成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

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OVF 特別編 骨粗鬆症椎体骨折の治療方針 ~とりあえず保存にしてませんか?~

熊本県の蔓延防止措置が8月8日から施行されましたが、ようやく感染拡大が落ち着き、10月1日から解除されました。はやく元の日常に戻ることを切に願っております。

去る8月6日にwebと現地のハイブリット開催でのSpine Osteoporosis Meetingの講演会が開催され、座長をさせていただきました。

「骨粗鬆症性椎体骨折の治療方針~とりあえず保存にしてませんか?~」

春陽会中央病院 副院長 寺山 星先生に講演していただきました。

講演会演題.JPG

骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)は保存療法で何事もなかったように治ってくれる症例もありますが、一方で治療をこじらせると、偽関節、後弯症、脊柱管狭窄症などを生じて治療に難渋することがあります。脊椎外科医なら治療に難渋したことがない人はいないと思います。(;^_^Aます。

OVFイメージ.jpg

OVFは安静にしておけば治るよ、と安易に考えている整形外科医も多いことも事実だと思います。脊椎外科以外の整形外科医が手術に対応することはないので、一般整形外科医と脊椎外科医との病態に対する認知の乖離があるのだと思います。超高齢化社会へと突入している現代では、整形外科全体で取り組む必要のある疾患です。

講演会の中で特に印象に残ったのは。

大腿骨頸部骨折や橈骨遠位端骨折に対しては積極的に手術になっているのに(手術やりすぎ?)、OVFは保存療法で引っ張りすぎて、逆に手術しなさすぎ!!後弯変形でのADL低下や遅発性麻痺での寝たきりなどの危険があり、高齢者を早く起こして寝たきりを作らない。

OVFの診断。保存的治療では経過がよくないMRIでの予後不良因子が報告されております。正しい診断での治療方針(保存療養or手術療法)の決定が重要です。

 

*MRIでの予後不良型としてはT2で高信号限局型や低信号広範囲型が提唱されてます。T1 で椎体全域が低信号型も予後不良型との有名な報告があります。

 予後不良型.JPG

早期BKP(経皮的椎体形成術)について。予後不良型が報告されており、経過が悪くなるのをわざわざ待機する必要はなく、受傷早期にBKPを行い、離床を進めて高齢者を寝たきりにしないことが大事!早期にADLをあげる。当院でも予後不良型のOVFに関しては疼痛が軽減しない、離床ができないなど保存療法で効果のない症例はBKPの適応として治療しており、全くの同意見です。手術自体も全身麻酔は必要ですが、約30分程度で出血もほとんどない低侵襲な手術です。

 BKPイメージ.JPG

OVFの治療後には骨粗鬆症の強固な治療が必要!!テリパラチドはmust!!

椎体骨折に対してBKPを行うだけでは、隣接椎体骨折の危険性があります。OVFに対してのテリパラチドの予防効果の高さが報告されておりますので、BKPの後にはテリパラチドで隣接椎体骨折を予防する積極的な骨粗鬆症治療が必要。骨粗鬆症治療薬として、内服、注射の薬がありますが、現状で椎体骨折に関して最も効果が期待できるのはテリパラチドですので、当院でも椎体骨折の症例には使用して骨折の連鎖を止めるよう努めております。

 

いずれも非常に共感できる内容でした。寺山先生には学会や講演会、手術といろいろと教えていただき毎回勉強になります。2年ぶりに直接、師匠にお会いした感じで、臨床に対する熱い思い感じ、今回も非常に勉強になりました。web講演会も手軽でよいですが、face to faceの講演会が一番記憶と、心に残ります。スター(星)先生ありがとうございました!!

骨粗鬆症は骨折を生じて、ADL低下や生命予後低下させる疾患です。我々、整形外科医は骨折したら骨折の治療を行うのは当然ですが、骨折をさせないように骨粗鬆症の治療に取り組む必要があります。また脆弱性骨折を生じた時は次の脆弱性骨折を予防するためにも骨粗鬆症の治療が必要です。成尾整形外科病院では骨粗鬆症の治療にも重点を置いております。専門外来もありますので、圧迫骨折の既往のあるかた、骨粗鬆症が気になる方は一度受診をお勧めいたします。

OVFに関して、今後、診断編、薬物治療編、手術編、無限列車編(?)など記事を作成して骨粗鬆症の治療の啓蒙を行いたいと思います。

 

 

 

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