はくざん 通信 第12号 2001.7.25 ホーム はくざん通信の目次に戻る

ミエログラフィーは、くも膜下腔に造影剤を注入してX線撮影を行い,脊柱管内の病態を把握する方法です。本法はMRI(磁気共鳴画像)の導入とともにその適応が限定されてきました。MRIの副作用は少なく、ミエログラフィーでは造影剤へのアレルギーや発熱、頭痛をきたすことがあるためです。
それでも、両者の検査所見には相補う利点が多いため、手術による治療を検討する際にはミエログラフィーも、MRI検査も行っています。
「脊髄(主に頚髄症や頭部から首・胸の病気)」と「馬尾や神経根(主に腰痛や下肢痛)」への適応を分けて考えています。
ミエログラフィーでは脊髄を「陰影」として捉えていることや,造影剤の副作用および本法施行後の合併症という問題があります。これに対して,MRIは神経組織の描出が可能で,かつ質的変化もとらえられること,非侵襲性,本法施行後の合併症が少ないという利点があります。
以上の点から,脊髄疾患に対する形態学的補助診断法としてのミエログラフィーの価値は変わらないものの、ルーチン検査としての適応は減少してきました。脊髄内病変の発見に苦心惨澹(くしんさんたん)してきた我々にとって,MRIは革命的な診断機器です。ただし,脊髄神経根等に発生した小さな腫瘍の診断や後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症の評価などでは,MRIよりもCT myelography(CTM)が威力を発揮します。
馬尾や神経根に障害を有する症例に対しては,なおミエログラフィーが第1に選択される補助診断法です。
椎間板ヘルニアの診断なら、MRIはミエログラフィーを凌駕(りょうが)している面もあります。しかし,脊柱管狭窄の診断にはまだまだ多くの限界があり、MRIのみでの診断では不十分です。
これに対してミエログラフィーは,神経根を明瞭に描出し,脊柱管(硬膜外)の周囲からの圧迫状態を,姿勢の変化で比較したり、前後・側面・斜位像・CTなど、いろんな視野から検討できる優位性があります。
MRIでミエログラフィーの代用ができるようにはなってきましたが、現時点でのMRIは,まだ腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、腰椎すべり症などに多い,馬尾や神経根の圧迫をミエログラフィーほどには、明瞭に描出できていません。馬尾や神経根に対する圧迫を描出する手段として,ミエログラフィーは、なお第1選択の形態学的な補助診断法と考えられています。また,CTM(CTミエログラフィー)を使い、脊柱管の形態や馬尾・神経根との相互関係を観察する時でも,ミエログラフィー検査はMRIよりも描出力に優れている面が多く認められています。
質問:ミエログラフィー(脊随腔造影)を受けたのですが、頭痛がします。どうして頭痛がするのか?どのような処置をしたらいいのか教えてください。
答え:ミエログラフィー後の頭痛は、造影検査のあと時々みられる症状です。
寝ている間は痛くないのに、起き上がると頭痛がし、安静にすると痛みがおさまるという特徴があります。
医学専門書の「今日の治療指針」には以下のように記載してあります。
脊髄腔造影の後、脊椎麻酔後、脳脊髄液採取のあとに見られることの多い症状で、低脊髄圧症候群と捉(とら)えられている。脊髄腔を穿刺(せんし)した際流出した髄液に加え,穿刺針を抜去(ばっきょ)した後も、硬膜(こうまく:脊髄や脳脊髄液を包んでいる硬く丈夫な半透明の膜)の穿刺孔から髄液漏出(ろうしゅつ)が続くことがある。その場合、施行後に頭蓋内圧が低下し,頭痛などの症状が出現する.これを予防するためには,できるだけ細い穿刺針を使用するほか,施行後も安静体位をとるなど髄液漏れを少なくするための工夫が必要である。
英語ではpostdural puncture headache:PDPH(硬膜を穿刺したあとの頭痛)と呼ばれています。「ヨーロッパ局所麻酔学会」の報告では、以下のように述べられています。
ミエログラフィー後の頭痛に影響する因子は多いのですが、重要なのは以下の点です。
当院でもできるだけ細い針を使い、頭痛が生じないように工夫し、技術の向上に努めています。それでも、造影剤は水より粘調なため、針の大きさはある程度以上には細くできません。硬膜の孔が塞がるには時間がかかるため、頭痛の多くは数日から1週間程度で落ち着きますが、時には長く続くこともあります。
--------------------------------------

1.ミエログラフィー後の頭痛は、程度が軽度か中位であり、殆どは1週間程度で治まることが多いため、まずベッドや寝具に安静にして休んでみましょう。立ち上がると穿刺した孔に圧が加わるため頭痛が増加します。
2.次に輸液・点滴をする、のが一般的です。生理食塩水や細胞外液に似た成分の点滴をします。点滴内に血管内の水分を保留しやすくなる副腎皮質ホルモンを加えることもあります。
いつもより水分を多く摂取するのもよさそうですが、点滴ほどの効果はないといわれています。脱水状態では頭痛が悪化します。
3.鎮痛薬も頭痛の軽減に役立ちます。
4.カフェインやテオフィリンも有効です。点滴や内服でこれらの薬を使うと、頭痛がかなり軽くなります。これらの成分は、お茶やコーヒーなどにも含まれています。薬成分の量が多くなると、不眠や吐き気がでることもあるため、なるべく午前中に使用し、夜間不眠にならないよう注意しましょう。
5.硬膜外腔への生理食塩水の注入
硬膜の外に生理食塩水や代用血漿液を入れて、脳脊髄液の漏れを拮抗させるものです。硬膜の治癒を促進する効果もあります。
--------------------------------------
このような治療で数日しても軽快しないようでしたら、針によってできた孔(あな)を積極的に塞ぐ方法があります。
硬膜外自家血パッチといわれています。この方法は、ご本人の血液を10-20ml程度採血させていただき、造影の時と同じような手技で、脳脊髄液を包んでいる硬い膜の外側(硬膜外腔といわれる部位)に本人の血液を入れ、孔を塞ぐものです。
なかなか軽快しないときは、病院に御相談下さい。
COPYRIGHT naruoseikei成尾整形外科病院 ホーム はくざん通信の目次に戻る