元気になるオルソペディック ブログ
整形外科でのロボット手術とは?
先日、富山大学整形外科教授の川口 善治先生に熊本で講演していただきました。
「脊椎疾患に対する病態把握と最新治療-骨粗鬆症椎体骨折を含めて-」
診断から病態把握まで実臨床に役立つ講演内容でした。特に、印象に残ったのが、富山大学でも導入されている脊椎ロボット手術についてです。
脊椎外傷による脊柱の破壊による不安定性、不安定性を伴った脊柱管狭窄,側弯症などといった変形を伴うような病態に対して固定術が必要となります。脊柱の近傍には神経や大血管、腹部、胸部内臓などの重要臓器が隣接しています。スクリューを用いて固定術を行うことが多いですが、脊柱からの逸脱は神経、血管、重要臓器の損傷は重篤な合併症になります。
通常は術中のレントゲン透視を確認して行いますが、100%安全との報告は残念ながらなく、数%の逸脱は生じてしまいます。医療従事者の問題として術中にX線透視を使いますので、術者、麻酔科、看護師など医療スタッフが被曝します。毎日手術が行われると、被曝量が増えますので、医療従事者の被曝が問題となります。
逸脱率を下げるために術中のCTナビゲーションおよびロボットを用いて人間では生じる手振れやリアルタイムモニタリングで逸脱を防げます。
当院でも第1世代のナビゲーションがありますが、術前のCTを用いてレジストレーションを行いますので、手術中の体位と若干のずれが生じるため完全ではありません。
第2世代のナビゲーションは術中にCTを撮影してその場でレジストレーションを行っていくので、誤差が少なく正確性があがっております。有名なナビゲーションとしてはメドトロニック社のOアームがあります。機材も大きく場所もとり、金額も1億円近くとても高価が医療機器です。
第3世代としては第二世代にロボットを併用して人間では手振れなどの誤差が生じますがロボットでは手振れもなく正確性がさらにあがり安全性が高いです。もちろんナビゲーションにロボットの費用もかかりますのでさらに高額となります。川口教授は3年ほど前に導入してますが、その後円安によってロボットの値段が現在1.5倍くらいになったとのことでした。良い時期に導入できたとのことでした。
ロボット手術の論文です。
まず最初に開発、臨床応用されたのがメドトロニック社のMazorXです。椎弓根スクリューの挿入に関して透視と比較して有意に正確で逸脱が少なく、手術時間の短縮と被曝の軽減につながったと報告されています。
Globus社のExcelsius GPSは富山大学の川口教授も導入されているロボットです。RCTでの比較はありませんが、MazorXと同等の精度、安全性が報告されいます。術中出血および入院期間もロボット手術のほうが短かったとのことです。もちろん放射線被曝もありません。
そのほかZimmmer社のROSA、中国製のロボットも記載されてますが、残念ながら日本製の脊椎ロボットは現状ではありません。(泣)頑張れ日本企業!!
各メーカからナビゲーション、ロボットが市場に上場してます。ますますこれから発展していく分野だと思います。ナビゲーションもXR、AR、MRなどと組み合わせて進化していっております。
安全性の向上と医療被曝の軽減はよいことですが、医療コストが増えることが導入するための一番のハードルです。現状では大学病院など公的病気ではないと導入は困難です。導入コストがもっと安くなってくれると助かるのですが・・
医療技術がさらに発展し安全、安心な手術が提供でき、患者さんに還元できますように!!
川口教授とても勉強になる講演会ありがとうございました!!
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