はくざん 通信   第31号 2003.7.31   ホーム  はくざん通信の目次に戻る 


    麻酔について
○麻酔を受けられる患者さまへ 
○全身麻酔について 
○麻酔の危険性について 
○麻酔中におこりえる合併症
○手術と麻酔の準備 
○手術室で
○麻酔から覚めても痛くありませんか?
○脊髄(脊椎)麻酔、硬膜外麻酔について


 麻酔を支える機械たち
麻酔中は2重3重に生体をモニターし持続監視しています
・麻酔器・自動血圧計
・心電図モニター
・パルスオキシメーター
・呼気炭酸ガスモニター
 これらのモニターが開発され、普及してきたため、麻酔の安全性は飛躍的に向上しました。

手術と麻酔のモニター

○麻酔を受けられる患者さまへ

 このたび手術を受けられることになり、いろいろご心配のことと存じます。手術の痛みを取り除き安 心して手術を受けるには麻酔が必要です。当院の麻酔は麻酔科専門の認定医師(厚生労働省認定)が担当します。麻酔を安全に行うためには、麻酔科の医師が患者さまの情報をよく知っていることが重要で す。それと同時に、患者さまに麻酔について知っておいていただくことも大切です。

 麻酔科医は

 手術を受ける皆さまの全身状態や手術内容を知り、 安全にかつ出来るだけ苦痛無く手術が受けられるように努めています。それには入院されてから受ける 検査、術前に記入していただく問診表や診察などが大切です。これらを総合的に考慮して麻酔計画をたて、手術が安全に行われるようにします。

 麻酔は

 全身麻酔と局所麻酔に大別されます。局所麻酔には、手術の局所だけに麻酔薬を注射する方法、脊髄 麻酔、硬膜外麻酔などに細別されます。どの麻酔方法を選ぶかについては、手術の内容によってほぼ決 まるのですが、厳密な基準はありません。

○全身麻酔について

 全身麻酔では手術による痛みはもちろん、意識もなくなります。麻酔がかからないという人はいませんし、手術の途中に目が覚めてしまうようなこともありません。

 静脈内に麻酔薬を注射するか、麻酔ガスを吸入することで意識が無くなります。意識が無くなってから口から気管内へ管を入れ、そこから酸素や麻酔ガスを持続的に投与できるようにします。

 手術が終れば10分〜20分程度で目が覚めて呼びかけに応じられるようになりますが、本当にはっきりするのは数時間後です。

 手術後、時には声がかすれたり、のどが痛かったり、痰が絡んだりすることもありますが数日以内にもとに戻ります。

○麻酔の危険性について

 ほとんどの場合麻酔は安全に行われますが、以下のような場合にはある程度の危険性を伴います。出来る限りの予防策を講じますが、不幸にして合併症や後遺症を生じることがありえます。

●胃のなかに食べたり飲んだりしたものが残っている時(手術中に嘔吐したものが気管の中に入って、 窒息したり肺炎を起こしたりします)。

●小さな入れ歯が入っていたり、ぐらぐらしている歯があるとき(気管に管を入れるとき折れたり抜け たりすることがあります。正常な歯でも口を大きく開けにくい時は希に折れることがあります)。

●高血圧、糖尿病、喘息、貧血、極端な肥満・痩せ。

●狭心症や弁疾患、長年の喫煙、慢性呼吸器疾患。

●急性・慢性肝炎、肝硬変、慢性腎不全。

●極端に顎が小さい・口が開かない・頚が良く曲げられないことなどから生じる挿管(麻酔)困難。

●脳梗塞、長期の寝たきり状態からくる心肺機能の低下、痙攣疾患、向精神薬を大量に長く飲み続けて いる状態、特殊な症候群、生活習慣病など。

●関節リウマチ、ステロイド薬の使用、アレルギー、 血が止まりにくい状態、高齢など。

●手術内容と関連した問題が生じる時(大量出血、駆血や体位による圧迫など)。

◎タバコは麻酔管理上、合併症や問題を引き起こし ますので「手術と決まったらすぐ禁煙」して下さい。

○麻酔中に起こり得る合併症

 気道閉塞や気管支痙攣、喘息発作、異常な高血圧や低血圧、重篤な不整脈、アレルギー反応、ショック、悪性高熱症、心停止、心筋障害、脳神経障害、大量出血、嘔吐など、極めて稀ではありますが起こり 得ます。仮に上記のような合併症が生じた場合、速やかに適切な治療を行ない、全身状態の改善に努めます。

○手術と麻酔の準備

●術前検査をします

 安全に麻酔を受けていただくために、胸部レントゲン撮影、肺機能、心電図、採血検査などで、心臓、 肺臓、肝臓、腎臓などの機能評価をします。大切な検査ですのでご協力下さい。

●あなたの手術については

 主治医と他の医師や麻酔科医があなたの病状と安全性について充分な検討を重ねた上で決定します。 その結果、予定手術が延期になることもあります。

●麻酔科専門医が診察します

 麻酔科の医師は手術の前(前日)にあなたに会い、 問診を中心にした診察をします。麻酔について分からないことや心配なことがありましたら何でもお話 し下さい。

●薬を飲んだり点滴をしたりします

 手術前夜に下剤や睡眠薬を飲んでいただくことがあります。手術当日にも朝に鎮静薬を内服していた だくことがあります。病棟で点滴をします。

●食事制限をします

 麻酔中の安全のため、胃を空っぽにします。通常は麻酔前に6時間以上の絶食が必要です。手術当日 は食事を取らないで下さい。水分制限は麻酔前3時間以上を目安にしています。水分制限を長時間する と、血液がサラサラからドロドロとした状態になり、脳梗塞、心筋梗塞、血栓症などをおこしやすくなり ます。当院の手術は原則として午後からですので、水分は夜間を含め、当日の朝8時まで許可していま す。当日の朝は緊張をほぐす精神安定剤を処方することがあります。いつも内服している血圧の薬など がありましたら、当日の朝、8時までに内服していただきます。牛乳やジュースには蛋白・脂肪・繊維などが入っていますので食事扱いになります。水分はお茶や白湯(さゆ)、水に限定して下さい。具体的な 内容については訪問した麻酔担当医師が説明します。

手術当日には

 コンタクトレンズ、指輪、ネックレス、時計、へヤー ピン、小さな入れ歯、化粧などは取っておいてください。

○手術室で

 通常は午後から手術室へお呼びします。手術室では音楽を流してあなたをお待ちしています。あらかじめテープやCDをお借りできれば、お好きな曲を準備することもできます。お名前を確認し、心電計 や血圧計をつけ麻酔を開始します。麻酔科医の仕事は単に眠らせたり痛みをとったりすることだけでは ありません。私たち麻酔科医は手術中の全身管理を一番大切なことと考えています。手術中、安全な状 態を維持するために、呼吸の状態、脈拍、血圧、体温などの観察、いろんなモニターからの情報、手術 室で行う血液検査データなどを常時チェックして、もし異常があれば直ちに対処します。覚めぎわに、 麻酔科医があなたのお名前をお呼びします。「〇〇さん、目を開けて下さい。右(左)手を握って下さい。 深呼吸をして下さい」等の呼びかけをしますので、それに応じた動作をしてください。腹ばいの手術が 多いので、鼻が詰まっていることがあります。「口で呼吸をして下さい」などの声かけを致します。

○麻酔から覚めても痛くありませんか?

◆手術後の痛みへの対応は?

●御安心ください。麻酔開始時から鎮痛薬を使用しますので、目がさめたからといって、辛い痛みに襲 われる心配はありません。お部屋で痛みが出てきたら早めにお知らせください。薬の追加を致します。

○脊髄(脊椎)麻酔、硬膜外麻酔について

 手術台の上で「えび」のように丸くなってもらい、 腰の骨(腰椎)のすき間から針を刺します。この針はあまり痛くありません。

 脊髄麻酔ではその針から麻酔薬を入れます。そうすると下半身が一時的に麻痺した状態になり、痛み を感じなくなります。いわゆる下半身麻酔のことです。注入した麻酔薬の効果が続くあいだは麻酔が効 いていますから手術が終了しても足が動かなかったり尿の出が悪かったりする場合があります。3〜4 時間で回復してきます。時には手術後、頭痛を生じることがあります。大抵は数日以内に自然に治りますし、頭痛が持続する場合でも治療法がありますから心配ありません。

 当院では膝や下肢の手術に、この脊髄麻酔を適用しています。この麻酔法の効果が不十分な場合には 全身麻酔に切り替わることもあります。

参考書

「麻酔の科学」諏訪邦夫著、講談社ブルーバックス

パソコンの使い方の本で有名な著者の麻酔の本。

麻酔全般の他、昭和天皇の麻酔についても書かれています。

「手術を勧められたとき読む本」ジョン・ルイス著、諏訪邦夫訳、  講談社ブルーバックス

麻酔についてではありませんが、いろいろな手術に関する説明。手術を受ける前にぜひどうぞ。

「麻酔と蘇生」土肥修司著、中公新書 読み応えあり。   「全身麻酔のすすめ」、真興交易 橋内章、ほか

                                     (編集:(医局)野上俊光)


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