元気になるオルソペディック ブログ
見逃しやすい脆弱性骨折、FFPとは?
人生100年時代!!
高齢化社会と言われて久しいですが、高齢化に伴ってさけることができない問題は「骨粗鬆症」です。骨粗鬆症は骨が脆弱となり、転倒や尻もちなど、ちょっとした外傷で骨折を生じる疾患です。内服薬、注射薬などさまざまな骨粗鬆症薬が出現し、良好な骨折予防効果が示されており、骨粗鬆症に対する治療はここ数年で進歩、飛躍しております。
脆弱性骨折の種類としては、手関節周囲の橈骨遠位端骨折、肩関節周囲の上腕骨近位端骨折、脊椎では胸腰椎椎体骨折(昔の圧迫骨折)、大腿骨近位部骨折が有名です。
特に大腿骨近位部骨折や胸腰椎の椎体骨折は寝たきりや生命予後にも影響する骨折ですので予防が重要となります。
整形外科では骨折の治療に対する治療が重要な割合を占めておりますが、骨折させない治療、すなわち骨粗鬆症に対しての治療の重要性が高齢者の増加とともにさらに重要となってきております。
アベルも骨折治療に関しては研修医時代から携わってきて、後頭骨から足の指の骨折まですべての部位の骨折治療を経験してきました。
研修医向けの骨折治療のスライドから
尻もちで骨盤骨折?
骨盤骨折は交通事故や転落外傷などの高エネルギー外傷で生じることが多い骨折でした。
転倒や尻もちで骨盤が骨折するとは想像しにくいのではないでしょうか?
骨粗鬆症による脆弱性骨盤骨折(Fragility Fractures of the Pelvis: FFP)が増えてきております。FFPに対する治療が学会や研究会でTopicの1つとなっております。
第45回日本骨折治療学会抄録号から
FFPでは、痛みが少なく離床が早期にできる安定型の骨折に対しては保存的加療で経過は良好ですが、疼痛が強く離床ができない骨折は寝たきりや死亡率が高いとの報告があり手術治療を選択することがあります。
RommensらはFFPに対する分類を作成し、Ⅲ以上では手術適応となりうると報告しております。Type1は骨盤輪前方のみの損傷で保存的加療の適応です。TypeⅡは転移のない骨盤輪の部分損傷で通常は保存療法で改善します。安定しない場合は経皮的固定を推奨しております。TypeⅢ、Ⅳに関しては内固定術での手術を推奨しております。
海外からの報告なので、本邦で一概に同じようなプロトコールで治療することはないですが、保存療法でADLが改善しない症例に関しては低侵襲な手術で骨盤輪を安定化させる必要があると考えております。経皮的な椎弓根スクリューなど脊椎instrumentationが普及しており、骨盤輪の不安性を生じている骨折に対してはSAI(Sacral Alar Iliac)screwなどを用いて内固定術を行っております。
診断について
FFPの診断は意外と難しいです。患者さんが「骨盤」が痛いと言って外来受診してくれることはほぼありません。臀部痛や鼠径部痛、また大腿部痛や大腿背側部痛など座骨神経痛様の症状を呈することが多く、特異的な所見がありません。またレントゲン写真でも骨粗鬆症で骨折部がはっきりしないことも多く診断は困難です。早期に診断するためには、疑って仙骨まで含めてCT、MRI検査をする必要があります。
アベルも症状から座骨神経痛を疑い、腰椎MRI検査を行いましたが、座骨神経痛と原因となる脊柱管狭窄やヘルニアなどがなく、ふと仙骨を見ると、FFPを認め、診断がついた経験があります。疑わないと見逃しやすい骨折だと痛感しております。
治療方針
安静および鎮痛剤を投与を行い疼痛が軽減したところで、リハビリを開始します。高齢者なので長期の臥床は寝たきりの危険性があるため、ADLを保ちながら離床を進めていく必要があります。もちろん脆弱性骨折の1つですので、骨粗鬆症の治療が必要となってきます。椎体骨折やFFPなどに対しては強固な骨粗鬆症治療が必要と感じておりますので、アベルはテリパラチドをfirst choiceとしてさらなる骨折の連鎖を予防しております。上田先生の報告は治療方針の参考にしております。
脆弱性骨折、骨折連鎖の予防のためにも骨粗鬆症治療の重要性が増してきております。薬物療法もさまざまな種類の骨粗鬆症薬がありますので、専門医を受診して、骨粗鬆症の検査を行ってから治療をすることをお勧めします。
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