はくざん 通信 第35号 2003.9.10 ホーム はくざん通信の目次に戻る

手術に関連する頚部の解剖
(通常は1椎間、時に2椎間に行います)
頚部椎間板ヘルニアで神経が圧迫された時に椎間板を切除します。前方から手術をする方が脊椎にアプローチしやすいため、前方からの手術を選択することになります。皮膚を切開すると薄い筋肉層があるだけで、すぐ脊椎に到達できます。侵襲も少なく術後痛も軽度で済みます。
手術手技:
●皮膚切開は5cm 前後です。縦あるいは横切開で頚部の左か右に切開線がはいります(下左図)。
●薄い広頚筋を切離し、胸鎖乳突筋とその周囲の筋肉層を剥離して、気管・食道と内頚動脈の間を進み
ます(下右図)

●頚部脊椎の前面の結合組織に到達します。
●細い針を椎間板内に入れ、レントゲン写真を撮り、目的とする部位であるか否か確認します。
●椎間板の高位をレントゲンで確認できたら、前縦靭帯に切り込みを入れ、椎間板の表面にある線維輪部を切除します。次に中央の髄核部を切除します(下図)。
●椎間板に接している椎体の一部(終板軟骨)を取り除きます(下図)。

●場合によっては後縦靱帯と呼ばれている靱帯の一部を切除します。この靱帯を除去すると、靱帯を超えて飛び出しているヘルニアを除去することができます。骨棘が神経根を圧迫していれば除去・除圧します(上図)。
●除圧範囲が2椎間に及ぶ場合は、中央の椎体の一部を削開(さっかい)して除圧し、次の固定の準備をします。
●狭くなっていた椎間板部を広げます。頚椎を固定するために計測し、移植用の骨を採骨します。
●骨盤の腸骨上に小さな皮膚切開を入れ、自家骨を採取します。
●移植用の自家骨を頚部椎体の間に入れ、固定します。
●ドレーンを入れ、皮膚を縫合して終了です。

●神経根障害
●脊髄への障害
●出血、血腫、血栓
●感染
●移植片の逸脱
●気管や食道への障害
●声帯へ行く細い神経(反回神経)が引っ張られたり長時間圧迫されると、術後しばらく声が枯れたり、声がでにくいことがあります。
●食道へ行く神経が障害されると一時的に飲み込み(嚥下)がしにくくなることがあります。
●採骨のため頚部とは別の皮膚切開が必要になります。そのため、採骨部の痛み、感染、出血、脆弱性、外側大腿皮神経(大腿前面に行く神経)を障害することなどのリスクがあります。頚部の痛みよりも採骨部の痛みのほうを強く感じる方が多いようです。
●固定が定着しないことがまれにあります。時に移植片が移動することが報告されています(1%前後)。 固定をする方は禁煙を必ず守って下さい。
●麻酔や全身状態に起因する合併症が生じることがあります(はくざん通信31 号参照)。
上記の合併症は、教科書から一般的に起こりえるものを記述しましたが、手術に精通した経験豊かな脊椎外科医の手術では、まれです。
頚椎の固定は、疼痛を引き起こしている頚椎部の動きを止めることで、痛みを減少させます。
固定を加えることで、頚椎の生理的彎曲を維持し変形を防止できます。90%から95%の高い定着率が報告されています。
椎間板を殆ど取り除くので、同じ場所での椎間板ヘルニアの再発は、まず起こりません。但し術前と同じ生活習慣を続けていると、頚椎への負荷のため上下の隣接椎間部に不具合が出やすくなる可能性があります。頚を後ろに反らす後屈はなるべく避けるようにしましょう。
術後はベッド上安静を3週間前後続けます。術後4週め頃から頚椎装具をつけて起立、歩行訓練が始まります。術後7〜
9 週ほどで退院予定になります。
全身状態をよく保ち、栄養、安静、リハ訓練に注意することは重要です。遺残(いざん)症状を気にするよりも、改善している点に関心を向け、明るい面に注目するほうが快復は早くなります。
但し痛みが続くようでしたら主治医に相談してください。術後の経過を再確認致します。
金属やチタンなどの医療用の内固定具(インストルメント・インプラント)を使った固定方法も広く行われています。成尾整形外科病院では、異物を生体には極力入れない、骨の固定は骨でする、医療負担は少なくするという考えから、内固定具(高価です)は殆ど使用していません。
情報公開の流れに沿って、手術の説明を試みました。
米国ではインターネット上に、一般人向けの手術の説明がなされています。「はくざん通信」では、このサイト(http://www.spine-health.com/topics/surg/overview/s01.html)や(http://www.neckreference.com/)を参考にして本文の解説を行いました。手術の図は(http://www.spine-health.com/dir/dir01.html)や(http://www.neckreference.com/)から主に引用しました。
日本語では、グロービュー社の「新図説臨床整形外科講座」、金原出版の「頚椎外科」酒匂 崇編集、医学書院の「標準整形外科学」石井清一、平澤泰介監修などを参考にしました。
(編集代表:医局 野上俊光ほか)
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