元気になるオルソペディック ブログ
その鎮痛剤大丈夫ですか?Triple Wharmmyの危険性!!
NSAIDS、利尿剤、RA系降圧剤の3剤で腎臓への死の3段攻撃の危険性!?
*RA系降圧剤(renin-angiotensin系降圧剤)
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug)は抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を要する薬剤の総称です。様々な、痛みや発熱に対して鎮痛、解熱作用があり、日常臨床では欠かせない有用な薬剤です。頭痛や腰痛、膝痛、発熱などで皆さんも一度は内服したことがあるのではないでしょうか?
代表的なNSAIDとして、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナクなどがあります。アベル自身も腰痛などでお世話になっており、有用な薬剤です。。
非常に有用な薬剤ですが、内服の組み合わせによっては副作用を生じることがあるため、注意が必要です。重大な副作用としては、胃潰瘍や胃穿孔などの上部消化管出血、腎機能障害があります。
今回はNSAIDによる腎機能障害とくに、急性腎障害について考察したいと思います。(反省を踏まえて。)
腰部脊柱管狭窄症の診断で当初は神経障害性疼痛治療薬のみで治療を行っていた患者さんです。下肢のしびれ、痛みは軽減し経過は良好でした。初診から2〜3ヶ月後に他の関節痛もあるとのことで、NSAIDを処方追加することにしました。NSAIDの追加2ヶ月後に意識喪失を生じて、救急病院へ搬送されてしまいました。診断は急性腎不全(AKI:Acute Kidney Injyury)です。3次救急病院での腎臓内科の先生の治療の甲斐があり、腎機能も改善し無事退院されました。
詳細な診療情報提供書を送っていただき、急性腎不全になったこと。利尿剤、ARB(降圧剤)を定期内服していることを知り驚きました。
そうです。利尿剤とRA系降圧剤(ARBもしくはACE阻害剤)とNSAIDの3剤併用は「3段攻撃(Triple Wharmmy)」と名付けられ薬剤誘発性急性腎障害の要因となるのです!!
Francesco Lapi et al(2013) Concurrent use of diuretics, angiotensin converting enzyme inhibitors, and angiotensin receptor blockers with non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: nested case-control study. BMJ
詳細な診療情報提供書を送っていただき、急性腎不全になったこと、利尿剤、ARB(降圧剤)を定期内服していることを知り驚きました。
「3段攻撃」については、認知していたのですが、40歳代と若かったことから、内服薬のチェックを怠り、NSAIDを処方してしまいました。(反省)
Triple Wharmmyについて、知ってもらうため、若手の整形外科医向けに、以前講演会でスライドを作ってました。自分がTriple Wharmmyに気づかず、NSAIDを処方するとは勉強不足でした。
運動器慢性疼痛セミナー in 熊本
若手整形外科医のための見逃してはいけない脊椎疾患と薬物療法のピットフォールから他院でDISH(強直性脊椎骨増殖症)の椎体骨折の症例に利尿剤+ARB内服中にNSAIDを追加投与し、AKIを生じた症例からTriple Wharmmyを警鐘したのですが・・・
対策してます!!
最近では利尿薬が見直されており、高血圧症ガイドラインでもRA系降圧剤と利尿剤の併用が推奨されているようです。ARBと利尿剤の配合剤も多用されるようになってきており、常時2剤を併用する患者さんも増えているようです。そこに3剤目のNSAIDを処方され、脱水や下痢、骨折などのストレスが加わることで薬剤性急性腎障害を生じる危険性があります。
成尾整形外科病院でも、Triple Wharmmyを回避する対策を行いました。Triple Wharmmyがないかをお薬手帳で内服薬を確認し、電子カルテ上に利尿剤の内服を表示して、NSAID処方に注意喚起することにしました。実際に外来でお薬手帳を確認すると予想以上に利尿剤とRA系降圧剤を内服している患者さんが多いことに驚きと注意が必要なことを実感いたしました。
よもや!よもやだ!!
アベルJr.作
薬剤部に利尿剤、ARB、ACE阻害剤の薬剤の表を作成してもらいましたが、後発品なども複数あり、かなりたくさんの薬が該当し、整形外科医だけではすべてを管理するのは困難です。(涙)
当院の薬剤部はもちろん、近隣の薬局に利尿剤とRA系降圧剤とNSAIDの3剤併用の疑義照会してもらうよう連携を強化するようにしました。
医師一人では、Triple Wharmmyを見逃す危険性が高いので、外来看護師さん、クラークさん、薬剤師さんと協力して安全に鎮痛剤を処方できるよう連携しております。
また整形外科医だけの問題ではないので、かかりつけの内科の先生と連携を今まで以上に強化していきたいです。
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