成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

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化膿性脊椎炎に対する低侵襲脊椎手術~MIST~

 新型コロナウイルスが5類に変更となり、少しずつ経済活動、日常生活が以前のような賑わいを取り戻しつつあります。

整形外科疾患としてはウィルス性の疾患はごく稀ですが、細菌を始めた感染症は昔から多くあります。以前は結核による脊椎カリエスや結核性関節炎が多く認められましたが、高齢化社会になり糖尿病や慢性腎不全など基礎疾患を持った高齢者が増えたことで、化膿性脊椎炎、関節炎の患者は増えてきていると報告されております。

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高齢者では心機能、呼吸機能の予備能力が低く、手術を含めて侵襲の大きな治療を行うことを躊躇してしまうケースも実際あります。感染がコントロールできないと併存所の悪化などで致死的疾患となってしまいます。

 

仙台で行われた第13回最少侵襲脊椎治療学会(MIST学会)で化膿性脊椎炎について発表してきました。

 第13回最小侵襲脊椎治療学会(MIST学会) | 株式会社ドゥ・コンベンション (umin.ne.jp)

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MISTとはMinimallly Invasive Spinal Treatmentの略で"脊椎不安定性や脊椎変形によるインバランスの病態に対して、より低侵襲に固定術や制動術を達成する低侵襲治療のことでしたが、現在では従来法の低侵襲化、理学療法や薬物療法などの保存療法、予防医療、再生医療などを含むより横断的かつグローバルな治療を含めて脊椎の安定化を図るという新たな概念のもとに生まれた手技の総称とされます。

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MIST手技は経皮的椎弓根スクリュー(PPS)、側方経路椎体間固定術(LLIF)、全内視鏡脊椎手術(FES,PED)の3本柱の発展により低侵襲化、発展してきました。

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今回、MIST手技での化膿性脊椎炎に対する低侵襲脊椎手術の報告をしてきました。

化膿性脊椎炎ですが、まず最初に行わないといけないのが起炎菌の同定です。どのいった細菌感染なのか?どのような抗菌薬で効果があるのか?感染部から膿瘍を一部とりだして起炎菌同定と抗菌薬の感受性をしらべる必要があります。

 

以前ではCT下穿刺、ドレナージが一般的でしたが現在は全内視鏡を用いて、掻破、洗浄し起炎菌の同定することも可能となっております。

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経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を用いて感染椎体の上下椎体を固定することで,化膿性脊椎炎の椎体を安定化させることで感染が沈静化することが報告されております。低侵襲に後方固定術を行うことができるようになってきております。

 

感染椎体の骨破壊が著明な時や膿瘍形成が椎体前方にある際はPPSでの後方固定術に前方掻破、固定術が必要となりますが、LLIFの開創器を用いることで前方支柱再建術が低侵襲に行えるようなってきております。高齢者に前方後方固定術を行えるようになるとは20年前には考えられないことでした。

MSIT手技2.JPG

 

MIST手技を組み合わせて行うことで高齢者で心機能、呼吸機能の予備能力の低下した合併症の多くある患者さんにも治療介入できるようになり感染を沈静化できるようになっております。

 

10年以上ぶりの仙台でしたが、東日本大震災からの復興も進んでおりました。

 伊達政宗.JPG千年希望の丘1.JPG

 

 

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