はくざん 通信   第3号 2000.12.7   ホーム  はくざん通信の目次に戻る 


温泉を利用した水中訓練
   水中運動の特長
   温泉の効果


温泉を利用した水中訓練-1  水中運動の特徴について 理学療法士 山下 智弘

1.水中運動の特徴と効果

 @浮力による免荷:人体は水中では、重力と反対の力を受けます。この力を浮力といいます。
 水中に臍(へそ)まで入ると体重は約1/2に、お腹全部が入ると1/4 に、乳腺まで入ると1/8 と軽くなります。そのため、腰痛、関節痛、骨のもろい方でも体重負荷が少なくなり無理なく運動ができます。特に肥満傾向の方は、股関節や膝関節にかかる負担が少なくなりますので、関節を痛めることなく、安全且つ楽に運動が行えるようになります。また神経麻痺や手術後の回復期等の筋力の弱い時でも運動が可能となります。

 A水の抵抗と筋力強化:水の抵抗は空気の約830 倍もあり、水中運動を行う際の運動負荷に応用することができます。水の抵抗は運動の早さに比例するため、運動負荷量を自由に調節でき、各人の筋力・体力に応じた訓練を行うことが可能です。

 B静水圧とフィットネス効果:水中では深さが増す毎に、体表面に圧がかかります。これを静水圧といいます。静水圧により、下肢周径は1.5cm、胸郭周径が3 〜 5cm 陸上時より細くなり、心臓へ戻る血液の量が増えます。腹部から胸部へと深く水につかっていくと、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋にも負荷を与えます。これらの負荷により呼吸・循環系を強くする効果があります。健康増進の面でも水中運動は有効です。

 C温熱効果と筋・関節拘縮の軽減:体の末梢血管を広げ、血流を増加させます。このため全身の筋・関節の柔軟性が高まり関節の動きが良くなります。筋肉のスパスム(こわばり)や筋の緊張もほぐします。水中運動には、運動中の体温上昇、発汗もあるため、28〜33度が最も適していると言われています。
 また、肉体的にも精神的にもリラックスでき、心理的な効果も同時に得ることができます

 Dエネルギー消費:水中運動は、陸上の運動よりもエネルギーを消費するため、肥満症の治療にも効果的です。水中歩行では陸上のジョギング程度のエネルギー消費が得られます。ダイエット目的には、20分以上の運動が適切です。

 E安全性:陸上とは異なり、転倒による骨折等の危険性は、ほとんどありません。

   水中運動


  [水中訓練・運動の適応疾患]
骨・関節疾患、手術後の回復期、股膝関節疾患、人工関節術後、腰痛や骨のもろい方の腰背部痛、リウマチ 中枢および末梢神経疾患、脊椎疾患、脊髄疾患、不全脊髄損傷、肥満症など

  [水中訓練・運動時の注意]
疾患の急性期や炎症・発熱のある時、呼吸循環系に障害のある時は休みましょう。

 水中では、呼吸循環への負荷が増えますので、医師のチェックを受けた後、訓練を開始しましょう。



温泉を利用した水中訓練-2 温泉の効果  理学療法士 山下 智弘

. はじめに
成尾整形外科病院附属の水上温泉診療所には、温泉を利用した水中訓練ができる設備が整っています。そのため 温泉による効果を楽しみながら、同時に水中運動による効果も得られるという大きな利点があります。
 このページでは、「温泉により得られる効果」について、お話します

温泉の効果

温泉は、薬理効果・温熱効果・物理的効果の、3つの効果が一体となって心と体に作用します。

 1)含有成分による薬理効果
 温泉は含まれる成分によって、その効果が異なります。
 単純泉:日本で最も多い泉質で、病後、手術後などの回復期、静養に適します。
 二酸化炭素泉:体の末梢血管を広げ、血流が増加する作用を有しますが、日本には少ない。
 炭酸水素塩泉:いわゆる美人の湯、美肌の湯といわれるもので、アルカリ成分によって肌がすべすべします。
 塩化物泉( 食塩泉):入浴後皮膚表面の蛋白や脂肪が塩分と結合し、薄い膜を作り、保温性の高い温泉です
 硫黄泉:温泉地特有のにおいがあり、体の末梢血管を拡張し、血流を増加させる作用が最も高い温泉です。

 これらの成分は主に体の皮膚から吸収されるので、浴後に真水湯やシャワーで温泉成分を洗い流さないほうが、より良い効果を得られます。

(皮膚が弱く温泉にまける方は、残念ですが、浴後に温泉成分を洗い流された方がよいでしょう)

 当院附属の水上温泉診療所の温泉プールの成分は、単純アルカリ硫黄泉で、病後、手術後などの回復期、神経痛やリウマチ等に効果があることが医学的にも証明されています。

 2)温熱効果
 温熱は体の末梢血管を拡張し、血流を増加させる作用があります。このため全身の血液の流れがよくなり、筋・関節の柔軟性が高まり関節の動きが良くなります。また、筋肉のスパスム(こわばり)や筋の緊張もほぐします。

 このような温熱効果も、浴水温の違いにより、体に与える影響が微妙に異なります。
 日本人は、42度C 程度の熱めのお風呂を好みます。42度の高温浴では、肉体的にも精神的にも活動的な状態になります。お風呂としては適するこの水温でも、水中運動をするとなると血圧・脈拍共に急激に上昇し、同時に体温も2度ほど上昇するので、運動を行うのには適しません。

 逆に28度以下の場合には、血管が収縮しやすくなるので、高血圧や心臓に障害がある方には適しません。

 水中運動には、運動中の体温上昇、発汗もあるため、28〜33度が最も適していると言われています。水上温泉診療所のプールの水温は、約32度前後と水中運動に適しています。
 
 運動をせず温熱効果のみを期待する温水浴では、38〜41度が適しています。特に37〜39度のぬるめの微温浴では、血圧・脈拍・体温の変化が少なく精神的にもリラックスした状態になります。体温に近い温度は、副交感神経の働きが良くなる温度とも言われています。

 3)物理的効果
 温泉に入ることにより、静水圧という圧力が体にかかります。この圧力により、血管やリンパ管が圧縮され、循環器などの働きが活発になります。温泉に浸かることによって、浮力がつくため、体が軽くなり、動かしやすくなります。腰痛や関節痛等、普段運動が困難な人でも温泉内では楽に体が動かせ、筋肉のトレーニングに役立ちます。
 皮膚の汚れを落とし、潤いあるみずみずしい素肌をつくる美容効果なども、期待できます。

     水上温泉診療所の水中機能訓練室
     水上温泉診療所の水中機能訓練室


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