薬を内服しているか、特にRASI剤と利尿剤の2剤併用している患者さんの割合を知る必要性があります。特に高齢者は腎機能低下している患者さんや高血圧など複数の内服薬を服用している患者さんがいるため注意が必要です。整形外科外来でTriple Whammyの危険性が高いか調査することにしました。対象は、2020年4月から2021年3月31日までに成尾整形外科病院の外来を受診した20歳以上の初診患者としました。

調査方法は、RASI薬,利尿薬の2剤内服している患者(2剤併用)の割合。

初診時にNSAIDsの追加処方割合.60歳以上の高齢者においてRASI薬と利尿薬の2剤併用患者の割合.Triple whammyで急性腎不全を生じた症例を調調査しました。

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結果です。

初診患者は3405人(男性1580人,女性1580人)で平均年齢49.2歳でした。

NSAIDsは全体の2042名(60%)に処方されており、多くの症例で使用されておりました。

 Triple WhammyはNSAIDs処方患者2042名のうち61名(3.0%).に認めました。

2剤併用群は全体の104名(3.0%)存在し, 2剤併用群の61名(58.6%)がTriple Whammyとなっていた.2例がTriple Whammyで急性腎不全を発症しておりました。

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60歳以上の新患患者においては、1848人中101人(5.5%)がRASI系と利尿薬を併用していました。つまり、20人に1人以上がNSAIDsの投与で潜在性に急性腎不全のリスクがある!!高齢者に骨折や感染などのストレスが加わると容易に急性腎不全を生じてします危険性があります。高齢者には注意して消炎鎮痛剤(NSAIDs)を使用しなければならないことが分かります。

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80歳代の女性です。第一腰椎椎体骨折の診断で保存的加療加療をされておりました。骨折による腰痛で体動困難のためNSAIDsを処方されておりましたが、症状の改善はありませんでした。当院へ紹介となったのですが、入院時の採血で急性腎不全を認めました。Triple Whammyによる急性腎不全でした。腎臓内科のある救急病院で治療をしてもらい、腎不全が改善してからBKPを行いました。術後腰痛は改善しNSAIDsの投与は不要になりました。

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高血圧診療ガイドラインにおいても、RASI剤と利尿剤の併用療法(赤字)も推奨されております。慢性疼痛患者ではRASI剤と利尿剤の併用は推奨されませんが、内科の先生が鎮痛剤の有無まで考慮して血圧治療管理をするのは難しいと思います。

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慢性腎臓病ガイドラインにおいて、高齢者、慢性腎不全患者ではTriple Whammyの危険性が高いので避けるべきと記載されております。

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Triple WhammyはNSAIDs使用開始から30日以内でのリスクが高いことが報告されております。

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痛みを主訴に受診されることが多い整形外科では鎮痛消炎剤であるNSAIDsを処方することが多いです。また高齢者の慢性疼痛患者さんを診療する機会も多くなっております。降圧剤も多数の種類があり、最近では合剤の降圧剤も複数あり、どの薬がどの作用機序かわかりにくくなってきております。当院ではお薬手帳で内服薬を確認し、薬剤部が作成してくれた降圧剤の種類をチェックして、Triple Whammyのリスクをなくすよう、薬剤部、看護師と多種職連携を行っております。患者さんもお薬手帳を持参して協力していただくようよろしくお願いします。

鎮痛剤の処方の際はお薬手帳の確認が必要!

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結論です。Triple WhammyはNSAIDs処方患者の3.0%に生じていました。

整形外科外来の60歳以上の高齢者では2剤併用の割合が5.5%と高くNSAIDs投与には注意が必要である.運動器疼痛の専門医である整形外科はtriple whammyを避けて

NSAIDsを使用する必要がある.そのためには内服薬を確認してからNSAIDsの投与をしていく必要があります。

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学会の合間に高校の同級生と久しぶり飲みに行きました。博多のイカの造りは美味しかったです。

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