成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

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骨粗鬆症患者さんの脊柱再建術に必要な骨粗鬆症治療とは?

 抄読会始めました!!


成尾整形外科病院では木曜日の朝7時30分から医師、理学療法士をはじめとした、多職種での論文の抄読会を行っております。最新の論文を読み、discussionし、臨床の現場にfeed backし診療に役立てるよう皆で勉強しております。職員の中で興味あるかたは自由参加なんで、一度でも参加して人数が増えると盛り上がり、モチベーションアップにもなるので是非参加してみてください。

 


今回は、抄録会での論文からです。脊椎のトップジャーナルSpine誌からです。

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高齢化社会になって久しいですが、高齢者の脊椎疾患に対して手術治療を行ことがかなり多くなりました。アベルが研修医の頃に80歳代の患者さんに脊椎手術を行うことは侵襲の比較的低い除圧術でもすることはほとんどなかったように思います。麻酔の進歩と、脊椎手術の低侵襲化(MIST:Minimally Invasive Spina  Treatment)の発展によって高齢者や合併症のある患者さんにも手術治療の介入が可能となってきました。

MIST手技を用いることで、高齢の患者さんに対しても脊柱再建術が可能となりました。

MIST



MIST2.jpgのサムネイル画像

例を挙げると、骨粗鬆症性椎体骨折に対する経皮的椎体形成術(BKP)腰椎すべり症や椎間孔狭窄に対する椎体間固定術(PLIF、TLIF、LLIF)化膿性脊椎炎に対しての後方固定術(PPS)などは合併症のある高齢患者さんでも可能となってきており、一般的な手技になりつつあります。

手術図.jpg

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ここで問題となるのが、手術自体は無事終了しても、手術後の経過で骨粗鬆症で脆弱となった骨に固定したスクリューが緩んできたり、抜けたり、椎体間固定術が骨癒合せずに偽関節となることで症状が悪化したり、再手術を要するなどのケースがあります。

糠に釘ではないですが、骨粗鬆症骨にネジで固定しても手ごたえも全然ないケースも珍しくありません。

脊柱再建術に必要な骨粗鬆症治療のガイドライン作成!


今回の論文では骨粗鬆症患者の脊柱再建術に対しての薬物療法のガイドラインを整形外科医、脳外科医、骨代謝内科医、リウマチ医の専門家で作ることです。

18名の専門家で匿名の調査を行い、デルファイ法で70%以上の同意を得たものをガイドラインとして採用してます。

ガイドライン採用法.JPG


脊柱再建の手術前の骨粗鬆症のスクリーニングについては65歳以上では全員を対象に、50歳から64歳は12個のリスクファクターのいずれかを持つ患者はスクリーニング、50歳以下の患者では4つのリスクファクターのどれかをもつものはスクリーニングが必要とされております。

危険因子

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スクリーニングの方法としては大腿骨近位部と脊椎のDXAでの骨密度が第1で、20歳から50歳なら骨密度のZスコアを用いて評価する必要があります。CTが利用できるなら、CTベースHounsfield (CTHU)はDXA検査しない場合に骨質の評価に有用。(HU<150の場合はDXAが推奨)既存椎体骨折の有無の評価のため脊椎の側面Xpが推奨されます。 採血でビタミンDの欠乏の有無を評価します。

第一選択薬はテリパラチド、アバロパラチド!


 

術前に骨粗鬆症と診断された場合は脊柱再建術の術前から治療介入が必要です。第一選択となるのが、テリパラチド、アバロパラチド(2023年1月より日本でも保険承認)
といった骨形成促進剤を使うことです。術前2ヶ月から術後最低8ヶ月の使用が推奨されております。テリパラチドには脊椎の骨形成やインプラントの引き抜き強度をあげるなど報告が多数あります。

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テリパラチド脊椎への効果.jpg

なんらかの理由で骨形成促進剤が使えない場合は、代替えとして骨吸収抑制剤を用いるのが第2選択となります。

ビタミンDの補充は必須です!


ビタミンDが欠乏している場合はビタミンDの補充が必要ですし、日常生活でもカルシウムの接種を推奨されております。ビタミンDが欠乏すると骨芽細胞が骨の最終段階の類骨を形成してもビタミンD不足では石灰化がされないため、未熟な類骨が増勢し脆弱な骨となってしまいます。いわゆる骨軟化症です。(こどもでは クル病といいます。)ビタミンDの活性化には日光も必要ですので、適度な日光浴が必要です。

ビタミンD欠乏の症例ではビスフォスフォネートのみでは効果が低く、ビタミンDの補充は必須です

 

 ビタミンD追加のビス効果.jpg


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC65678/pdf/1471-2474-3-6.pdf

当院でも術前に骨粗鬆症の診断がつき次第、骨粗鬆症の治療を開始し、術後に隣接椎体骨折や偽関節、インプラント緩みや脱転などのトラブルがないように治療介入しております。

骨粗鬆症の治療には患者さんの協力も必要です。骨粗鬆症の治療の必要性を理解してもらい治療を継続することが大切です。一緒に治療を頑張っていきましょう!

 


骨粗鬆症は回転ずしのように骨代謝が亢進します。破骨細胞が活性化し骨吸収が亢進し、骨芽細胞の骨形成は抑制されて骨量が減っていきます。

上記に該当する患者さんは術前に骨粗鬆症の検査、治療を受けて手術に臨みましょう!

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