成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

よく行われる手術

整形外科的選択的痙性コントロール手術

はじめに

当院では、麻痺と言われる病気の中でも、痙性麻痺といって、体の中に異常な筋肉の緊張が起こるために、手足の動きがしにくくなる、できなくなる麻痺に対する整形外科的治療(手術)にも力をいれています。
中でも、体の中にある異常な筋肉の緊張を少しでも軽くして、体を楽にし、運動機能の回復・向上を少しでも得られるように、整形外科的選択的痙性コントロール手術(Orthopaedic Selective Spasticity-control Surgery)を積極的に行っています。
患者様方・御家族の方々が御覧になられ、もし相談だけでもと思われたならば、御遠慮なく電話やメールでお問い合わせ下さい。

お問い合せ

成尾整形外科病院 TEL 096-371-1188(代表)
池田直通メールアドレス osscsdr@yahoo.co.jp

運動麻痺とは

一般的に「麻痺」と言われると、手足がだらんとしてしまう「麻痺」を想像することが多いと思います。
「麻痺」には触った感じがわかりにくい、わからないといった「知覚麻痺」と、手足が動きにくくなる「運動麻痺」があります。
後者の「運動麻痺」の中に最初にお書きした、体がだらんとなって力が入りにくくなる「弛緩性麻痺」と、自分の意思とは無関係に異常な筋肉の緊張が起こり、その異常な緊張が、正常な筋肉の動きを邪魔して本来の意識的な動きができにくくなる「痙性麻痺」があります。
「痙性麻痺」には、脳性麻痺、脳卒中(脳出血・脳梗塞)後遺症、急性脳症後遺症、頭部外傷後遺症、溺水後遺症などがあります。

治療に対する考え方(ノーマライゼーション)

当院では、「痙性麻痺」に対する整形外科的手術を専門にしています。
ただし、「弛緩性麻痺」でも手足が変形し硬くなった状態に対して、「痙性麻痺」に行う手術を応用し、変形を軽減・矯正することはあります。
障害(好きな言葉ではありませんが仕方なく使用しています。御本人にとっては現状が正常であるとも考えられます)は、残念ながら完全に治りません。
一般的には、まずはリハビリを開始することが多いかと思います。
リハビリの他に、薬物を用いた治療(最近では「ボトックス」が有名ですが)や装具両方、手術も脳外科的手術や整形外科的手術があります。
当院では、整形外科的手術、OSSCSをお勧めしております。 ボトックスやITB(バクロフェン髄腔内投与)療法、リゾトミー(脊髄後根切断術)といった治療もあります。
後述させて頂きます

  • ノーマライゼーションという観点から、脳性麻痺も脳卒中もすべて多くの病気の中の1つであり、それだけを特別扱いする必要はなく、可能であれば、一般の病院で他の患者様方と一緒に治療が受けられることが望ましいと考えます。
  • 子供さんの入院では、付き添いを希望されることが多いですが、是非付き添いをして頂きたいと考えています。
    特に小中学生くらいですと、一人で入院させることは親としてとても心配であり、それが当たり前のことです。ほかにごきょうだいがおられ、面倒をみてもらうことが難しい場合には、一緒に入院して頂いても構いません。これまでも実績があります。
  • もし個室入院を希望されるときは、他の患者様と同様に個室料をお支払い頂いております。 これもある意味ノーマライゼーションの感覚です。
  • 脳卒中の方を除いて、ほとんどの方が早期退院を希望されます。
    やはり入院生活はきついものですし、ごきょうだいを家に残してきた場合は、特に早くお帰り頂いたほうがみんなのためです。早く普段の生活に戻ることが大事だと思います。
  • それでも長期の入院を希望されるのであれば、現在の医療制度上可能な範囲で、入院は可能です。
  • 重度な方でも軽度な方でも、障害は苦痛です。それをこのOSSCSで少しでも軽くして御本人を楽にし、多少なりとも運動能力の改善や変形・脱臼の予防・改善等につなげたいと考えています。
  • 重度心身障害者施設に行きますと、変形が強く、股関節が脱臼したままの方々が多くおられます。整形外科的医療に携わらずに生きてこられたことが、大きな原因ではないかと思います。
    もちろんそういった治療があることを説明されたものの、拒否されてそうなったのであれば納得もできますが、そうでなければ悔いが残ることもあるでしょう。
  • 同じ重度な状態であったとしても、適切な治療をうけることで、多少なりともその質を改善することは可能ではないかと思います。

整形外科的選択的痙性コントロール手術(OSSCS)について

OSSCSは、Orthopaedic Selective Spasticity-control Surgeryの略で、「整形外科的選択的痙性コントロール手術」という手術です。
「筋解離術」と言われる手術法の中に分類されます。
筋解離というのは、筋肉を切ったり伸ばしたりして緩めることを意味します。

① 多関節筋の選択的解離、② 目的とする関節周囲での筋解離、③ 関節周囲のバランスを考えた筋解離の3つの基本概念があります。

①は、突っ張っていても身体を支える大事な筋肉を出来る限り残して、そうでない筋肉を選んで緩める(切ったり伸ばしたりすること)ことで、グラグラにならないよう緊張を緩和することを意味します。

②は、同じ筋肉でも緩める部位によりその効果に違いがあるため、目的とする関節周囲での筋解離が望まれる、ということです。筋肉は、身体の中で宙ぶらりんの状態ではなく、周囲の骨や筋肉などの組織と引っ付いています。そのため、筋肉の一方の端でその筋肉を切ったとしても、その筋肉が縮まれば、切っていない他方の端にはある程度の力が加わるのです。つまり、目的とする関節の近くで処置をしないと、思ったほどの効果が得られにくいということになります。

③は、表に見える格好だけで判断するのではなく、どの筋肉が異常に突っ張っているのかを判断して、目的とする関節周囲のバランスを考えて、筋解離を行うことが大事であるということです。例えば、股関節が曲がっているから曲げる筋肉だけを緩めると、逆に伸びる方向に突っ張ってしまったりする可能性があるということです。

手術で非常に重要な点があります。

  1. 皮切(傷)をできるだけ小さくする。
  2. 出血を抑え、出血を止める際も、電気メスの出力をできるだけ落として、侵襲(やけど)を軽くする。
  3. 身体の中の操作を丁寧に行う。
  4. 手先・足先の手術を行う際も、出血を抑える駆血帯(血圧を計る時に使用する腕に巻くもの)を使用せずに行う。

以上のような点に注意して手術は行う必要があり、これが術後の経過、結果、疼痛の程度、入院期間等を左右します。