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骨粗鬆症性椎体骨折 (OVF:osteoporotic vertebral fracture) その1 OVFは高齢者の生命予後にも影響する!!
高齢化社会と言われて、久しいです。
当院の外来、入院患者さんの年齢を見ると、高齢化が顕著で、80歳や90歳の患者さんの受診も当たり前となっております。
熊本県でも高齢化は避けられず、全国では中間の21位の高齢化率ですが、熊本市外での郡部での高齢化が顕著になっており、高齢化率40%以上の市町村も複数あり今後も高齢化が進行することは確実です。
麻酔や手術手技の低侵襲化などの進歩によって90歳以上の腰部脊柱管狭窄症に対する手術を行うことも、珍しいことではなくなっております。実際今年はすでに複数人の90歳以上の腰部脊柱管狭窄症に対して手術を行っております。
加齢により関節や軟骨の変性変化は避けられず、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症などは加齢とともに罹病率は上昇してしまいます。ドラゴンボールを集めて、神龍に不老不死をお願いする以外には若返りはできませんので(笑)、加齢による変性は避けては通れません。
アベルJr.作
加齢によって生じる疾患の代表として「骨粗鬆症」があります。骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って、骨質の低下と相まって骨が弱くなり、ちょっとした外傷、転倒や尻もちなどによって骨折しやすくなる病気です。日本では約1000万人以上の患者さんがいるといわれており、高齢化によって増加傾向の疾患です。
骨粗鬆症によって、骨折しやすい部位として、脊椎(背骨)、大腿骨近位部(足の付け根)、上腕骨近位(肩)、橈骨遠位端(手首)などがあげられます。
この中でも、大腿骨近位部骨折、脊椎椎体骨折は寝たきりになる危険性も高く特に注意が必要な骨折です。
骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)は、尻もちなどの軽微な外傷や、誘引なく骨折することも約1/3は生じると報告されております。いつのまにか骨折とも言われます。
椎体が圧壊し変形している所見が認められます。
OVFの恐ろしいのは、1つ椎体骨折を生じると、2つ、3つめの椎体骨折のリスクが、非常に高くなり、骨折の連鎖を生じることです。1つあると椎体骨折のリスクが3.4倍、2つ以上では7.4倍と跳ね上がります!!
OVFを生じますと、椎体の圧潰によって、脊椎が後弯を呈します。脊柱後弯は矢状面アライメント異常を呈し、立位を保持するために余計な力を必要として、背筋や関節などの負荷が上昇します。矢状面アライメント異常が腰痛やADL障害を生じ、高齢者のQOLを著しく低下させることが報告されてます。
Dubouseetは「立位姿勢では足部を支点として、円錐状に揺れながら立位姿勢を維持して、円錐が小さいほど姿勢維持に必要うな筋活動は小さく、安定している」という立位バランスの概念、'Cone of economy`を提唱しております。
個人固有の円錐中に入っていないと立位は維持できず、余計なエネルギーを必要とします。
さらに複数椎体骨折があると、生命リスクにも影響すると報告されており、骨折の連鎖を止めることが生命予後を改善させることになります。生命予後にもかかわりますので、骨粗鬆症の治療は高齢者の寝たきりを予防し、生命予後およびQOLを高めるための治療だと認識する必要があります。たかが骨折ではないのです。OVFを起こさせない、骨折の連鎖を生じさせないための治療が重要となります。
当院では脆弱性骨折を予防し、高齢者のADL、QOLを維持するために骨粗鬆症の治療にも力を入れております。骨粗鬆症の薬物療法も日進月歩しており多くの薬剤があります。骨粗鬆症が心配、脆弱性の骨折の既往がある方は一度専門医の受診をお勧めします。
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