成尾整形外科病院

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骨粗鬆症性椎体骨折(OVF:osteoporotic vertebral fracture)について その2 OVFの診断について

シリーズものにしました。OVFシリーズ第2弾。診断編です。

シリーズと言ったら、マリオですね。マリオブラザーズからマリオランドまで。(アベルJr.はルイージ派ですけど。)

     マリオ新宿.jpg ハルのプレゼント.JPG

OVFは尻もちなどのちょっとした外傷や特に誘引がなくても自然と骨折する脆弱性骨折です。OVFが生じやすい場所として胸腰椎移行部(第11胸椎から第1腰椎)が知られております。胸腰椎移行部は矢状面で脊椎のアライメントがS字状に変化する場所で椎体前方の荷重分担が大きいこと、肋骨と胸郭が癒合しない第11胸椎,12胸椎はfloating ribであることが椎体骨折を生じやすい場所と言われています。(S字状に脊柱の形の変化があり、肋骨が胸骨と癒合していないので力学的に弱い。)

 2つ目以上の椎体骨折では椎体骨折の隣接椎体(1つ目の椎体骨折の上下椎体)でもちろん生じやすいですが、1つ目のOVFで矢状面アライメントが変化(後弯)することで、2つ目は中位胸椎の生じやすくなります。胸腰椎移行部のレントゲンだけでは見逃しやすいです。佐藤先生の論文に記載されている、疫学はとても重要でいまでも特に参考になります。

 複数椎体骨折を生じている患者さんでは中位胸椎の骨折を見逃さないよう、診察、検査する必要があります。

ovf発生レベル(修正).jpg

脊椎椎体骨折 佐藤 光三 Geriatric medicine 1996 vol34 No.12より

 また、2つ目の椎体骨折で骨折しやすい部位に脆弱性仙骨骨折(FFP: Fragility Fractures of the Pelvis:)があります。腰臀部痛や鼠径部痛など非特異的な症状を呈することがあり見逃さないようする必要があります。FFPは最近では脆弱性骨折のなかでトピックスとなっています。痛みが改善せず、ADLが改善しない場合は手術療法も必要なこともあります。FFPについてはまた後日説明したいと思います。

椎体骨折が高齢者のADLや生命予後まで影響することは前回説明しました。今回はOVFを診断するために必要な検査や方法について説明したいと思います。

 

骨折だからレントゲン撮影すればすぐわかるのでは?

骨折の診断は臨床症状およびレントゲン像での骨の連続性が絶たれ状態を骨折と診断します。転位が少ない(ズレが少ない)骨折ではレントゲンでは診断できず、CTやMRI検査、後日経過とともに骨折が判明することがあります。画像所見で骨折線が認められれば、骨折と診断できますが、レントゲン画像のみで骨折所見がないからといって骨折が100%ないとは言えません。骨折の診断は意外と難しいのです。(汗)

OVFには特徴的な臨床症状があります。朝起床時に起き上がりに腰背部痛が強く、しばらくすると折り合いがついて痛くなくなるといった症状です。臥床など安静時には痛みがなく、離床や体動時に痛みがでる場合はOVFを疑う必要があります。

 

OVFの診断は機能写で診断!!

OVFを臨床症状から疑った場合はまずは単純レントゲンで診断を行います。ただし、単純レントゲンを通常の方法で撮影するだけでは診断率が低いことが報告されております。通常の撮影では60%程度とかなり低く、40%程度のOVFは診断できず見逃されてしまう危険性があります。さらに既存椎体骨折があるとどれが新規椎体骨折なのか、わからなくなります。

 OVFの診断率を上げるためには機能写、すなわち、座位と臥位でのレントゲン側面像で荷重での椎体の変形が生じるか、確認することで新規椎体骨折の診断率が89%まで上昇することが報告されています。椎体骨折を疑ったら、機能写は必須です。

OVF機能写.jpg

多くの椎体骨折は機能写をとることで診断できますが、それでも100%ではありません。レントゲンではっきりしない場合はMRI検査が必要となります。MRI画像では99%で診断できると報告されており、有用な検査となります。

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また診断だけではなく、MRI椎体骨折が保存的加療で治癒するのか、それとも偽関節や遅発性麻痺などを生じるリスクがある予後不良型なのかをある程度予測することが可能と報告されております。

スライド2.JPG

 椎体骨折はレントゲンの機能写で見逃さないようにして、診断がつかなかった場合はMRI検査まで行う必要があります。

椎体骨折に対してのMRIはガイドラインでも記載されております。(骨折の診断にMRIがガイドラインに乗っているのはおそらく、椎体骨折のみではないでしょうか?)

OVFのMRI診断(修正).jpg
T1強調画像で骨折の診断を行い、T2強調画像で保存療法か、BKPなどの手術療法が必要かの治療方針を決定する。

高齢者で腰の痛みがなかなか改善しない方は、専門医を受診して検査をして診断、治療をしてもらいましょう。OVFと診断された場合はもちろん骨粗鬆症の治療も必要となります。

 

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