はくざん 通信   第33号 2003.8.30   ホーム  はくざん通信の目次に戻る 


腰椎の手術2
●腰部脊柱管狭窄症の治療
●椎弓切除術の実際
●手術術式
●成功率 
●危険性や合併症


腰部脊柱管狭窄症治療

 保存療法

 腰部脊柱管狭窄症(Lumber Canal Stenosis:LCS)の治療は、症状に応じて以下のような保存療法が、まずなされます。

●鎮痛薬の内服や外用(塗り薬や貼り薬)。

●生活指導(直立姿勢でなく前屈姿勢をとる)。ショッピングカートや自転車を利用する。コルセット (flexion braceという)をつけ前屈姿勢を維持する。

●硬膜外注入や神経根ブロック(はくざん通信23,29号参照)。ステロイドを併用し数回行ってみます。半数近い方は、これらの治療で軽快します。

 手術を選ぶか否か

 腰部脊柱管狭窄症はじっとしていれば、あまり痛く ないものです。手術を選ぶかどうかは、脊柱管狭窄症によって受ける生活制限の程度や苦痛の程度によります。たとえば長く歩けないとか立ち続けるのが苦痛で、買い物や日常生活に不自由でしたら手術療法をお勧めします。手術の目的は、日常生活の活動性を向上させることです。痛みが薄れ、行動範囲が広がり生活の質が向上します。

 手術について

 脊柱管狭窄症への手術療法は、圧迫されている神経 や血管への除圧が基本的な考えです。

●第1に、正確で詳細な診断が必要になります。神経 圧迫部が何箇所あるのか。両側とも圧迫があるのか、片側だけなのかなどです。

●次に、手術によって新たな問題を引き起こさないように注意します。神経の損傷や構造的な脆弱性を作らないように計画します。

●第3に手術野へアプローチする過程で、正常な構造 を壊さないよう、影響が最小限になるようにします。

●第4に、手術を受ける本人の状態が重要です。高齢者が多く、病変部が広く複数の除圧個所が必要に なると、手術侵襲や手術・麻酔の影響も大きくなります。患者さんの全身状態・内科的な問題などによっては合併症が起こり易いかも知れません。

 幸いなことに脊椎手術の中でも狭窄症の手術は、椎間板の手術に次いで、受ける価値が高いもので す。殆どの例は良好に経過し、術後の歩行能力に改善がみられます。


椎弓切除術の実際

 椎弓切除術はヘルニア摘出術(はくざん通信32号を参照)と同様に圧迫を受けている神経の除圧を行 います。神経根を上下左右から圧迫している組織(背骨の一部、椎間板、肥厚した靭帯など)を除去する術式です。ヘルニア摘出術よりも皮膚切開範囲が広く、筋肉剥離も、より広い範囲に及びます。

狭窄症  狭窄症2

 手術術式

●全身麻酔後、手術台で腹這いの姿勢になります。

●腰背部の中央部(正中)に病変の広がりに応じて、 10cm前後(6-15cm)の必要な皮膚切開を加えます。

●皮膚から触る飛び出している骨(棘(きょく)突起)や繋がっている骨(椎弓)に付着している上下 左右の筋肉(脊柱起立筋)を骨から外します(切断するのではありません)。

●脊椎骨の棘突起を切断します。筋肉の付着部です。 切断した棘突起は取り除く事が多いのですが、手術の後で元の場所に戻す(棘突起形成)事もあります。

手術

●椎弓を切除します。後方の圧迫が部分的に取れ、神経根が見えるようになります(下図)。

手術3

●肥厚して神経根を圧迫している椎間関節を部分切除(内側切除)し(右上図)、側面からの圧迫を取り 除きます。椎間板ヘルニアを合併した「複合型腰部脊柱管狭窄症」 などでは、脊柱管前方の切除や椎間板内の髄核摘出術を追加することもあります。

手術4   手術5

●圧迫が取れると脊髄や馬尾神経を包んでいる硬膜の色調がピンク色に改善してきます。 完全に除圧できたか神経根のゆるみをみ、止血を確認します。

●固定の必要がある場合は、後側方固定(はくざん通 信34号参照)を追加します。

●術後の出血を体外にだすため、ドレーンを入れて皮 膚を縫合し、手術を終了します。

 椎弓切除術のみで固定がなければ、手術後ベッド上での臥床安静期間は約1週間です。その後軟性コ ルセットを使い2〜3週間、合計して術後約3〜4週間で退院となります。

 固定があれば、術後ベッド上での安静期間は約1〜2週間です。その後ギプス固定、約3週間、次に硬 性コルセット約3週間で軟性コルセットに変更。退院は軟性コルセットに変更後となります。合計して術後約8〜9週間となります。

 個々人の歩行能力や活動性は、術前の状態や年齢に大きく影響されます。手術後6週間は腰を深く曲げたり重いものを持ち上げたり、捻ったりしないように注意してください。

手術による改善率と注意

 椎弓切除術の成果は明るい希望がもてるものです。 70%から80%の患者さまは歩行機能が著明に改善します。疼痛や不快感も改善します。

 下肢痛の改善のほうが、腰痛の改善よりも早く起こります。圧迫された神経の回復には数ヶ月以上の時間を必要とすることが多いため、しびれ感の改善には数週から数ヶ月、あるいはそれ以上の時間を必要とすることがあります。

 残念なことは、もともとの脊柱管狭窄症を引き起こした荷重負荷や脊柱の変性は、加齢とともに継続 していることが多いため、数年〜十数年後に再び狭窄症の症状を引き起こす方があることです。術後は腰をいたわって、無理を避けましょう。

危険性や合併症 

椎間板摘出術(はくざん通信 32号を参照)とほとんど同様です。硬膜損傷(脳脊髄液が漏れてくる)、神経根への障害(痛みや一時的な麻痺)、膀胱直腸障害、術後出血(硬膜外血腫)、感染、静脈血栓症などです。いずれも頻度はまれで、術 後の経過に影響を与えることも少ないものです。

 椎弓切除術は椎間板摘出術よりも侵襲が大きいし、対 象とする患者年齢層も高いので、これ以外の問題が出てくることもありえます。部分切除後の骨や靭帯の強度が弱いと、すべり症や圧迫骨折をおこしやすくなることがあります。

手術の説明と参照サイト

 情報公開の流れに沿って、2回目の手術説明を試みました。米国ではインターネット上に、一般人向けの手術の説明が公開されています。「はくざん通信」では、このサイト(http://www.spine-health.com/topics/topics01.html)を参考にして本文の解説を行いまし た。手術の図は(http://www.spine-health.com/dir/dir01.html)から主に引用しました。(編集代表:医局 野上俊光ほか)


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