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大腿骨近位部骨折には早期手術が有用!
大腿骨頸部内側骨折?外側骨折?
今の若い整形外科医や研修医の先生は知らないだろうけど、今から20年前ほどは大腿骨近位部骨折をすべて大腿骨頸部骨折と呼んでました。現在では、どちらも大腿骨頸部骨折と呼ぶ整形外科医はほとんどいないと思いますが、以前は大腿骨転子部骨折、頸部骨折ともに大腿骨頸部骨折と呼ばれている時代がありました。いわゆる大腿骨頸部骨折を大腿骨頸部「内側」骨折、大腿骨転子部骨折を「外側」骨折と呼んで区別してました。英語では大腿骨頸部骨折はfemoral neck fractureですし、大腿骨転子部骨折はfemoral trochanteric fractureと明確に区別されておりますが、日本ではなぜがひとくくりに大腿骨頸部骨折でした(?)。
現在ではやっと、用語が統一さえ、頸部骨折と転子部骨折と呼ばれ混乱はなくなってます。
(骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に関しても、いまだに圧迫骨折と呼ばれることが多いですが、専門医や学会では椎体骨折(OVF)と統一しようとしてますが、いまだにカオスな状態です。圧迫骨折の呼称は骨折の病態を正確に表していない、すべてが圧迫骨折型ではないなどで不適当な呼び名です。ただしDPCコードに圧迫骨折がありますので統一が困難を極めてます・・)
大腿骨頸部/転子部骨折は似たような骨折ですが、大腿骨頸部骨折は関節内骨折のため転位の大きな骨折では大腿骨頭への血流障害を生じ、骨接合術を行っても遅発性骨頭壊死の危険性が高いため、人工骨頭置換術/人工関節置換術が適応となります。
非転位型大腿骨頸部骨折は骨接合術を行うことも多いです。(CCHSは現在ほとんど施行されてません。)
一方、大腿骨転子部骨折は関節外骨折で血流が良好なので、骨接合術で骨折部の癒合が得られます。類似した骨折ですが、治療方針が異なるため診断名は非常に重要となります。
高齢者に生じる骨折ですので、骨折による痛みによって、長期臥床による寝たきり、誤嚥性肺炎、尿路感染、認知症の進行などによってADLだけではなく、生命予後も縮める骨折となります。治療方針としては基本的には手術療法によって除痛を行い、早期から歩行訓練をおこなってもとのADLに戻すことが重要となります。
大腿骨近位部骨折に早期手術加算が設立!!
整形外科医は通常、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、頚髄症など変性疾患の手術が予定手術として組まれております。アベルも通常2,3週間程度は予定手術でいっぱいです。そこに救急車で骨折の患者さんが搬送されてきますので、予定の合間と手術室の空き具合、麻酔科、病棟と日程を調節して手術を組むのですが、なかなか早期にはマンパワー、時間、検査体制などで手術日程が遅れることがあります。
大腿骨近位部骨折の早期手術によりADLの改善や生命予後の改善の報告は国内外からありますが、現状の日本では手術まで待機日数は平均4.9日と報告されております。(欧米では外傷センターがあり、骨折など外傷に特化した外科医がいるためスムーズに早期手術ができます。)
2022年の診療報酬改訂によって、大腿骨近位部骨折の手術は受傷から48時間以内に行うことで4000点の加算が付くようになりました。厚労省からも大腿骨近位部骨折に対して、48時間以内に手術を取り組むよう経済的なサポートとお墨付きを得たことになります。マンパワーや、迅速な検査や治療を進めるためにはより多くの多職種のスタッフの協力が必要となりますので、経済的支援が必要です。当院でも受傷から早期に手術加療を行い、痛みの改善と歩行やADLの改善に努めていきたいです。
もちろん、骨折の連鎖を止めるために、手術加療後に骨粗鬆症の治療介入が必要なことは当然です。二次骨折予防のための、骨粗鬆症の治療加算もついたので、Fix and Treatと呼ばれる手術に続いて、骨粗鬆症治療が重要となります。
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