成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

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骨粗鬆症性椎体骨折に対する脊柱再建術

2023年度3月になり、もうすぐ23年年度が終わり、2024年度が始まります。

2023年12月熊本の地方会で骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に対する側方侵入(LIF)椎体間固定術による脊柱再建術を発表してきました。

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OVFに対しては保存療法が基本となりますが、疼痛が強く離床が困難,保存療法で腰痛の改善がなく、偽関節を呈する症例に対しては経皮的椎体形成術(BKP)が適応となってきます。BKPは全身麻酔を要しますが、約30分で出血少量、創部も5mmの傷が2か所と低侵襲な手術であり、除痛効果も直後から得られることができる手術です。高齢者でも全身麻酔が可能な患者さんなら施行できる手術です。当院でも予後不良型を中心とした症例に施行しております。

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しかし、すべての症例がBKPで対応可能なわけではありません。椎体の圧潰がひどい症例、麻痺を呈し椎体不安定性が強い症例、椎体だけでなく、椎間板損傷の激しい症例、破裂骨折型で脊柱管内に骨片が突出している症例、椎体がspiltして中央で骨折している症例などに対してはBKPでは対応は困難です。

Load Sharing分類という以前から椎体骨折の分類がありますが、椎体の破壊程度を最大9点にして、7点以上では後方からの手術では偽関節、後弯変形、implant failureなどを生じて成績不良であるため前方からの脊柱再建術が推奨されております。

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交通事故や転落外傷など若い人の破裂骨折であれば、現状では早期に後方固定術を行い、1-2週間程度で出血や全身状態が安定したのちに前方椎体置換術で脊柱再建術を行う、Damage Control Surgeryが一般的になっています。

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胸腹部を開胸、開腹手術は出血量や侵襲が大きく、心肺機能、全身状態の予備能力が落ちている高齢者には適応しにくかったのが現状でした。

そこで最近低侵襲脊椎手術してひろまっているのが、LIFといわれている側方からの椎体間固定術です。専用の開創器を用いることで、小切開で筋肉や肋骨の組織損傷を最小限にして側方から椎体置換術、椎体間固定術を行う手技です。

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症例を提示します。70歳代の女性で物を持ち上げてから腰痛が出現しました。近医で椎体骨折の診断で鎮痛剤など処方され加療されておりました。受傷3カ月後より下肢の麻痺が出現し歩行困難となり当院へ紹介となっております。

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X線では第12胸椎が圧潰を認め、不安定性を呈しておりました。CT、MRIでも第12胸椎の偽関節、椎体圧潰、脊髄圧迫所見を認めました。

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脊柱再建術の適応と判断し二期的手術を計画しました。まず通常の後方からの固定術で脊椎の安定性とアライメントの改善を行い、二期的にLIFでの椎体置換術を行いました。現在術後1年が経過しており、歩行も独歩で、ADL障害もありません。もちろん、隣接椎体骨折や脆弱性骨折の予防で骨粗鬆症の治療を行っております。

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次の症例ですが、70歳代後半の活動性の高い男性です。しりもちをついて受傷されました。腰痛出現し近医受診され、椎体骨折の診断でコルセット、内服加療されましたが症状改善ないため受傷後3か月で受診されました。

X線では第3腰椎の椎体骨折を認め、椎間板と椎体の不安定性を呈しておりました。CTでもL2/3の椎間板の不安定性とL3椎体骨折を認めます。L2/3椎間損傷による椎間板不安定性とL3椎体骨折の不安定性による腰痛と診断し一期的手術を計画しました。

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側方からのXLIFでの椎間板の再建術と後方からのBKPでの椎体安定性を獲得し経皮的椎弓根スクリュー(PPS)で固定しました。術後腰痛は改善し現在はシルバーの仕事にも復帰されております。もちろん、骨粗鬆症の薬物療法を開始しております。

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胸腰椎前方再建術の適応を中島らは脊柱管占拠率40%以上の破裂骨折、Load shring分類7点以上の不安定性を要する骨折と報告しております。ただし前後合併手術は高齢者には大量出血など合併症などの危険性が高く躊躇することがあります。LIFであれば手術侵襲を押さえることが可能であるため、高齢者に対しても前方再建手術が近年可能となってきております。またLIFの開創器だけでなくインプラントの発展も目覚ましく、椎体終板を面で受けるwide foot print型のCageで脆弱な骨でも沈み込まないようなCageが開発され臨床応用されております。

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当院でも高齢者のOVFに対するLIFを用いた前方後方固定術の4例は手術時間平均4時間9分、出血232mlと侵襲を押さえて治療可能で合併症もありませんでした。

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LIF手術はだれでも施行可能な手術ではなく、病院の施設基準があり、脊椎専門医で胸腰椎の前方手術の経験があり、手術見学およびトレーニングを受講してはじめて施行できます。当院も病院間での連携をおこなってからLIFを導入しております。

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BKPで対応できない破裂骨折や遅発性麻痺の症例に対して当院でもLIFでの脊柱再建術を安全、安心して行って麻痺やADL障害を改善できるよう診療していきたいです。

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TMSC熊本工場が稼働しましたので、サイクリングしてきました。周辺は本当に畑の中にポツンと工場があるだけでした、熊本のシリコンバレーのように今後発展していくのでしょうか。熊本経済の活性の起爆剤となってほしいですね。

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